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『真っ白な世界』/掌編小説

どこまでも続いているようだった。

目の前に真っ白に広がる銀世界。
なんの建物も、視界を遮るものもなく、ただただ広くなにも無い。

ずっと先の方になにか見えないだろうかとじっと目を凝らす。真っ白な空と大地が入り交じり、水平線すら見えなかった。
誰かの足跡はないかと探しても、少しのへこみも見つからない。

急に怖くなる。ここはどこなのだろう。この世界にずっと前から立っていた。
足元さえも真っ白で、実は浮いているのかもしれない。そう思ったらもう、どこが地面かわからない。ぐらぐらと、頭の中の脳髄がバターのように溶け出して、真っ白なところにぺたっとおちた。
この世界に、一粒の黒い砂でも石ころでも、はねた墨の一滴でもあったなら。きっとそれをみつけるのに。

どのくらいの時が流れたか、一面の銀世界に溶けたバターは冷えだして、また新しい形で固まった。


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