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#11 どんな家族を作りたいですか?
無精子症と診断されたご夫婦はこれからどうするか新たな道を選択しなければなりません。まずはどんな選択肢があるのかを知ることが第一歩です。
基本の選択肢は3つ
① 夫婦二人
② 養子縁組
③ 提供精子による治療
その中で、今日は③の提供精子による治療についてもう少し詳しくお話しようと思います。夫婦で話して、「提供精子による治療」に進むことは決めたけど、どんな方法で治療するのが一番いいのか悩んでいるという声をよく耳にします。そこで、提供精子による治療を深堀して選択肢をまとめました。
■国内医療機関によるAID(非配偶者間--人工授精)
安心安全な治療で身体への負担も少ない治療です。ただ妊娠率は低く、治療が長期化するケースが多くあります。ドナーに関しては血液型以外は選択できない匿名です(一部周辺情報が知れる場合もあります)。ドナー背景は各医療機関によって異なります。現在国内の実施病院は約10施設と限られているため初診の待ち時間が長いこともあり、地方在住の場合は毎月の通院が大変な場合があります。
■国内医療機関によるIVF-D(非配偶者間--体外受精)※治療には条件あり
国内で実施している施設はごくわずかで、治療にはそれぞれの医療機関で定められた条件があります。妊娠率は上がりますが費用や身体の負担はかかります。オープンドナーを選択できたり(はらメディカルクリニックや海外バンクの場合)、同じドナーでの兄弟や姉妹を望めます。
■国内医療機関による親族間提供
国内で実施している施設はごくわずかで、治療には各医療機関で定められた条件があります。将来子どもにドナー情報を伝えることができ、血縁もつながり、同じドナーからの兄弟姉妹が望めます。親族ということでドナーと子どもとの距離が近すぎて後にトラブルになることもあるので、将来子どもへの告知について含め、事前に慎重に検討することが必要です。
■海外精子バンクを用いた国内医療機関によるAIDもしくはIVF-D
海外精子バンクではドナーを自ら選択でき匿名非匿名も選択できますが、日本人ドナーはほとんどいません。自宅へ配送してシリンジ法や医療機関でのIVF-Dなど方法も選択できます。実施してくれる医療機関はバンクを通して紹介してもらえるところもあれば自ら探す必要があるところもあります。
■台湾でのAIDもしくはIVF-D
日本語が話せるスタッフがいるクリニックがいくつかあり最近では日本での説明会も実施しています。台湾ではドナーは国で管理されているため匿名のみ。一人のドナーさんに対して一人の子どもが生まれた時点でそのドナー精子の提供は不可となる(受精卵が残っている場合に移植することはOK)。実施クリニックによっては身長や顔の特徴など周辺情報がわかる。日本でのバックアップクリニック(自ら探す)が必須。治療以外の告知についてなどのフォローなどは全くないですし、採卵移植に急な渡航が必要な為、スケジュール管理や渡航費などの負担が大きいです。
■SNSなどの個人間提供
条件によっては夫婦で納得したドナーさんが選択でき、同じドナーさんで兄弟姉妹が望める。しかし、医療機関では検査をクリアしたドナー精子のみ使用しているが、個人間の場合はこの検査をしていないこともある。また、同じドナーから多数の子どもが生まれているケースや、ドナー側の虚偽問題、感染症の問題があったりとトラブルを多く聞きます。
提供精子による治療といっても治療方法やドナー背景、治療費は様々です。
治療に臨むと決めたら、まずは『どんな家族にしたいか?』を考えてみてはどうでしょうか。兄弟や姉妹は望むのか、ドナーさんは匿名か非匿名か。子どもにどんなふうに出自を伝えたいか。ちょっと先のことを想像してみると自分たちにはどんな治療に進むのがあっているのか見えてくると思います。
年齢や仕事、費用の問題ですべての人が望んだ治療が受けられるわけではありませんが、焦って突き進むより一度立ち止まってゆっくり考えてみてください。
ご夫婦でもそれぞれ譲れない条件や考えている家族像は違うかもしれません。お互いの考えを尊重しながらしっかり話し合ってみてください。そして自信をもって自分たちの選んだ治療に進んでほしいと思います。迷った時は自分たちが選んだ選択を堂々と子どもに伝えられるか想像してみてください。子どもの幸せを願い家族の未来を想像できればその選択はきっと家族にとって最高の選択になるはずです。
また、AID当事者支援会の匿名で参加できるオープンチャットには現在640名を超える当事者の方々が参加しております。それぞれの選択に迷った時、悩んだ時、その経験者の方のお話しが一番力になってくれます。無理して発言する必要はありません。過去の投稿を読むだけでも学びになりますし、何かあった時にすぐに質問できるお守りとして当支援会のオープンチャット(https://aid-toujisha.com/chat/)へご登録ください。
※2024年9月現在の選択肢です。今後特定生殖補助医療法案の内容によって海外の精子バンクを用いた国内での治療は制限される可能性があります。また逆に親族間については法案が認められれば実施施設が増える可能性もあります。今後、法案の内容次第で非配偶者間の治療は大きくかわっていくことが予想されます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
読者のみなさんが、世界で一番幸せになる事を、こころよりお祈りいたします。
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「こころでつながる 家族をつなげる」
一般社団法人 AID当事者支援会
寺山 竜生(てらやま りゅうせい)
Web: https://aid-toujisha.com/
Twitter: https://twitter.com/aid_toujisha