前例は無い、新しいAI医療機器の薬事業務へのチャレンジ
こんにちは、AIメディカルサービス(以下AIM)の採用広報チームです。
今回は、弊社の薬事戦略の要であり、薬事責任者の田光さんのインタビューを紹介させて頂きます。
研究・技術開発からキャリアをスタートさせ、現在の薬事業務に従事するまでの経緯や、AIを搭載したプログラム医療機器の薬事業務のやりがいや難しさについても伺いましたので、ぜひご覧下さい!
研究開発のバックグラウンドから製品開発・薬事へ
はじめに、薬事グループの役割・ミッションについて教えてください
まず、弊社には医療規制統括部門という部門があって、臨床開発・薬事・品質保証の3つのグループで構成されています。薬事グループは、文字通り、医療機器の薬事申請業務や薬事申請戦略の立案を行っているチームになります。
この記事をご覧いただいている方にはご存知の方も多いと思いますが、医療機器というのは、患者さんの治療や診断に有効で、かつ安全だというのが十分に証明できているかを専門機関が審査・承認してはじめて世の中で医療現場で使うことができるようになります。
我々の開発している製品はAIのソフトウェアなんですが、プログラム医療機器(SaMD)と呼ばれる位置付けなので、通常の医療機器と同じように各国での薬事承認が必要になります。そして、私たち薬事グループは、その薬事承認を取るための戦略立案や、規制当局とディスカッションをしたりしているチームというわけです。
AIMに入る前はどんなキャリアだったんですか?
私は、実はキャリアの前半では、薬事や製品開発の業務には特に関わっていませんでした。
元々、大学では工学のバイオロボティクスの分野で博士課程まで進み、そのまま大学で研究するか事業会社に就職するか悩んだ結果、就職する決断をしました。新卒では内資系の電気機器メーカーに就職して、最初は研究・技術開発の仕事をしていました。
入社してからちょうど10年ぐらいの2015年に、AMED(※)が立ち上がるタイミングで声がかかり、立ち上げ期のメンバーとして会社から出向することになりました。
AMEDにいたのは3年間だったんですけど、今振り返れば、その経験が私のキャリアの大きな転換点だったと思います。
それまでは技術を作る側でしたが、AMEDに出向してからは医療機器の臨床開発や治験のフェーズのプロジェクトの進捗管理や、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)との相談への同席など、現在の薬事業務にも繋がる経験をいろいろさせてもらいました。
研究開発側のバックグラウンドが中心だった自分としては、「技術を実用化するためには、こんな風に戦略を考えてうまくやっていく必要があるのか!」と非常に刺激を受けましたし、すごく面白みを感じました。
その後、出向から所属企業に戻ってくる際に、ちょうど社内でも新しい医療機器のプロジェクトを立ち上げようという話があったので、以前に所属していた研究所ではなく、そのプロジェクトを管轄する部門に移りたいと希望を出したんです。
研究開発のキャリアから、製品開発段階で実際に世の中に出るプロダクトに関わるキャリアにシフトした形ですね。
ただ、そのプロジェクトも立ち上げ時期だったので、薬事申請に関する業務だけに専念するというよりは、エンジニアや製品の開発メンバーは勿論、PMDAや共同研究先の先生方といった社外の方ともコミュニケーションを取りながら、うまくすり合わせてプロジェクト推進する、いわばPMのような立場でした。
立場の違う方々をまとめるというのは、なかなかに大変だった印象が強いですが、自分のそれまでのキャリアとはまた違った立場で貴重な経験ができました。結果的にも、担当していたプロジェクトを無事に薬事承認までこぎつけることができたというのも、非常に達成感を感じましたね。
AIMに入社を決めた経緯について教えてください
いろいろと会社のことを調べたり、面談をしたりする中で最初に驚いたのは、社内にもメディカルドクターがいて、既にいろんな国で共同研究先の医療機関があったことですね。
あとは、AI開発には必須の患者さんの臨床データの収集についても、国内の複数の機関から常に継続して手に入るような体制・関係性を早々に確立しているのを知ったときも驚きました。
長期的なビジョンでビジネスを考えていて、きちんと医療現場に貢献できる製品を開発できそうだと感じ、そういう会社で自身も開発に携わりたいと思い入社を決意しました。
世の中に無い、新しい製品を作る難しさとやりがい
AIMでの薬事業務の特徴はどんなところでしょうか?
