コロナショックによる各業界の影響はどれくらいか?リーマンショックを振り返る
(金融市場ではなく実経済として)コロナショックが各業界にどれくらい影響を与えるのか?多くの起業家が不安に思う事柄だと思います。
また、若手の起業家はリーマンショックを経験しておらず、不況の際に実際どれくらい落ちるのか体感値としてもよく分からないということもあるかと思います。
活動自粛・経済停滞を踏まえ、経済全体に影響するコロナショックが現実味を帯びてきており、各所でリーマンショックの頃を振り返り、あの頃はどういう動きがあった、どうだったああだったという話をよく見かけるようになりました。
では実際にどれくらい影響があったのかを、ふわっとではなく一定の数字で俯瞰してみたいと思い、簡単ですが調査をしてみることにしました。
全産業の7割強が影響を受け、残り3割だけが維持または成長した
用いたデータは、経済産業省企業活動基本調査の産業別売上高です。
すごくシンプルに、
1,2009年の売上高÷2008年の売上高によって、産業ごとの影響度合い(前年比上振れ・下振れ)を見る
2,2009年の全体の売上高に占める業界ごとの売上高を出し、その累積を見ていくことで影響を受けた産業(ここでは下振れした産業とする)が全体の何割の売上高を占めるのかを見て、範囲を見る
こういったところをグラフ化してみたのが以下のグラフです。
X軸(横棒グラフ)が上記1の前年比売上高比率、Y軸(折れ線グラフ)が上記2の全体に占める累積比率になっています。
文字小さくて見えにくいと思うのでクリックで拡大可能です。
※業界の分類は、経済産業省企業活動基本調査に示されている各産業における最小単位の分類を利用しています。
製造業を筆頭に各業界が広範囲に影響を受けていることが分かります。累積の売上高の折れ線グラフを見てみると、2割以上売り上げが減少した産業が全体の25%程度を占め、7割強の産業が前年比を維持できず売り上げが減少しているということが見て取れます。残りの3割程度の産業が維持ないし成長していた状況で、多くの業界が影響を受けたということが分かると思います余談ですが、私もリーマンショックの頃は製造業(鉄鋼加工業)にいたので、それはもう悲惨な状況ではありましたが、改めて数字で見てもワースト上位に入るレベルで鉄鋼業は酷かったのだということがよく分かります。
人材ビジネスは全般的に大きな影響受け、ITは受託が影響、広告はマス媒体が大きな影響
HR関係で見てみると、労働者派遣は76.7と23.3%減少と大幅減少、人材紹介は93.8%と6.2%しか下がっていないということになってます(別途、矢野経済研究所さんの当時の人材ビジネスの市場規模推移を見てみると、派遣は市場規模としても同程度の減少率ですが、人材紹介は半分近くになっていて相当ひどいことになっていたので、企業活動基本調査の分類の仕方がちょっと違うのかもしれません)。
ITで見ると、ソフトウェア業が80%となっており、2割減少してますね。ここには受託開発や組み込み開発、パッケージ開発、ゲームソフトウェア開発といった業種が含まれます。リーマンショック当時、受託開発がなくなった、SESは契約解約が出過ぎて、フリーランスや経験の浅いエンジニアの人たちが一斉に業界からいなくなったと聞きましたが、それなりに影響を受けただろうことが見て取れます。
一方で、同じIT分類でも、「情報処理・提供サービス業」や「インターネット附随サービス業」は大きく伸長していました。
広告業は、88.6%とそこまで影響を受けていないようにも見えますが、電通が出している日本の広告費を用いてもう少し細かくみると、当時既にマス媒体からネット広告に予算を移行しているタイミングであったため、マス媒体は大きく影響を受け、ネット媒体は成長していた、という図式であることが分かります。現在はテレビを超え主要な広告として成長したネット広告ですが、今回のコロナショックに、成果が見えやすいネット広告へとより一層の移行が進むかもしれません。
一旦ざっと過去の影響を振り返ってみました。
当然ですが、10年前と今とでは環境が違いますし、コロナショック特有の影響を良くも悪くも受ける業界も出てきていますので、このデータをそのまま受け取り再現すると論じるわけにはいきませんが、一つの参考として、皆様の思考の材料になればと思います。