となりがるーむめいと・15

「ようやく落ち着いたな……。」

ハンドルを切りながら、矢島が深呼吸しながら失笑気味でつぶやいた。

上手く脱出した(?)二人は車内でようやくくつろいだ気分になり、つい、カゲヤマも本音が飛び出し、

「うん……、何でかな……?。
室長が来た後から、また騒がしくなったよね……。」

と、つぶやいた後、二人で吹き出した。

矢島とカゲヤマは、黒澤室長がすっかり寝入っている隙にこっそり身支度をし、人目につかないよう管理用のエレベーターを使ってダイレクトに駐車場から車で抜け出した。

「カゲヤマ、そのワンピース、黒澤が用意したヤツ?」

黒地に白とピンクの小花のリゾートワンピースは、お部屋に戻れないでしょうから当面のお着替えですと黒澤が洋服や下着等色々紙袋に詰めて持ってきたものだったが、

「うん、女子社員に頼んで買って来てもらったって……。いいのかな?、こんなことしてもらって?」

「秘書課のお詫びの品と思って受け取っていいんじゃない?、
あくまでも一部としてね。似合ってる。」

昨夜黒澤から聞かされた秘書課の一部のカゲヤマへの仕打ちに、まだまだ内心怒り爆発の矢島は、込み上げてくる怒りをしっかり抑えながら、はにかんでる彼女に笑顔を向けた。

……多分、先日黒澤が、矢島の母親に誕生祝いで持って来たエプロンによく似ているので、おそらく女子社員に買いにいかせたというのは嘘だなと、ため息をついた。

いい意味で真面目、裏を返せばこうと思ったら融通がきかない……、こんな風に自分がいいと思ったものは相手が誰であろうがそれを贈るように。
まあ、年代を問わない上品な柄だし、似合ってるから幸いだったが……。
子どものころから黒澤のことをよく知っている矢島は、昨夜切り出してきた同居の件も、今後押し通してくるだろうな……と嫌な予感がしつつも、今の瞬間は忘れようと、カゲヤマの笑顔をみて思い直した。

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