となりがるーむめいと・10
カゲヤマは何も言えず、立ち尽くした。
今の部署での出来事は、矢島には言えない、心配を掛ける。
戸惑っている彼女の様子を察したのか、
「よし、オレ、付き合うから、力仕事はまかせろよ。」
矢島は余計なことは聞かなかったが、すぐに腕まくりを始めた。
「ええーっ、矢島、大丈夫だよ。忙しいでしょ。」
「いいよ、これからは明後日の会議の準備だから明日でも間に合うし、……気のせいか、お前、泣きたそうな顔してるからこの場を離れたくない。」
「………ありがと。」
矢島の温かい言葉に、泣きたくなるのをこらえて、笑ってみせた。
「カゲヤマ!」
「なあに?」
「………。やっぱりオマエ、笑ってる方が、似合うから。」
はにかんだように笑いながら矢島がそう声をかけると、カゲヤマが顔を赤くした。
その瞬間、事件が起こった。