となりがるーむめいと・17
「………気がついてるかもしれないけど、あの人、変わってるんだ……」
矢島が穏やかにつぶやくと、
「………うん、昨日気付いた。」
カゲヤマが穏やかに答えたので、矢島は失笑した。
「黒澤、黙ってすましてるとオトコマエだし、仕事も出来るから周りが気付いてないんだけど、ちょっとね……」
言い終えたあと、二人は揃いも揃って仕方ないような感で笑った。
「……ただね、イイヒトには間違いないから………。俺、あの人に訳あって小さな頃からよく面倒みてもらってたんだけど、いい意味で暑苦しいほど義理堅くってさ……。でも色々助けてもらった。」
矢島が微笑みながら楽しそうに何かを想い出しながら黒澤のことを話す様子をみていると、矢島がいかに彼のことを信頼しているのかはしっかりと伝わってきた。
「つまんない話だけど、カゲヤマ、聞いてくれる?」
小首を傾げるカゲヤマをミラー越しに温かく見つめる矢島の頭の中には、黒澤との思い出をたどる際に、中学生の頃、桜咲く頃に父を亡くした際の記憶が蘇っていた。