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RETOIRO、終了します。【D2Cの開始から終了まで】

最初の3行に、当たり障りない定型文を書いては消して、ため息がでた。もう3週間も同じことを繰り返してしている。

上司にも「終了について書こうと思っている」と伝えたにも関わらず全然書けない。

そう、こうやって書いてしまうと、もうこの世から「RETOIRO(リトイロ)」がなくなってしまうことを自分の口から言うようになるから。全く筆が進まない。夏休みの宿題みたいに終了数日前公開になってしまった。

■はじめに

D2Cという流行り領域に、美容プロ商材の少しの経験とメディア経験のみという、マーケ経験がまったくない中で、冷静と情熱の間を彷徨いながら、新規事業創出というエキサイトの一大イベントで事業案を提案し、「RETOIRO」と他いくつかのD2Cプロジェクトはスタートすることとなる。

その初期チームの中で、結局リリースできたのは、このプロジェクト「RETOIRO」だけ。にも関わらず、リリースはしたもののエコノミクスを合わせられず、3月31日12時にクローズすることとなった。

成功noteは数々でているが、商品がたくさん出ては消えているこの業界で、やめる決定に至ったことを書いているものはほぼないし、D2C界隈の方と応援していただいた方に向けて記したいと思っている。

■01.商品に想いを込めるだけでいいのか?ということ

個人的観点ではRETOIROにはとても想いがこもっている。というのも、母親になってから第一子の子育ては目まぐるしいほど大変で、小さい何もできない我が子の生命維持だけで精一杯だった。自分のことを気にかけている余裕は私にはなかった。

冷め切ったご飯を授乳の栄養のために食べて、髪を洗う時でさえ子どもから目を離せず雑多に洗っていた。子どもの肌に触れるからファンデーションはつけなくなった。

基礎化粧品もオーガニックに変えた。髪も染める時間がないから黒髪にした。デパコスなんてなかなか買いにいけず…1人の時と180度生活が変わった。本当に大きな変化だ。

ーー家事に育児に翻弄され、ひとりになれる時間もなければ余裕もない。そして何も生み出してない。

そんな日々が大変だったからこそ、少しでも自分を取り戻せるように、そんな日々に「わたし」をまた見いだして、短いひと時だけでもホッとできるようにRETOIROを作ったのだ。

この想いに共感していただき、継続してくださる方も多かった。そして、癒されて助かった、子どもと一緒に使っている、子どもが気に入っているというお声をたくさんいただいた。

■02.商品作りはどのようにやったか

商品は、元々美容関係に強いこともあり、たくさんの方にヒアリングさせて頂いた。化粧品プロデュースをしているコンサルの方、想いを持って商品をつくり1年非常に苦労したが想いを伝え続け今や伊勢丹アポセカリーに並ぶブランドプロデューサーの話。

そして数々のセミナーはくまなく行ったし、今をときめくD2Cスタートアップ界隈の皆さんの話も聞きに行った。成功者の話は圧巻だった。

そして商品開発へ。OEMも複数社まわった。リリース時期が確定していたのでかなりギリギリのスケジュールをやりくりして妥協なく、こだわって作った。

▼商品開発:ヘアメイクUさんがいたからこそのクオリティ担保

有名サロン出身でテレビやCM、広告のヘアメイクをしている10年来のお付き合いの元美容師さんとともに商品開発をした。

有名ブランドの商品テストを数々やっており、明確な指摘をしてもらったことで商品クオリティを担保している。

私の不明確で感覚的な言葉を明確な言語化でフィードバックすることで、良い改良がされ、短い開発期間にも関わらず時短ケアでも満足できる、サラサラしっとりするクオリティの高い商品ができた。
(※写真:私です。サラサラ!)

