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そして私は同人誌を作らなくなった

私は二次創作するタイプのオタク。
でも、最後に同人誌を発行したのは2019年10月だ。

なぜはっきり覚えているかというと、参加予定だった同人誌即売会が、大型台風で中止になったからである。
それを最後に、私は同人誌を作っていない。

人生にはままならないこともある

台風は自然災害で、人の手ではどうすることもできない。中止は仕方のないことだと分かっている。
しかしそれでも、私はそこからプツッと糸が切れたようにやる気が削がれてしまった。

私は、そう頻繁にイベントに参加する方ではない。
同人誌を初めて作ったのすら、2017年。刀剣乱舞にハマって初めて同人誌を作った人は、私の周りで多かった。私もその一人だ。
イベントは、その中止になった回で4回目ぐらいだったと思う。友達に売り子を頼んだり、一人で参加したりなど楽しんでいた。Twitterで仲良くなった人たちとアフターに行ったりもした。
それ以上に即売会というイベントは、普段どんな人が私の作品を読んでくれているのかを知ることができるチャンスである。私にとっては、それがたまらなく嬉しかった。

それが台風によって失われてしまったのだ。
それから半年経った頃にはコロナ禍になってしまい、イベント自体が開催されなくなった。

わたしと読者の温度感

前述の通り、普段作品を読んでくれている人が実際に目の前に現れることも楽しみにしている要因の一つだ。私は小説を書くので、漫画と違って「ついで買い」みたいなことはあまりされていないと思う。だからこそ、手に取ってくれる人は大半が今までどこかで私の創作を読んだことがある人なのだ。
その人に直接「ありがとうございます」と言える機会はとても貴重だものだった。

けれど、中止になったイベントで頒布予定だった本を仕方なく通販に切り替えた時「イベント中止は残念ですが、行けない予定だったので通販してもらえて嬉しいです」というメッセージが届いた。

その人は本心で嬉しくて、その喜びを素直に私に伝えてくれたのだろうと思う。
そして、そこまで読みたいと思ってもらえていたことに、私も感謝はした。するべきだと思った。

しかし、通販での頒布は私の意図したところではない。理想の形ではないと思ってしまったことに、温度差を感じた。
イベントで直接頒布することが私の目的だったのだ。
通販だけで頒布するなら、正直に言うと本を作る気すら起こしていなかっただろう。

同人誌は気持ちの“割”に合わない

私はそもそも、初めて同人誌を作った時の動機が「イベントにサークル参加をしてみたかったから」なのだ。サークル参加する手段が「同人誌作成」だったのである。
何故サークル参加したかったかというと、前述の通り仲の良いフォロワーさんに会ったり、普段作品を読んでくれている人と直接言葉を交わしてみたかったからだ。

それが発生しない場合、私個人としては同人誌を作る労力や金額が、それを通して得られるものの割に合わないと感じている。
その“割”というのが私にとっては本を手に取ってもらえたという「手応え」と「感想」である。
「手応え」は、通販であっても頒布数を見れば数としては可視化できるだろう。しかし私にとって重要だったのは、実際に頒布した数よりも、イベントで目の前で買ってくれたことを見ることだ。通販ではそれは叶わない。
もう一つの「感想」。これは同人界隈、とりわけ小説サークルではTwitterでもよく話題に上がる問題だ。
正直に述べると、最後に発行した同人誌について感想をいただいたのは1件だった。発行部数に対して1%未満である。

感想というのは、なにも私が書いたものを私が喜ぶような、感動的な文章が欲しいわけではない。
ただ一言「読みました」の合図が欲しいだけだ。さらに楽しんで頂けた様子が分かる言葉をもらえたらよりハッピーだけれど、そこまで高望みはしていない。
しかし、感想は思った以上にもらえないのだ。

ならpixivでいいや

正直なところ、そう思ってしまった。
実際、ネット上に上げた方が見てもらえるし、なんなら匿名ツールなど比較的簡単な方法で感想だってもらえてしまうのだ。
50,000字以上の本よりも、3,000字前後ぐらいの短編の方がサクッと読めるし反応も良い。読み手の反応が良ければ嬉しいし、次に書こうという気も起きるものだ。

同人誌を作る、という労力をかけた分、どうしてもその後の反応を高望みしてしまう。私は同人誌を作る者として、創作者としてはきっと良くないマインドで生きていると思う。けれど、どこに身を置いた方が気持ち良く創作ができるかが分かって良かった。

実はまた別ジャンルで本を作ろうかどうかと、うだうだ書いたり辞めたりしている最中である。表紙のラフ案まで作ってあるが、これが日の目を見る日が来ることは、もしかしたらないのかもしれない。
それでも私は今、とても楽しいです。