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激戦!名作揃いの「第3回 AI アートグランプリ最終審査会」(前編) #イベントレポート

「AI をもっと身近に」をコンセプトとして始まった AI フェスティバル。その第2回となる AI フェスティバルが11月9日(土)にベルサール秋葉原で開催されました。今回、その中で行われた「第3回 AI アートグランプリ」の最終審査会の様子をAICU編集部のhikonyanが前後編でお伝えします。 

今回の審査員の紹介

審査委員長を務めたのは、メディアアーティストで東京大学名誉教授である河口洋一郎先生。

イラストレーターである安倍吉俊さん。

名探偵コナンなどのアニメの企画プロデューサーである諏訪道彦さん。

この日は欠席でしたが、映画監督の樋口真嗣さん、弁護士の柿沼太一さんの計5名による審査が行われました。

AIアートグランプリの概要

近年にわかに注目を集めている作画 AI や作曲 AI など、人間の芸術的想像力を高める AI の進歩を受け、来るべき時代に人間と AI が共生し、人間がより自らの能力を拡張するため、2023年3月にスタート。第3回となる今回は、新たに AI アート グランプリ絵画部門も追加されました。総合部門43作品、絵画部門96作品が集まりました。10月初旬に Web サイト上で一次先行審査者が発表され、今回は審査員の皆様による最終審査会と表彰式が執り行われました。

グランプリの審査基準は次のようになっています。

●        人間らしい表現のための手段として AI を正しく活用していること。

●        独創性のある表現が行われていること。

●        他者の権利を直接的に侵害していないもの。

●        日本国内法を遵守していること。

気になる賞品ですが、絵画部門ではグランプリに輝いた方には賞金5万円と副賞として GALLERIA R-Series ノートブックモデルが送られます。GALLERIA 賞に輝いた方には AI フェスティバル2025 Powered by GALLERIA のメインビジュアルとして作品が使用されます!

総合部門では、グランプリに輝いた方には賞金15万円と、副賞としてGALLERIA U-Seriesデスクトップモデルが授与されます!

審査委員長による挨拶

審査委員長の河口洋一郎先生からの挨拶では、次のようなお話がありました。

<以下、河口洋一郎先生のご挨拶より>

 「激動の AI 時代に入ってきていて、その中で僕たちが AI に対してどのくらいの関わりを持って良いものを、コンテンツを作れるかっていうのは結構重要なことです。今日のこのグランプリ審査の出来具合を見ながら、未来に向けてエネルギーを得たいなと思います」

「皆さんご存知なように、 AI って賢くて出力されるものは似てるんですよね。だけど、アルゴリズムがわからないところを端折って動かすと破綻する場合もあるんです。文章のほうもそうだと思うんですけど、いわゆる映像だけなくて音楽のほうも含めて、対談とかしていると今はAIが完璧に理解してそれを出してくれるのは難しいかもしれないけど、近い将来、ひょっとしたらそれに追いついてくれることを何か感じています。だから、今のAIをまだまだといっても半年後、1年後、2年後はわからないですね。乗り越えられるかもしれない。これを肝に銘じてコンテンツを作っていくほうが良いかなと思います。 

それと世界中で新しい AI 時代のコンテンツがどんどん出てきているので、僕らも高めるために各自の専門分野からどんどんそれを利用して自分を高める。僕らは眠っている才能の50、60%しか使ってないかもしれないです。眠っている40%を AI で高めるとか、その方向で考えていったほうがこれからの突破口かなって思うんです。だから、AI のこれからのある特異点を突破口に新たな未知なる世界を探していくことを期待して、新たな流れを作っていってほしいなと思います。

今日の AI グランプリは基本的にデジタルワールド、デジタル空間の出来事ですけど、僕たち審査員はみんな生きています。リアルワールドが面白くないとデジタルワールドも面白くないです」

「これは10mくらいの彫刻です。エアプレッシャー、空気圧で動いているんです。要するに AI でこういうリアルとどうコラボするか、リアルワールドとデジタルワールドをつないでいくという日本独特のデリケートな世界をどう高めていくかっていうのが重要かな」

「これは2mくらいのカニをリアルに作ったんですね。これは AI で何回もやり取りして動かすんです。こういうメカニックな動きを」

「これは逆にさらに AI を使って宇宙カニを進化させていく、そのときの挙動、ロコモーションとかですね。そういうのを含めてどんどん専門的にさせていく、そんなことを考えています。


今日言いたかったのはせっかく AI グランプリを始めたので、ぶっ飛んだような新しい世界がこのグランプリで生まれてほしいと期待しています。皆さん各自が大衆の波に流されるんじゃなくて我が道をゆく、自分を鍛える AI としてやってもらったほうがより良いかなと思います」

 

河口洋一郎先生の熱いメッセージによって、今回のコンテストへの期待、ワクワク感がますます高まってきました。

 

最終審査会 - プレゼンテーション

審査委員長による挨拶の後は、総合部門の最終審査に残った10名による最終プレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションのルールは以下のとおりです。

プレゼンテーションの様子は後日別途記事にまとめますので楽しみにしていてください!

