へその緒をガッチリ握って手離さない息子|生後0日目~生後6日目(0歳0か月)

生後0日目

15時52分、息子生まれる。へその緒を首に巻き、肩にたすき掛け、手にギュッと握って生まれてきた。彼は私の股から正面向いて出てきた。
人は交通事故などインパクトある事態に遭遇した時、周囲がスローモーションになるというが、私はどうやらその時だったらしい。股の間から息子の顔がゆっくり昇ってきて・・・それは水平線から朝日が昇ってきたような御来光のようだった。昇ってきたのは太陽ではなく、顔をクシャクシャにして泣き声を上げながらも、手にへその緒をガッチリ握って離さない息子なんだが。感動よりも笑いがこみ上げた。

腕の中にいる息子は、これまで私の人生の中で見た赤ちゃんとなんか違う。肌がちょっとシワシワしてるし、顔が赤黒いし、モニョモニョ動くし、フニャフニャしている。これは可愛い・・・の・・・か???
フニャフニャは、親戚や友人の赤ちゃんを抱っこさせてもらった時もそう思ったけれど、それ以上にフニャフニャしている。これは本当に脊椎動物なのだろうか、軟体動物ではなかろうか。

生後1日目

生まれてから一ヶ月内の赤ちゃんのことを新生児と言うらしい。よくよく考えたら、親戚や友人の赤ちゃんはもっと成長した姿だった。新生児を見るのは人生でこれが初めてかもしれない。

初日から2時間おきに新生児室に呼ばれて怒濤の授乳タイム。
母乳らしきものは出るけど、色が黄色い。乳って白色だと思っていたのだけどそうではないのか。助産師さんいわく、初めて出る乳は黄色なんだとか。出る量は少ない。息子は口をぱくぱくさせるが、思うように乳首をくわえない。助産師さんに補助してもらって、息子の口にムリヤリ乳首をくわえさせる。ぱっと見授乳しているっぽいが、私のおっぱいからは母乳はちょびっとしか出ていないし息子は吸っていない。初産はこんなものらしい。出産した瞬間から、私のおっぱいから母乳がピューピュー出て、息子はゴクゴク飲むものだと思ったが違うらしい。自然にはいかない。
同じ日に産んだ経産婦さんは手際よく授乳して30分しないうちに新生児室を去っていく。初産婦の私は1時間行っても息子はフニャフニャ泣いたままだ。

生後2日目

産んだら治ると思っていた、腰の痛みが治まらない。むしろ産前よりも痛くて歩行が困難に。腰じゃなくて骨盤がやられているのかも。痛み止めをもらってなんとか歩ける。痛みと戦いながら、ほぼカタチだけの授乳をしに新生児室に向かう。
出産時はもちろん滅茶苦茶死ぬほど痛かったが今も痛い。私は出産が終わったらその痛みはスパァーンと無くなるものだと思っていた。なぜそんな馬鹿な事を思ったのだろう。怪我をしたら怪我の大きさに比例するように痛みはしばらく続くじゃないか。出産時の痛みを考えれば当然だった。股を切った痛み、膨れていた子宮が急激に元に戻る痛み、そして出産の後遺症みたいになった腰の痛み。出産時は短時間で激しく痛いけれど、この痛みは長時間ジクジク痛む。

新生児室では我が子の写真撮影はOK。スマホで撮影をする。後で息子用のフォルダを作っておかないと。

生後3日目

妊娠中に読んだ育児書の中に"赤ちゃんに話しかけよう!"と書かれていたので、新生児室で「お母さん、来たよー」「おっぱい飲んでね」「オムツ替えるね」声かけをする。勿論だが反応はない。分かっているんだか反応はない。
どんな声をかけても手足をバタつかせている息子。通じていない。しかし、なんか無言だと間が持たないので声をかけ続ける。

いまだに母乳はあまり出ない。足りない分はミルクを足してもらっている。初産はそういうものらしい。ビックリするほど需要と供給のバランスがとれていない。それでいいのか自然界。現代はミルクがあるが、古代の人間はどうしていたのだろう。
あと、出産してはじめて分かった。授乳すると乳首が痛い!助産師さんに搾乳してもらうが、それも痛い!授乳いたい。授乳というと、母である女性が微笑みながら行う姿を思い浮かべるけど、今の私はとてもじゃないがそんなことはできない。そんなことができる女性はきっと鋼鉄の乳首の持ち主なんだと思う。
新生児室での授乳後は、スマホで息子を鬼撮影。夢中に撮影するのでこの時ばかりは痛みを感じない。

病院の新生児面会室から硝子越しに息子をみる。他の赤ちゃんと並んで寝ている息子を見て思った。息子、髪の毛がめっちゃ薄い。

生後4日目

この日は新生児室に息子と二人きり。普段流れているCDも切れて音楽なし。ループ再生設定じゃないのか・・・。真っ白で無音の新生児室。世界に取り残された感覚になる。数歩先のドアが遠い。

生後5日目

入院中はゆっくりできると思ったが、全然ゆっくりできない。2~3時間おきに授乳に呼ばれ、その合間に食事やトイレ、シャワー等の身支度、お祝いに来てくれる人の対応。授乳は1回につき1時間近くかかるので・・・休息が細切れで休めている感じがない。でも、家に戻るともっと細切れになるし、やる事が多いしで体をゆっくり休める暇がないらしい。確かに今の私は授乳しかしていない。着替えや衣類の洗濯、沐浴、ミルクの準備、オムツ交換、寝かしつけetc.何にもしていない。退院したらこれが一気にくるのか。こわい。
出産で痛めた股関節の痛みはまだ引いていない。歩くのも何かの支えがないと困難な状態だ。退院がとても不安。担当の先生に相談しよう。

息子への声かけは続けているが、当然のごとく息子の反応はなし。反応がないと分かっていても、反応がないと声かける気がなくなってくる。「もうやめようかな・・・」と思っていたら、今までの私の姿を見ていたのか、他のママさんも赤ちゃんに声かけし始めていた。なんだか引っ込みがつかず、声かけを続ける。

生後6日目

退院の日。股関節は相変わらず痛い。先生に相談したところ、今は体が元に戻ろうとしているから、1ヶ月検診までは治療的なことはせず様子見しようと。まともに歩けないのに治療できないとは・・・。「妊娠は病気じゃない」といわれる所以がここにきた。ただ、本当に何もしないとまともに育児できないので、痛み止めの薬はもらうことにした。1ヶ月分の薬がズッシリとくる。今後の私の命綱だ。

入院中の1週間は怒濤の1週間だった。入院中、悲しいとか嬉しいとかではなく、無性に涙が出てきて仕方がない時が多かった。きっとホルモンバランス崩れている。
一度、泣いている姿を助産師さんにみられて、どうしたのと心配されたが、自分でも何がどうして涙が出てくるのか上手く説明出来なかったので「なんだもありません」て逃げてしまった。我が子が可愛すぎて涙、おっぱいを吸ってくれなくて涙、周りが優しくて涙etc.色んなことが一気にきすぎて気持ちの整理が追いついていないのかもしれない。



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