#9 ドナー背景の違う兄弟姉妹は不公平?
先日、無精子症の当事者の会にスタッフとして参加させていただきました。
参加者の方からの質問を受ける中で、まだまだ提供精子で子どもを授かる情報は少なくて、悩んだり困ったりしている方が多くいらしゃることを実感しました。
少しづつですがこのような情報を発信することで、1日でも早く1人でも多くの方が苦しみや不安から解放されることを心から願っています。
皆さんは、お子さんを何人望んでいますか?
きっと無精子症がわかる前は、男の子と女の子1人づついたらいいな、姉妹がいいな… なんてパートナーと一緒に想像したり話したことがあったのではないでしょうか?
でも、無精子症が判明しAIDで兄弟姉妹を考えた時、超えなくてはいけない壁がいくつか出てきたと思います。
今日は、その壁にぶつかった時、望んでいた兄弟姉妹をあきらめるのではなく、少しでも前向きに検討できるキッカケになれれば… そんな思いを込めて「ドナー背景の違う兄弟姉妹について」お話ししようと思います。
これまで、AIDで兄弟姉妹を持つときの悩みというと「違うドナーさんでの兄弟姉妹」のご相談を多く受けました。
具体的には、「兄弟で、顔が全然似ていなかったらどうしようという不安」です。この不安は、1人目のお子様が生まれる前に父親に全然似ていなかったらどうしようという不安を持つ方が多かったのと同じようにいました。
でも、実際生まれてみると、1人目が父親に似てる似てないを気にしていない方が多いように、兄弟姉妹でも似ているか否かを気にしているご家族はほとんど聞いたことがありません。むしろ、違うドナーさんだからこそ2人のそれぞれの個性を楽しんでいる家族を多く見ます。
一方で、最近は上記の悩みに加え、「兄弟姉妹の間で、ドナーが匿名と非匿名になる場合」があることに悩まれてご相談に来られる方が多くなりました。
この原因は、今後施行される特定生殖補助医療法案の内容や、各医療機関での非配偶者間の治療範囲が広がったことで、1人目は匿名ドナーだったのが2人目の時には非匿名になる(またはその逆)可能性がでてきたことがあるからだと思います。
ご相談に来られる方は、兄弟姉妹で匿名・非匿名の差がでてしまうなら2人目は諦めた方が良いのか? 兄弟姉妹の間では公平に告知したいから、どちらにも匿名と伝えた方がいいのか?…など、今までなかった悩みに困っている方が多くいます。
でも、もし1人が匿名で、もう1人が非匿名なのが不公平でかわいそうだからといって、「2人に匿名だ」と嘘をついてしまったら、真実がわかったとき、2人の子どもを共に苦しめることになってしまうと思います。なぜなら、非匿名の子どもは、匿名だと嘘をつかれていたと思うし、匿名の子どもは自分のせいで兄弟にも嘘をついて辛い思いをさせてしまったと自分を責めてしまうからです。
実際は、兄弟姉妹を同じように告知をして育てていても子どもの性格によってドナーへの興味の度合いはそれぞれです。
確かに、2人の子どもがドナーさんと連絡を取りたいと言ってきた場合、片方は叶えてあげられても、片方は叶えてあげられないときに、親として申し訳ないと感じるかもしれません。でも、そんな時は「兄弟を比べてかわいそう」と考えるのではなく、匿名のドナーとは、会うことはできなくても、子どもと一緒にどんなドナーさんか想像してみたり、できる方法で探してみようかと声をかけ、子どもの気持ちに向き合い寄り添ってあげることが必要だと思います。
海外や、養子縁組の兄弟で、片方はドナーや産みの母に会えるけど、片方は会えないといった似たような事例がありますが、常に子どもに対して正直であることで子どもたちは問題なく出自を受け止めています。
一番大切にすべきとことは、兄弟姉妹に差があることを正直に伝えた上で、2人に公平に愛情をそそいで育てることではないでしょうか?
ご相談者の方から、「無精子症なのに子どもが1人できただけでも奇跡!感謝している。もうこれ以上の兄弟姉妹を考えるなんて贅沢な悩みだからあきらめます。」という声もよく聞きます。
そんな事は決してありません! 私は、望んだ人が、望んだ家族のカタチをつくれるようになるような社会になるべきだと思います! 微力ながらそんな社会を作るために今後も尽力していきたいと思っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
読者のみなさんが、世界で一番幸せになる事を、こころよりお祈りいたします。
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「こころでつながる 家族をつなげる」
一般社団法人 AID当事者支援会
寺山 竜生(てらやま りゅうせい)
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