育休に関する法改正について思うこと〜その2
6月に成立した法改正について思うことをnoteで勝手にいろいろ言うシリーズ(そうだっけ?)、
その2として、「法改正と会社」という目線で好き勝手書きたいと思います。前回に引き続き、中小企業勤めの小人による戯言としてお気軽にお付き合いください。
さて、今回成立した法改正で、雇用側のみなさんが敏感に反応したのが
「義務化」
の文字だったと思います。
「育休を取ること・取らせることが義務化?」
という誤解もあるようですが、そうではありません。今回義務化されるのは、「個別の制度周知・意向確認」に関わる部分。
具体的には、相談窓口を設置する/面談で制度説明をする/書面による情報提供をするetc‥、省令で用意したいくつかの方法から自分の会社でできそうな方法を選んで、制度の周知と育休取得の意向確認をしないといけないよ、という内容になるようで。9月〜12月くらいには指針が出されるようです。
でもこんなの、本来はいちいち省令で措置を決めてもらうようなものじゃないように思うんですけどね。だって、雇用側と働く側との「どう働いてほしいか」「どう働きたいか」の基本的な合意の延長上にあるものじゃないの?と。不当な解雇に繋がりかねないので、省令で細かい運用までもを定めておくって感じなのでしょうか。
いずれにしても、これは出産する本人である女性従業員のみに対する義務ではなく、パートナーが妊娠した男性従業員に対しても行わなければならない措置です。
なので、男性の皆さんは、パートナーが妊娠したときは予定日の半年前くらいに会社に報告しましょう。そして制度説明がなかったら要求しましょう。
国と会社の制度をきちんと理解した上で、自分たちは産休・育休をどう考えるのかを決めていくことが重要ですね。
このとき、会社側の方は間違っても「育休の制度はこうなってるけど、取るとか言わないよな?」と男性従業員に対して言ってはいけません、法律違反一発アウトです。
会社の規模の大小に関わらず義務化されますので、他の改正とあわせてチェックして、就業規則に盛り込む必要がある会社もあるかもしれませんね。
ちなみに、1000人以上の従業員を抱える事業所などは、育休の取得率が公表されます。この育休取得率の公表は「くるみん」認定の要件にもなってくるのですが
「育休取得率」って、「育休取得者/会社が把握している配偶者出産者」で出されているんですよ。
要は、会社が把握してなければ分母の数に入らないんです。
蛇足ですが、最近は共働き家庭が増えていますから、お子さんが夫婦どちらの扶養に入るのか?なんていう揉め事も増えていて、下記のような改正が入るほど↓↓
つまりですね、最終的に男性側の扶養にでも入れない限り会社側はその事実を知り得ず、育休取得率の分母にも入りません。
すなわち、その方のパートナーが妊娠されても、そのことを言わなければ、制度周知等々諸々の義務自体も発生しないことになりませんかね・・・
何が言いたいかというと、法律が変わっても、運用するわたし達の意識が変わらなければ、現状の文化が変わっていくのは難しい、ということです。
法律や規則を熟読する人ってあまりいないだろうし、読んだところで良くわからないし、「会社(国)にお任せ!で、何してくれるの?」となるのもある程度は仕方ないと思います。
とはいえ、受け身でいては損することって往々にしてあります。
わたしの場合、2回の育休開けはどちらも時短復帰だったので、将来の年金が減らないようにするための申請をしたら、2回目の申請時に会社に突っぱねられました。
補足:将来の年金額はお給料によって変わるので、時短してお給料が減ると年金も減ってしまう・・ということがないように、子どもが3歳になるまでは時短する前のお給料をベースに将来の年金額を計算しておくね♪という素敵な制度があります。これね↓↓
突っぱねられた理由は、2人目の産休直前は時短勤務をしていたんだから、従前のお給料=時短のお給料になる→申請不可、とのこと。
でも、これは完全に間違った解釈で、わたしのような場合(1人目が3歳未満で2人目を妊娠・出産)でも申請できることを解説した国ベースの情報ソースをもって申し立て、社労士さんに年金事務所に問い合わせてもらって、無事適用してもらいました。
