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神経回路網の電線特性(1)

電力や情報を担う電気信号や光信号を運搬する電線光ファイバー回線網は、世界中に張り巡らされている。送電鉄塔や街中の電柱を次々に中継しながら地上を走る回線網や、海底ケーブルや地下電線網など海や地面の下を走りまわる回線網の存在はよく知られている。回線網を走りめぐる情報や電力の信号は交流信号であることは重要である。この交流方式による送電は二コラ・テスラが提唱し、トーマス・エジソンの主張する直流方式を退けて、実用化され現在に至っていることはよく知られている。比較的周波数の低い(50~60ヘルツ)電力送電網は、分岐や合流を多く持ち、文字通り網目の多い回路網を形成している。送電効率は電気料金や品質(停電の多寡)に如実に反映する。あまり知られていないが、送電は送電回路の再帰性(網目の多寡)に基づく、理論ではなく経験(偶然)による創発現象(波の同期振動の程度)におおく依存しているようである。そのため、日本の送電効率は停電などトラブルの多い米国の送電システムに比較して優秀であると日本の電力会社は、しばしば明確な根拠説明もなく自画自賛しているようである。
ちなみに情報の波を運搬する光ファイバー回線網は、数ギガヘルツの高い周波数であることはよく知られている。このような周波数の違いは、信号の伝導速度と直接的比例関係を反映する。

いっぽう神経回路網を走りめぐる電気信号は、電線ケーブルの特性の違いからその伝導速度が明らかになっている。神経網では、電線ケーブルに相当するものを軸索(アクソン)といい、軸索の太さ(直径)によって伝導速度が異なる。太い軸索は、さらにそのケーブルの周囲に絶縁体シートをまとい、太い軸索ほどそのシートは厚い。絶縁シートのないケーブルを無髄線維といい、伝導速度は秒速約1m(時速約4km、歩く速度相当)、絶縁シートのあるケーブルは有髄線維と呼ばれ、厚い絶縁シートをもった太い軸索の伝導速度は秒速約100m(時速約360km、新幹線最高速度相当)に達する。このようなケーブル特性をもった神経回路網がからだのなかに張りめぐらされている。
 こように異なった特性をもった電線ケーブルがお互いに連結しあって複雑な回路網を形成し、回路網が創発する「自己回帰性と共振振動」という特徴を最大限に発揮して、さまざま脳神経活動を担っているのである。運動・感覚から情動・認知機能まで、われわれの日常生活の脳神経活動の根幹をこの神経回路網が作り出しささえている。

しかし偶然にも、人間社会が作り出した情報・電力伝達システムと自然が作った神経回路網とは同じようなさまざまな特徴を共有する。
 その具体的な内容について、これから順次説明していきたいと思います。

話は続く。

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