人生で一番幸運だったこと
はっきりと言い切れる。帰国子女になれたことだ。
本当に父親には感謝しかない。海外赴任決めてくれてありがとう。当時の父親の上司も、うちの父親を中国に飛ばしてくれてありがとうございます。
周りを見ていると、生まれも育ちも同じ場所という人は結構多くて。そういう人はやっぱり固定観念に縛られがちなところとか変化を嫌うところとかあったりしやすいなと、特に名古屋で働いてたときに強く感じました。
自分は幼稚園の2年間を上海で過ごしました。当時の園児は確か20人弱、現在この幼稚園の園児数は500人ほどいるとのこと。
自分も含め園児はみんななぜ自分たちが中国にいるのか、おそらく理解していなかったでしょう。でもここは日本じゃなくて、日本と違って生卵は食べられない、ってことくらいはみんなわかっていたと思います。
少し話は変わって、私は嫌いな食べ物がほぼないに等しいです。あまり得意じゃないものはそこそこあるけど。セロリと、パクチーと、にんじんとごぼうと、いちじく、は自分では買わないです。でも提供されたら残さず食べます。別に食べられないわけじゃないので。
小さいときは嫌いなものは嫌いって普通に残してたけど、小学校高学年か中学生くらいからだろうか、世界にはその日食べるものもままならない子どももたくさんいるのだと社会か何かの授業で教わるようになって。それを聞いて、そういえば上海の道端で同じくらいの歳の子が物乞いをしていたことがふと思い出された。自分は自分の目で食べ物に困っている子どもを見ているのだとはっきりと意識するようになった。
嫌いな食べ物を克服していくようになったのはそれからだった。味が好みじゃないってだけで残さないようになって、毎日ごはんが食べられることにありがたさを感じるようになった。
食べ物のありがたさ、大切さをこんなにも感じることができたのは確実に上海で過ごした経験からだ。あまり記憶にも残らない幼稚園の2年間だけど、この2年間がなかったら、自分の世界はもっともっと小さかったことでしょう。
小学生のときに、転校したけど6年生のときに戻ってきた子がいた。その子は戻ってきたときには、周りの子より大人びた感じがあったのをよく覚えている。地元以外の違う世界を見てきたことで、きっと他の子より一回り早く成長したんだろうなと今になって思う。
自分は「もっと大人になりたい」とよく思うけれど、今まで経験したことをまとめると、大人になるということは、それだけ多くの世界を自分の目で見るということになる。考えてみると果てしない。
それでも帰国子女という強運を無駄にはしたくない。経験の大切さを身に沁みて知っているから、自分は周りよりも、新しいことや新しい環境に飛び込みやすい質であるはず。
かなしいことに歳は取りたくなくても取っていく。残りの人生で私はあとどれだけ大人になれるのか。なんだか哲学的になってきたぞ。だけど、立ち止まりたくはないものですね。