▼成分:ペインを解消できるものを中心に

洗浄成分はアミノ酸系とベタイン系で低刺激。家族で安心して使えるように気をつけた。ケラチン配合で髪の根本から綺麗に。そしてゼイン系を配合することでコンディショナーなしでも表面コートし、保湿感キープ。そしてセラミド配合で潤いを。

時短だけど時短に感じさせないようにするため、美容成分は贅沢に配合した。
(※写真:友人美容師にもテストを手伝ってもらい、仕上がりをいつも送ってもらっていた。)

▼香り:心が落ち着かないからこそ癒されてほしい

そして香りにもこだわった。香りはありきたりなものより、癒される、五感に訴えかけるようにとオーダーし、素晴らしい香りをアロマコーディネーターの方にプロデュースしていただいた(契約期間満了につきお名前が出せず残念…)香りは抜群によいけれど、価格が高いものばかりで調整は本当に大変だった…。

このアロマの香り、業界の方にかなり高評価で、お客さまの満足度がとても高い。

▼プロダクトデザイン:共感とセンスの良さでセレクト

プロダクトデザインは白本由佳さんにお願いした。デザインをみて、綺麗な色使いとセンスに惚れ惚れし、この方に依頼したい、でも数々の賞を受賞しているし、難しいかな…と思いながらのアタック。

白本さんを見つける前に合計十数社ほど話を聞き、白本さんは1番言葉数が少なかったが、そのセンスの高さに決めた。制限のある中とても素敵な雰囲気に仕上げていただいた。(プロダクトデザインについては編集後記に)

それ以外にもたくさんの方々のご協力があって、商品は完成したのだ。

■03.想いを込めたけどその後は?

メディア経験があること、そして想いを込め、それを伝えたことで雑誌媒体やウェブ媒体にはたくさん掲載していただいた。

オールインワン、サスティナブル文脈にハマり総勢35媒体。特に好きで購入しているGINZAさん、しいたけ占いを毎回読んでいるVOGUE GIRLさん、ヘアメイクの早坂さんに選出頂いたGLOWの上半期ベスコスは嬉しくて飛び上がった。

毎月多数の媒体さんの掲載チェックは率直に嬉しい。けれど、掲載されたからって飛ぶように売れるわけではない。商売の難しさをさらに実感した。

■04.マーケで売れるポイントは作っていたけれど、葛藤の連続だった

ウェブマーケはインハウスに協力者を入れ運用したが、なかなか上手くいかなかった。その理由は、訴求を振り切れなかったこと、LP・記事LPの良し悪しの感覚が弱かったこと。

今はさまざまな経験して、シャンプー競合はもちろん美容ジャンルのLPや記事LPを研究してどのような感情の変化をしてもらい購入へ紐づけるかわかってきたので、この訴求は刺さる、刺さらないやLPの良し悪しも大枠予測できるが、はじめての連続でなかなかよい意思決定ができなかった。

獲得できる入口戦略を強くすればLTVが見合わず解約が増える、このバランスを最後まで調整しきれなかった。何よりこの売り方で良いのか、この訴求はRETOIROに合っているのかというのを納得しきれなかった部分があった。

まさに開始前に想像しきれていかなかった、戦略を書ききれていなかったことが原因。そして、エコノミクスを合わせられず終了を決定した。

■05.終了に至ってしまった責任は私にあり、そしてお客様、一緒に作ってきた仲間たちに感謝

(※写真:10年ぶりに仲良しだったモデルKさんに会えたり、当時ヘアカタ常連だったAさんとのモデル撮影)

今までも新しい企画や新規事業をやってこなかったわけではない。新規媒体をPMとして立ち上げて、たくさんの方に読んでいただいたり、新たなコンテンツ投下して爆伸びしたり、たくさん失敗しちょっとした成功もしてきている。

けれど気がついたのは、上司という存在がいたお陰で色々オブラートの中で仕事をしていたようだったということだ。ここまで自分が表立って中心にやってきたことは、得たものの方が大きい。

そして、途中上司がついてくれたこと。最初から一緒にできていたら成功角度は上がっていたと思うけれど、結果的には良かったと思う。自分の欠点も大切にすることもよく分かった。

周囲の皆さんはいつも叱咤激励してくれ、初月数百件購入に繋がったのもそのおかげ。その後購入が伸びず周りの友人に声をかけ、二言返事で購入してくれる人も多かった。本当に感謝しかない。

苦しい時、チームメンバーはいつも「大丈夫!頑張ろう!RETOIROいい商品だから!」と前向きに、時には施策や方向性について、お互い高めるために言い合えるいいチームだった。当時子どもが小さく時短で17時には帰宅していた頼りない私をサポートしてくれて、信じてくれて本当にありがとうとしか言いようがない。

