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【介護エッセイ】食事について①~母、ショートケーキからの復活劇~


これまで家族のなかでも最も健康だった母は、4年前に間質性肺炎という難病を患い、2022年6月より在宅酸素療法(鼻にチューブ入れて常時酸素を吸っている状態)を行うようになった。

その後、2023年の1月、突然自分でトイレに行けなくなり、あれよあれよという間に私と父の介護生活が始まった。

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「お母さん、ケーキが食べたいって言ってるよ」

母のケアに来てくれていた訪問看護師さんの言葉に私は耳を疑った。「ケ、ケーキですか?本当に??」

食事が全く摂れなくなって数日、往診してくれたかかりつけ医に「このまま食べれなければ、(余命は)一か月から月単位」と言われたその日のことである。

半信半疑で母親に聞いてみた「ケーキ食べる?」。母「うん。あるの?」と。「おお」本当だ。ただ常時ケーキがある家は少ないと思われるだろう、が、なんと!その日我が家にはケーキがあった。前日に母の兄夫婦がショートケーキを手土産に、見舞いに来てくれていたのだ(奇跡だ)。

ただ昨日は、食事が摂れないと言っている人の見舞いにショートケーキを持ってくるなんて、なんてマイペースな叔父かと、内心批判的に思っていた私。「ナイス叔父さん!悪く思ってごめんなさい」とすぐに気持ちを切り替えて、紅茶と共にイチゴのショートケーキを母の元へいそいそと運んだ。すると母は、「あ~美味しい」と言いながら、なんとあっという間にショートケーキまるまる一個をぺろりとたいらげてしまったのだ。

一体何が起こったのか、母がそこまでケーキが好きだったという記憶はない。ただ、「ケーキ、そんなに好きやった?」と尋ねると「そうやな~、子どもの頃はケーキなんてめったに食べられへんかったからなぁ」と。また、「今は太るの気にせんでええからな」と。現在の母は、徐々に食事量が減ってきていたこともあり、体重は30キロもない状態。子どもの頃のあこがれの食べ物、大人になっても太ることを恐れて自由に食べれなかった食べ物・・・そんなケーキへの思いが、今爆発したのか、なんとその日から毎日連続で2週間以上ケーキを食べ続けている。

まさにケーキからの復活劇。

口から物を食べるということの大切さを改めて感じたのは、これまですっかり足が立たなくなっていた母が、自分でポータブルトイレに行けるようになり、力む力がなくお尻の入り口までしか出てこれなかった便を、尻の外に押し出せるようになったからだ。お腹に食べ物を入れるということで、身体に力が湧いてくるのだということを、私は母を見て実感することとなった。

あの時、看護師さんが母の希望を聞き取ってくれて、教えてくれたからこそである。そして、マイペースな叔父が病人の病状を忖度することなく、誰もが喜ぶケーキを買ってきてくれていたことも、今となれば感謝である。

それからとういうもの家族は「今日のお母さんのケーキがない」と足しげく近くのケーキ屋さんに通うようになった。できればこのままそのお店のポイントカードがいっぱいになって、割引してもらえる日を迎えられたらいいなというのが、今の私たち家族の願いである。

追記:2023/4月現在、家族がどうしても買いに行けなかった数日をのぞき、母の連続ケーキ記録は、2カ月を更新している(私は途中一度、こんなにケーキを食べ続けていいものだろうかと一瞬怖くなった。すぐに、まぁええんちゃう、となったが)。ちなみに、ポイントカード1枚目はいっぱいになり、現在2枚目に突入している。すごいね、かあちゃん♪

※この記事は、2023年2月から約半年間、父と実家で母の介護をした時に書き溜めたものを加筆修正したものです。


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