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【朗読劇】内股膏薬 第3話
第3話
雅恵 「ああ! 思い出したけど、前に一度、怪しいなと思ったの。見ちゃったのよ。あんたが他の女性と歩いているところ。あれは耀子さんじゃなかったわ」
胡桃 「あたしも! 祐輔さんが誰か女性に電話してるのを聞いたことあります。奥さまかと思ったけど・・・ああ! 違う名前でした! 雅恵さんでも八重さんでもないわ!」
八重 「わたくしもそういえば・・・祐輔さんの車に、女性の痕跡を見つけたことがあるわ」
胡桃 「答えて下さい! 祐輔さん! あたしたちの他に会っていた女性は誰ですか!?」
祐輔 「あ、あの、いや、違うんだ」
雅恵 「やっぱりいるんじゃないの!」
八重 「祐輔さん! ひどいじゃありませんか!」
祐輔 「八重さん、違いますよ、誤解です」
雅恵 「祐輔、わたしたちのこと舐めないでよ。あんたの嘘なんて全部お見通しなんだからね!」
胡桃 「さあ、言って下さい! その女性はどこにいるんですか!?」
典子 「・・・私です」
胡桃・雅恵・八重「えええええっ!?」
雅恵 「ちょ、ちょっと弁護士さん?・・・嘘でしょう!?」
典子 「申し訳ありません・・・」
胡桃 「信じられない! アリですか!? 弁護士さんですよ!?」
八重 「あなた法律家でしょう! 自分のやっていることがわかってるの?」
典子 「ええ、わかっています。民法710条に則り、奥さまから損害賠償を請求されても仕方がありません。けれども、祐輔さんのことを好きな気持ちは本物です。祐輔さんも言ってくれました。きみのこと、なにより大切に想っているって・・・」
雅恵 「ちょっと祐輔! あんたいい加減にしなさいよ!」
祐輔 「いやいや! 違うんだってこれは! ちょっとした言葉のあやっていうか・・・」
胡桃・雅恵・八重 「(遮って)ええっ!?」
祐輔、全員から睨まれて黙る
祐輔 「なんでもないです・・・」
雅恵 「祐輔、これは一体どういうこと!? あんた、耀子さんだけじゃなく、わたしたちのことも騙してたの!?」
祐輔 「違う、騙してなんかないよ! 僕はみーんなを愛してる。僕にとってここにいるみんなが素晴らしい女性なんだ。だから、みんなを愛してるんだ!!」
胡桃 「じゃあ、誰を選ぶんですか!?」
祐輔 「選ぶなんてできないよ! いや、違う! 僕は、みーんなを選んだんだよ!」
雅恵 「調子いいこと言わないでよ!」
胡桃 「も~ありえない!」
八重 「まったく、話になりませんわ・・・」
雅恵 「ちょっと待って。さっきからずっと引っかかってるんだけど・・・この家には、祐輔、あんたの生活感しかないじゃないの。女性の洋服一枚、手鏡ひとつないじゃない。ねえ、耀子さんは一体どうしたの?」
祐輔 「耀子は・・・実は、もうずっとここにはいないんだ」
胡桃 「えっ、いないって、まさか・・・奥さまは・・・」
祐輔 「いやいや、死んでないよ。病気でもない。元気に生きてるよ」
八重 「ちょっと! 縁起でもないこと言わないで下さい」
胡桃 「ごめんなさい」
祐輔 「実は、耀子がどこにいるのかは僕もよくわからないんだ。ある日突然、旅行に行ってくると置き手紙を残して、いなくなっちゃったんだ。時々連絡が来るけど、海外を飛び回っているみたいで」
雅恵 「それって、あんたがよそ見ばかりしてるからじゃないの?」
八重 「いいえ、あの子は昔からそういうところがありましたから・・・祐輔さんには申しわけないと思っておりました・・・」
祐輔 「八重さん、いいんですよ。僕は耀子のそういう自由なところが好きなんですから」
胡桃 「でも、それで祐輔さんが寂しくてよそを向いてしまうとしたら、それって奥さまにも責任があるんじゃないですか?」
八重 「それについては・・・わたくしも娘を庇うことができません」
雅恵 「それじゃ、耀子さんがいつ帰ってくるかわからないの? 連絡してみなさいよ」
祐輔 「それが、こっちからかけてもつながらないんだ」
胡桃 「あの、奥さま、本当に生きていらっしゃるんですよね?」
八重 「もう! 縁起でもないこと言わないでちょうだい!」
胡桃 「ごめんなさい」
典子 「実はここに、奥さまからお預かりしているものがあります」
雅恵 「えっ!? どういうこと?」
典子 「本日、バイク便で事務所の方に封筒が届きました」
祐輔 「バイク便!? ということは、耀子は今、日本にいるの?」
胡桃 「それで、その封筒の中には何が入っているんですか?」
典子 「離婚届とお手紙です」
祐輔 「離婚届!?」
雅恵 「どういうこと? 離婚って。ひょっとして耀子さん、わたしたちのこと知ってるの?」
典子 「そういうことになります」
祐輔 「そんな・・・! それで、耀子はなんて?」
典子 「奥さまのお手紙を代読させていただきます。
『祐輔へ ずっと勝手なことをしていてごめんなさい。家を離れてから、ずいぶん経ちます。でもね、不思議なの。世界中のどこにいても、わたしはいつだってもあなたと過ごしたあの家を思い出して、懐かしい気持ちでいます。
だけど、わたしばかり自由に飛び回っているのは公平ではないわよね。離婚届を同封します。わたしの分はサインしておいたから、あなたが別の女性を選ぶのなら、いつでも提出してください』」
祐輔 「そんな! 耀子!」
典子 「『けれどももし、わたしを選んでくれるなら、今日の七時に、わたしたちの思い出の場所に来て下さい』」
祐輔 「思い出の・・・場所・・・」
胡桃 「今日の七時って・・・! 今、もう六時ですよ」