【短編小説】友達について真面目に考えてみた 第13話
第13話
「もう起きなさい! 遅刻するわよ!」
母親の怒鳴り声が階段の下から響いてきた。俺はカバンを持ち、部屋を出た。
「あら、もう起きてたの。早くご飯……」
母親が俺を見て絶句する。
「ご飯いらない。行ってきます」
なにか言われる前に、俺は家を飛び出した。いつもの近道は通らずに通学路を歩く。知らないやつが横目で俺を見てくる。わざわざこっちを振り返る者もいた。
教室に入ると、クラスの連中が俺を見て一瞬静まり返った。俺の席の前で一人の女子がぽかんと口を開けたまま動かないので、じろりと睨んでやると慌てて逃げていった。
女子どもは教室の隅にかたまり、なにやらこそこそと話している。男子たちは薄笑いを浮かべて、面白そうにこちらを見ていた。
「おはよう」
和が教室に現れた。教室の異様な雰囲気に気づき、不思議そうに見回してから俺に目を止めた。
一瞬だけ目を丸くしたが、
「どうしたの? 珍しいわね」
笑顔で近寄り、声をかけてくる。
「どういう心境の変化?」
「別に。ただなんとなくだよ。悪いか」
「悪くなんてないわ」
外の寒さにまだ鼻の頭を赤くしたままの和が、にっこり微笑んだ。
「お前、嘘ついただろ」
「嘘って?」
「やっぱ寒いじゃんか、これ」
俺の言葉にくすくすと笑うと、クラス中が固唾を飲んでこちらの様子を見ていることなどおかまいなしに、和は自分の机に戻っていった。
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