絵画部門の表彰

プレゼンテーション終了後、事前に最終審査が終了していた絵画部門のGALLERIA賞とグランプリの表彰式が執り行われました。

絵画部門 GALLERIA 賞

絵画部門のGALLERIA賞に輝いたのは、はんなり女史さんの「希望の夜明け」。タイトルのとおり、明るい未来に向けて手を伸ばしていて、希望を感じさせる一枚ですね。AIで生成された絵とはパッと見では信じられない、油絵のようなタッチがとても印象的です。

この「希望の夜明け」について、GALLERIA 賞のプレゼンターである株式会社サードウェーブ取締役社長・最高執行責任者の井田晶也さんから講評がありました。

 <株式会社サードウェーブ・井田晶也さんの講評>

 (はんなり女史さんの作品について)「活きる」というテーマの中で、デジタルワールドとリアリティのワールドっていうところの融合と、子どもが光に向かって手を広げてそこに植物や動物や昆虫がいるという姿が「活きる」というテーマと「生命力」、live のほうの「生きる」のほうとの両方の意味合いで非常に深く刺さりました。

 はんなり女史さんは今回の受賞を受けて次のようにコメントしました。

はんなり女史と申します。本日は GALLERIA 賞を頂き、喜びで胸がいっぱいです。「希望の夜明け」はどんなときも皆様が希望を持ち続けられますように、願いを込めて生成しました。今回受賞した GALLERIA 賞を糧に、私はこれからも皆様の心に響く AI 画像生成に励んでまいります。本日は本当にありがとうございました」

 

絵画部門 グランプリ

絵画部門のグランプリに輝いたのは、owl_digitalartさんの「不易流行」。葛飾北斎を思わせる迫力ある大波、そこから生まれる鳥やチョウチョ。とても力強い生命力を感じる作品です。GALLERIA 賞を受賞した作品と同様、まるで人の手で描いたような油絵のタッチで、平面なはずなのに手触りの質感が感じられます。


この「不易流行」について、副賞のGALLERIA を提供する井田さんからコメントがありました。

<株式会社サードウェーブ・井田晶也さんの講評>

(owl_digitalartさんの「不易流行」について)油絵かと思うような非常に迫力があって、この赤色の発色の仕方、その赤がまた波としてはじけたところから鳥になったりとかチョウチョになったりしているというところがすごく印象的。この AI の中でも熱い、ふつふつとしたものがここから湧き出ているっていうような情熱をすごく感じた、印象に残る作品でした。

そして、審査委員長の河口洋一郎先生からの講評も行われました。

<審査委員長の河口洋一郎先生からの講評>

絵画部門は今回から始まった部門ですけども、やっぱりオープニングで言ったように、「AI という技術を乗り越えて、その先に行きたい」っていうのが最初から願いなので、副作用を乗り越えて欲しいなと。井田社長もおっしゃったように、非常に本物のようなテクスチャーをやっているのも愛した理由の一つです。フラットな平面なんですけども、あれを逆にもうたっぷり重量感あるような感じで、AI 的なものを乗り越えて未来の希望がいっぱい見えてくる、前向きなところは非常にポジティブでいいなと思いました。今後は国際的にこの AI グランプリを世界にドンと出すときに、やっぱりこういう作品は象徴的な役割があるなということで、審査員の中で好評を得ました。おめでとうございます。

owl_digitalartさんは今回の受賞を受けて次のようにコメントしました。

「今回のイラストを作るにあたって考えたことは、海外のサービスを使いながら日本らしさをいかに表現するか。そして、過去・現在・未来、これを全てレイヤードすることで過去の葛飾北斎の描いた波、作っている現在、そして AI を用いて作り出すことの未来。そういったいろんな思いを一枚に込めました。過去と現在と未来、全てにおいて人間は水とともに生きてきました。水がないと人間は生きてはいけません。命を得る。すごく重要な要素です。しかしながら、悲しい現実ですが、昨今水によって命を落とす方々も大変多くいらっしゃいます。その水とどう向き合っていくか。AI とどう向き合っていくか。そういった一枚に仕上げております。そして、これも常々考えていることですが、我々は AI を使うときに言葉を用いています。こんなに言葉の意味合い、使い方、文章、さまざまな文法体系が見直される時代になったということは、ある意味で原点回帰かもしれません。非常に面白い時代になったと思います。よって、未来に向かいながら過去を振り返る。これも人間の非常に重要なファクターだと考えております。そういったいろんな思いを込めて作りました1枚が、このような賞を頂くことができまして、大変嬉しい思いでいっぱいです」

