となりがるーむめいと・16
少し離れた海辺のカフェへ向かい、車を走らせると、眩しい午前の光が、青空と溶け合いながらフロントガラスにこぼれる。
海が空の色に染められ、更に碧く、深く輝いている。
自然と二人は笑顔になり、昨夜からの出来事をすでに笑い話に変えつつ話し出していた。
「大体黒澤が来るまでは、落ち着いて楽しかったのに……。」
つい、本音で彼も話すと、カゲヤマがまた、笑った。
そういえば、カゲヤマは、どちらかといえば人見知りがちだが、矢島と一緒にいると、不思議と落ち着く自分に気付いた。
特に小さい頃は、母一人子一人だったので、成長してからも異性との対話もどこかぎこちなく、気疲れすることが多かった。
震災で共に大変な危機を乗り越えたせいか、矢島の存在を頼もしく思っていたし、それは昨夜からの出来事を通じて、更に強く感じるようになった。
退職する前に、あの時のお礼も言いたかったし、滝川からは釘を刺されていたが、それだけは叶えたかったので、今の状況が夢のようで、カゲヤマは心から嬉しかった。
会話中、矢島が、ふと、想い出したように、
「そういえば、黒澤のことなんだけど……」
「うん」
「あの人さ……」
「……うん」