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冬が始まる前に

私が生まれた町には雪がなかった

小学校4年生の冬に窓の外にひらり舞う雪を見た
このまま降り積もって運動場が白く染まったら
授業が中断されて雪合戦がはじまる
そんな妄想をしながら分数の割り算をした

結局雪が積もることはなく
運動場は小雨があがったあとのそれだった

降っても積もることなく溶けていく
それに人の生を重ねられるようになったのは
良いことなのか悪いことなのかわからない

世界の歴史の中で
降っては溶ける雪のように人が溶け合って
見えない人生が紡がれていく

ふとそんなことを思いながら
コーヒーを飲む秋の朝

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