 

総合部門の表彰

最終審査会の終了後、いよいよ総合部門の発表です。どの作品がグランプリに選ばれたのかドキドキですね。

総合部門 佳作

佳作には以下の5作品が選ばれました。

異邦人」志村翔太さん

https://eizo100.jp/video/77353

付喪神ジェネレータ」異業種データサイエンス研究会 (関東)さん


MOMO TARO」北澤和巳さん


Qveria - 空想世界事典」koguさん


「Chronovital Resonance」米城 陽さん

総合部門 優秀賞

総合部門優秀賞には以下の3作品が選ばれました。

ゼロイチ、「ニ」」野火城さん

AIとkawaiiの融合」Starm.productsさん


「墨」Samさん

 

総合部門 審査員特別賞

総合部門の審査員特別賞に輝いたのは、Masaさんの「100 TIMES AI HEROES」でした!



生成 AI を活かしてキャラクターのナラティブ(願望、能力、役割)、ビジュアルを創出するもので、新しいキャラクターのアイデアを100倍に拡張することを目指した作品です。これがあればさまざまな物語も作れてしまいそうです。AI が持つ可能性を最大限に活かした作品に感じられますね。

審査委員長の河口洋一郎先生は次のようにコメントしました。

<審査委員長の河口洋一郎先生からの講評>

今年はもうほんと激戦区で、審査員の皆さんで方向性も違うし、みんな非常に個性的で、この最後のノミネーションに入った作品を選ぶのは大変でした。苦渋の選択という感じはします。来年以降更に発展するために、発展の伸びしろを含めてですね、審査員一同で無事に選ばれました。おめでとうございます。

Masaさんは今回の受賞を受けて次のようにコメントしました。

「光栄でございます。AI で何でもできるようになると思うんですけども、何でもやりたいのは AI ではなく、やりたいのは私たちだと思います。私はもう作りたくてたまらないので、AI を使っているということだと思いますし、皆さんも別にアートじゃなくても表現したいことってあると思うんです。それはアートである必要は全然なくて、例えば毎日自分が食べるご飯とかを気持ちの良いものにしたいですよね。見た目で自分が食べたいと思うものにしたいと思います。仕事の企画書だって人が読んで気持ち良いものにしたいと思うんです。そういうのが、皆さんの中の表現したいという気持ちだと思うので、皆さんの中にも表現したいという気持ちはきっとあると思うんです。それを見つめていただいて、その小さな炎かもしれないですけど、それを AI で燃え上がらせてもらって、今回は総合部門も40数名、それから絵画部門は90名だったと思うんですけど、来年は10倍ぐらいになってほしいです。参加者が増えて審査員が大変だと思うんですけど。もっとみんなが表現できる世界になったらいいなと思いますので、ぜひ皆さんも取り組んでみてください。今度は皆さんが主役になってほしいと思います。よろしくお願いします」

 

総合部門 グランプリ

総合部門のグランプリに輝いたのは、elimさんの「象牙のナイフ」でした!

実写か CG か AI か見分けのつかない、そして AI 特有のバグをバグとして見せない映像作品を実現したミュージックビデオです。プレゼンテーションの最後には、MVの世界をさらに表現するラップを披露しました。この作品の一部分を見ただけでも凄まじいクオリティで、何で作られた作品なのかが気になって、より作品に引き込まれます。これぞグランプリにふさわしい作品ですね。

副賞の GALLERIA を提供した井田さんからの講評も行われました。

<株式会社サードウェーブ・井田晶也さんの講評>

絵画部門と同じように、このリアリティとデジタリティというのがすごくうまく融合していて、とても不思議な感覚がありました。あと、音楽と映像のリンクがすごくされていて、すごく入っていきやすい作品だったなと。プレゼンテーションでのラップもすごく良かったです。僕は審査には入ってないんですけれども、すごく印象に残った作品でした。

elimさんは今回の受賞を受けて次のようにコメントしました。

「選んでいただいてありがとうございます。AI と作業してると実写の良さがわかってきて。実写を撮りに行ったときにお金と時間はかかるんですけど、風の匂いだったり、空気だったり、そういう実写の良さがわかるという体験もしました。なので、これからは実写の良いところ、CG の良いところ、そして AI の良いところを全部取って作品を作っていこうと思っています」