うちの会社は、人事手続きマターを社労士さんに外注しているのに、こんな感じです。微妙な解釈の追加や変更とかで小さな法改正は都度あるし、プロだってすべてを網羅して熟知しているわけじゃないんです。
わたしの後輩(女性)は、自分の通勤時間が長いので保育園の送り迎えを旦那さん担当としているそうです(旦那さんの職場と保育園の距離:徒歩10分)。
そこまではいいのですが、旦那さんは会社にそのことを言っていないんですって。
後輩からするとその感覚が理解できず、ちゃんと会社に言うように何度も伝えているそうなのですが、
「余計な配慮をされるのが煩わしい」
の一点張り。
結局業務調整がつかないこともままあり、旦那さんは2時間離れたところに暮らす義母(後輩のお母さん)に簡単にヘルプ要請を出しているとか・・・
この状況についてとやかく言うつもりはありませんが、少なからず後輩は不満に思っており、いくら法整備をしたり、就業規則を手厚くしたりしても、それを受け取る側がこういう感覚でいたら、その制度は運用されることはありません。
そもそも、事例1件1件に適合するように微に入り細に入り決まりが作られているわけではないので、「この制度をわたしたちに適用すると・・・」と検証するのって実際面倒ですよね。すごく良くわかります。
でも、自分たちが快適に暮らすためのちょっとした面倒なことを煩わしがって、子どもが生まれる前の暮らし方を維持することに固執するなんて、あなたの会社は老後あなたのオムツを替えてくれるんですか?と問いたい。
ルールと恩恵を享受する側は享受する側で、主体性を持って制度を運用し吟味していかないと、より自分たちにフィットしたルールにはなっていかないことを、しっかりと意識していきたいですね。
そうは言っても、働く側の意識改革はそう簡単にできるわけでもないので、会社側からも1件1件の事例に寄り添って、就業規則なりを整備してもらいたいなと思うわけです。
例えば、産前休業。予定通りか緊急かは別として、今や4人に1人が帝王切開による出産をしているそうです(2017年厚労省発表)。
そのうちの4割が予定帝王切開とのことですから、10人に1人の妊婦さんが予定帝王切開、つまり妊娠月齢から予想される「出産予定日」と「帝王切開予定日」の2つを持っている計算となります。
このときの産前休業をどう扱うか?
法律的には「出産予定日」を起算するとされています。が、手術予定日が出産予定日よりもかなり早い場合、いつから産休に入っていいのか、悩みます。
こういうときに、従業員に不利益がないように、制度を一緒に噛み砕きながら柔軟に対応できるような職場でありたいですよね。
補足と考察:産前休業は「母体保護」の目的により「産前6週前は就労させてはならない」とされているものに起因する。その意味では、産前休業の起算日はやはり「出産予定日」とするべきかもしれないけれど、手術日が決まっているのであれば職場は「手術予定日」の6週前から休暇に入ることを認めてあげたらいいと思う。ただ、何らかの理由で手術日が遅れてしまった場合、出産日が後ろ倒しになる=産前6週間以上の休暇を取ることになってしまうので、その分の無賃金期間に対する手当は用意してあげたい。だって、普通分娩だったら予定日より出産が遅れたら自動的に産前休業期間が伸びるから。
縁あってそこで働くことになって、人生のうちのかなりの時間を職場で過ごします。職場における仲間意識や帰属意識は昔と比べて随分薄れていると言いますが、出産という一大ライフイベントを迎える従業員と、一緒になって喜び合い助け合える職場環境が増えていくことを願ってやみません。
同時に、男性も女性も出産・子育てと働くことに対する固定概念を取り払って、「自分たちはどう生きていきたいか」をフラットに、かつ主体的に考えるための、有益な情報を得るアンテナを張ってほしいなと思います。
今回の法改正、会社の人事制度における「産休・育休」に関わる部分を、より実情に即して紐解いてみるいいきっかけになるのではないでしょうか。
参考リンク:このオンライン講義面白かったです↓