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【戯曲】泣いた赤鬼と鶴の恩返し 第3話


ナレーターA  よひょうはつうがどんどん痩せてきたことに気づきました。
     しかし、美しい反物の評判は広がり、欲しいという人が次から次
    へと現れました。

つう   あんた、あたし、もう疲れてしまったの。もうこれ以上、あれを
    織ることはできないわ・・・。

よひょう たのむ、つう。あと一枚、あと一枚だけなんとか織ることはでき
    ねが。これは、ある偉いお方に頼まれたもんで、断ったらここで暮
    らしていくことができねぐなるかもしれねんだ。

つう   ・・・わかった。これで最後ね。

ナレーターA  つうは戸を閉めて、機織りを始めました。
     機織りの音はいつもよりもゆっくりで、つうは何日も部屋から出
    てきませんでした。

よひょう つう、大丈夫か。ちょっと休んで、なにか食え

ナレーターA  よひょうが部屋の外から呼びかけても、返事はありません。

よひょう つう、つう、大丈夫か。もうあんなもんどうでもええ。頼むから
    出てきてくれ

ナレーターA  ふいに、機織りの音がやみました。しかしつうは部屋から出てき
    ません。よひょうは恐ろしくなりました。

よひょう つう、ここを開けるぞ。な、開けるからな


ナレーターA  よひょうが扉を開けると、つうの姿はどこにもなく、一羽のつる
    が機織りのそばで苦し気にうずくまっていました。

よひょう つう!? つうはどこさ行った!

ナレーターA  よひょうはつうを探し、外へ飛び出しました。


M6 【あなたに会えてよかった】

サヨナラさえ 上手に言えなかった
Ah あなたの愛を信じられず おびえていたの
時がすぎて 今心から言える
あなたに会えてよかったねきっとわたし

寂しい夜 そばにいてくれたね
言葉にできない気持ち わかってくれたね
何にも言えず ただ泣いてるだけで
本当の気持ち いつでも言えたなら
そばにいれたね ずっと

サヨナラさえ 上手に言えなかった
Ah あなたの愛に応えられず 逃げてごめんね
時がすぎて 今心から言える
あなたに会えてよかったねきっとわたし

ナレーターA  村中を探しまわったよひょうがへとへとになって家に帰ると、織
    り終えたつうが反物を持って待っていました。

              ※

ナレーターB  ある日、赤鬼はとんと青鬼の姿を見かけなくなったことに気づき
    ました。

赤鬼   そういえば青鬼がちっとも遊びに来てくれなくなったなあ。
     ようし、こちらから尋ねてやろう

ナレーターB  しかし、青鬼の家は静まり返り、誰の気配もしません。
     不思議に思った赤鬼は、そこに青鬼の手紙を見つけました。

青鬼  『赤鬼へ

     俺ときみが友達であることがばれたら、村の人たちはきみに騙さ
    れたと思うだろう。
     だから俺は旅に出ることにした。
     遠くからきみの幸せを祈っているよ』

赤鬼   そんな! 青鬼! 青鬼!

ナレーターB  赤鬼は泣きました。泣いても泣いても、涙が止まりませんでし
     た。


M7 【ひまわりの約束】

どうして 君が泣くの
まだ僕も泣いていないのに
自分より悲しむから 辛いのかどっちかわからなくなるよ

がらくただったはずの今日が
二人なら宝物になる

そばにいたいよ 君のためにできることが
僕にあるかな
いつも君に ずっと君に
笑っていてほしくて

ひまわりのような 真っ直ぐなその優しさを
ぬくもりを全部
これからは僕も 届けてゆきたい
ここにある幸せに 気づいたから


ナレーターB  赤鬼は涙を拭き、立ち上がりました。
     そして、青鬼を探す旅に出ました。

             ※

ナレーターA  つうは織り終えた反物を抱き、よひょうを待っていました。

よひょう つう、おまえ・・・

つう   あんた、見てしまったのね。見ないでってあれほど言ったのに。     
     あたしはもうここにいられない

よひょう つう、行かないでくれ

つう   これは誰にもあげないで、取っておいてね。あんたのために、
    最後の力を振り絞って特別に織ったものなんだから

よひょう つう、頼むから行かないでくれ

ナレーターA  つうは鶴の姿に戻りました。そして大空へ飛び立っていきまし
     た。

よひょう つう!

ナレーターA  よひょうはつうを追いかけましたが、やがて見失ってしまいまし
     た。

M8 I LOVE YOU

I love you 今だけは悲しい歌聞きたくないよ
I love you 逃れ逃れ 辿り着いたこの部屋

何もかも許された恋じゃないから
二人はまるで 捨て猫みたい

この部屋は落葉に埋もれた空き箱みたい
だからおまえは小猫の様な泣き声で

きしむベッドの上で 優しさを持ちより
きつく躰 抱きしめあえば

それからまた二人は目を閉じるよ
悲しい歌に愛がしらけてしまわぬ様に

ナレーターA  よひょうは家に戻り、家中のお金をかき集めました。
     そして、つうを探す旅に出ました。

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