 

最後に審査員3名から総評が行われました。

<審査員の安倍吉俊さんからの総評>

1回目からずっと審査をしてきて、今年は AI 固有の違和感みたいなものがあまり感じられない作品が増えました。今回優勝された作品もそうだと思います。今までずっとこういう表現をしたいんだけど、AI がプロンプトを打ってもこういう風にしか出力してくれないからこうなってしまった部分とか、あるいは AI はこういう風にしか出してくれないのでその表現を前提に人間のほうが妥協するというか、AI のほうにちょっとすり寄る形で表現するものがどうしてもあったと思うんですよ。だからこそ、突飛なものが出たりもしたんだけど。

今年は非常に全体的に作品の粒が揃ってきて、今言ったみたいに違和感がないというか、人間が作ったように見える作品が僕の中では非常に印象に残りました。僕みたいに手を使ってまだ描いている人間にとっては非常に恐ろしいと同時に、非常に未来を感じるし、自分もそういうものを何かうまく取り入れられたらいいなと思いました。

 

<審査員の諏訪道彦さんからの総評>

参加された皆さん、本当にお疲れ様でした。私も第1回から審査員をやっておりまして、AI という言葉もやっぱり世の中でひとり歩きしてるようなムードはいっぱいあると思います。我々アニメーションの世界でもそうで、AI は 私たちには今のところ新しい大きな武器の筆みたいな感じです。アニメでは背景とかいろんなキャラクターも含めて出ているんですけども、今回の作品の絵は AI というものの過渡期に違いないと思う確信が一つありました。

それは AI の中にもジャンルがあるということです。当然そのジャンルは漫画やアニメ、世界観、生き物、クリーチャーみたいなものがあると思うんですけども、そのジャンルの中でどういう風にみんなを魅せて表現していくか。その表現されたものを我々見る人間はどう楽しめるのか。その辺のことをすごく問われた選択でした。非常に激戦な作品が並ぶ中で、今回はやっぱり説得力があった映像だなと思いました。

 

こういうのを見て感動はもちろんですけども、驚くことと、そして心の中に染み込むこと。こういう風に映像が持つ力をきちっと待たせるということが、AI でもっていうのはちょっとおかしいんですけど、AI で表現できるようになってきたっていうのは明らかな進歩だと思いますし、これからもっと期待したいなと思います。それぞれのジャンルは絶対にあります。好きなジャンルを選ぶというよりも、やっていく。そういう時代になると思うんですけども、そこを目指して皆さんに頑張っていただきたいなと思っております。本当にお疲れ様でした。

 

<審査委員長の河口洋一郎先生からの総評>

オープニングでも言ったんですけど、このデジタルスペースをどんどん進化させるために AI っていうのは、その魅力的な世界を作らないといけないんですけど、やっぱり自分を高めながら AI を使っていってほしいなと。やっぱり AI と自分が高め合う、これに尽きるなって。軽く刹那的に使う AI じゃなくて、日常的に巡回していく、AI とそういう世界になっていくと本物になるかなという気がします。

デジタルスペースにはやっぱりリアルスペースも重要なんですけど、リアル、つまり個人の世界が面白いとデジタルスペースも面白いんです。今回もそうだし、第1回もそうだったけど、デジタルスペースとリアルスペースが混在、巡回しているんですね。あれは非常に良いかなと思います。最後のリアルなスペースでのラップ、良かったです。やらないよりはやったほうが勝ちです。

だから、来年以降、AI グランプリはデジタルスペースの中のことだけど、リアルがそれを支えているんだよという、血と肉のリアルな魅力的な世界に持っていきたいと思います。さらに来年からはジャンルの可能性も高めたいので、そちらのほうでまたどんどん進化していってほしいです。よろしくお願いします。今日はありがとうございました。おめでとうございます。

まとめ

第3回 AI アートグランプリの最終審査会の様子をお伝えしました。審査員のコメントにもありましたが、AI は過渡期にあり、実写、CG に続く新たな表現として確立しつつあるんだなと思わせる作品の数々でしたね。特に総合部門のグランプリ作品は圧巻でした。どこまでが AI でどこまでが実写やCGを使っているのかとても気になるので、いつか制作過程も見てみたいですね。

今回は最終審査会の様子をお伝えしましたが、総合部門ファイナリスト全10名の最終プレゼンテーションの発表内容や質疑応答などの様子も後日記事を公開予定! 楽しみにお待ちください!

 AICU編集部 hikonyanさんへの声援もお待ちしております!



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