そして会社では、すれ違う度声をかけてくれる、終了告知をすれば「お疲れ様」と自分ごどのように「大変だったよね」と声をかけてくれる。「あーあったかいなー。でも何も残せなかったな」と感謝と反省の繰り返しの日々である。

一見、商品プロデュースとなると「すごいですね!」なんて言われることもあるけれど、配送まわりは1ミリ単位の戦いだし、基材が良くなるよう中間フィーを抜くために電話と足でさまざまなものを探し回ったり、冊子やインスタも自分たちで制作して運営したり、この想いはどうしたら届くのかと思い悩む、泥臭いことばかりの一年だったなと思っている。(キラキラしたイメージがある方すみません)

成功者しか語らない中、何語ってるんだって自分でも思う。けれど、いつぞや「リスクテイカーですね!」と言われ「たしかに成功までの道筋を藁を掴んで探しまわっては消える」そんな状態だった。失敗したら辞めるしか…なんて思っていたけれど、失敗させてもらえた環境にいて、さらに新たな事業に参画させてもらっていること、信頼してもらっていることはすごいことで、感謝感謝だなと思っている。

今度は成功へ導ける力をもっともっとつけたいと思っているので、皆様引き続きよろしくお願いします。

それには、まずこの愛すべきRETOIROたちを、あと数日でどこまで届けられるかだ。

<おまとめ買いセール実施中:3月31日12時まで>(※終了日時となりましたので、リンクをとりました)

そして、今関わっている事業と案件は成功させたい。また心を込めたプロダクトやサービスを世に届けられるように切磋琢磨していきたいと思っている。

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■06.編集後記:プロダクトへの想い

今回、はじめてプロダクト制作に携わって、白本由佳さんに出会えて本当によかった。同じママで、子どもが小さい頃にフリーになり数々の賞を受賞。繊細なデザイン。特に色使いは素敵すぎて、本当に感心だった。

たくさんのデザインバリエーションを提案いただき、こうしよう、ああしようとご意見を交わしながら二人三脚で作れたこと、一つ一つが形になっていく過程はwebでは感じられない手に届くという感動があった。

webと違いシンプルなデザインに少し心配があり、感覚が掴めずにいたが、センスを信頼したから大丈夫!と思い、実際にサンプルができてくると感心するばかりだった。

プロダクトはデザインと紙とインクでマジックみたいに何倍も素敵になること。それを見越して作れるセンスは、素敵すぎる。

※白本さんに終了にあたりコメントをいただくことができたので、記載させていただきます。

▼はじめてお話しをした時どのように思いましたか?

初めての打ち合わせで商品のコンセプトなどを聞かせていただいたとき、奥野さんの商品への思いがとてもよく伝わりました。お互い子育てをしながら働く母で、ターゲット層に近いこともあり共感できるところがたくさんあったと思います。ですので、できるだけその商品に込められた思いをデザインで表現していきたいなと思いました。

▼実際に完成した商品を見てどうでしたか?

とてもよい商品で、オールインワンシャンプーでありながらしっとりとした洗い上がりで香りもよくお気に入りでした。忙しく時間がないときでもRETOIROがあればという安心感もありましたし、家族全員で使えることもよかったです。奥野さんのアイデアで箱の包装や、ギフトカードがあったことでプレゼントにも最適で男女年齢問わず、いろんな方に喜んでいただけました。

▼終了お伝えして思ったことを教えてください。

終了してしまうことはとても残念です。でもこのような商品のデザインをさせていただいたことは良い経験となりましたし、お手伝いさせていただいてよかったと思います。また、このような思いの詰まった商品ができるといいなと思います。


▼RETOIROのデザイン媒体への掲載、プロダクトの受賞について

・東京タイポディレクターズクラブに入選

・日本グラフィクデザイナー協会主催の年鑑『Graphic Design in Japan 2021』にパッケージ部門にて掲載決定

・2021年度のMdnデザイナーズファイル:白本由佳さんのページへ掲載

・アートディレクター/デザイナーのラフスケッチ188 一流クリエーターの思考と発想の実例集

※このほか、海外のデザイン誌、デザイン賞もいただきました。さすがです。

※文中に出てくる子育て環境については家庭や人により異なります。そして子どもが大きくなるにつれ、自分思考が戻ってくるので、メイクもヘアも存分に楽しめるようになります。子育て、楽しいですよ!

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