世の中的には、身の回りのいろんなところでAIがどんどん普及していますが、実は医療現場にはまだAIを使った製品はそこまで多くなくて、とにかく前例が少ないんです。
そのため、どんな風に証明をしたら有効で安全かというのを認められるか、また、それを戦略を立てて規制当局と折衝していけるかというのが必要になってきます。
類似製品が既に市場にあれば、ある程度は「こういうデータ・裏付けがあれば承認してもらえる」という基準みたいなものはあったりするんですが、我々や規制当局の方々も含めて、その基準が無いというのはなかなか薬事業務の中でも難しい部分かもしれないですね。
当局の方々の判断軸や各国での規制や指針も随時変化していくので、知識もアップデートしながら、薬事戦略も柔軟に変化しながら対応するようにしています。
また、そもそも国によって医療水準が違ったり、患者さんの人種や発病原因が違ったりとかもあるので、それぞれの国での薬事承認の基準も変わってくるのも重要なポイントですね。
具体的な例でいうと、ある国では患者さんの検査時の録画映像データを使って、性能テストの結果として提出すれば良いという基準です。一方で、いわゆる治験として患者さんを集めて検証をしなければ性能を評価したことにならないという基準の国もあります。
我々の会社は、グローバルの様々な国への展開を目指していますので、そのような各国の規制当局の考えを踏まえつつ、「この製品はこういう試験をすれば有効性や安全性を証明できるのではないでしょうか?」と当局に提案・議論をしながら、薬事承認を得るための戦略立案をしています。
社内ではどういう部署・メンバーと関わりますか?
かなり多くのメンバーと関わって業務をしていますね。
例えば、製品企画やマーケティングチームとは、現場の先生方のニーズや、実施しようとしている臨床試験についての先生方のご意見をもらう、という際にはよく関わります。
また、海外事業のメンバーからは、ターゲットしているエリアの市場や医療水準などの情報もよく教えてもらっています。
他には、ソフトウェア開発チームとは、製品仕様を踏まえて戦略立案をするために、どんな製品にしようと思ってるかをヒアリングしたり、時には「これだと厳しいからちょっとこの点は見直しませんか」などというディスカッションもしますね。
あとは、性能を判断するためにどの点が特に重要になりそうか等の情報を、AIエンジニアたちとも共有しながら試験設計についても相談しますし、試験やデータを作る際にも実際の患者さんの内視鏡画像にも詳しいデータアノテーションチームにも意見をもらったりもしています。
うちの会社は、それぞれの分野で経験を積んできたエキスパートが多い会社なので、いろんな人に協力を仰ぐことができるのは良いですね。
そして、そういう頼れる方が多いながらも、皆さんとても協力的なのもうちの会社の特徴だと思いますし、薬事業務をしている立場としては恵まれているなと感じてます。
AIMの薬事担当としては、どういう方が活躍できますか?
活躍できそうな方の要素としては、大きく2つあると思っています。
1つ目は、相手の立場や考えを理解しながら、関係者との交渉や調整に粘り強く取り組めることだと思います。規制当局の方々が仰ることをそのまま受けて会社に持ち帰って降ろすのではなく、技術的な側面や時間、費用など、実現性の観点も含めて、社内で何度も議論をしながら摺り合わせています。
同じ社内でも役割が異なれば重視する価値観も異なってくるので、各関係者の合意が取れるまで何度も議論しながらすり合わせ、またその状態で規制当局とも議論して…、というのを繰り返しています。
ただ、そこまで対局のスタンスにいるわけではないとも思います。例えば、我々の内視鏡AIシステムであれば、「内視鏡AIでがんの早期発見をして、がんに苦しむ患者さんを1人でも多く救う」ということは、医療機関も規制当局も我々も、みんなゴールはある程度同じ方向性だとは思うんですよね。
目指すゴールは同じだからこそ、言葉だけではなく相手の立場や主張の背景も正確に理解して、お互いの合意ができる結論までファシリテートするのが、我々の仕事だと思っています。
2つ目は、理由や根拠は必ず提示するという点です。ただ単に「〇〇がダメというのでできません」とか「これはこうしないといけません」と言うだけではなくて、「なぜこうしなければいけないのか」というのを、面倒がらずに、ロジカルに、明確に示すことで、一緒に仕事をする人たちの理解も得られて、結果的に信用を得ることに繋がるからです。
実際に、理由も踏まえて明確に伝えることで相手の方も「だったらこうすればいいんじゃないですか」とアイデアをくれたり、それが融合した案や折衷案に繋がることも多いです。
特に、海外の規制当局も関わる局面ではより重要ですね。規制内容もベースとなる考え方も国によって違うので、一つ一つ丁寧に規制も理解しながら当局と交渉をするようにしています。
最後に、応募を検討している方へのメッセージをお願いします。
我々はスタートアップということもありますが、世の中的にも今までに無い新しいモノを作っている企業なので、必然的に新しいことにチャレンジできるチャンスは多いと思います。変化への対応や簡単には解決できない課題も多いですが、自分がどう役に立てるかを考え、周りの専門家たちを巻き込んでプロジェクトを推し進めることができる方にとっては、本当に多くの経験を積める環境だと思います。
私も結果的に今は薬事の仕事をしていますが、元々は研究開発からキャリアをスタートしているように、ロジカルに考えて筋道を通すことが得意な方であれば、研究バックグラウンドから臨床側にシフトしてきたようなキャリアの方でもチャレンジできる可能性があるかもしれません。
今後も新しい製品やさらなる可能性を持っている開発パイプラインもあります。これまでのご経験を活かしていただきつつ、さらに成長できる環境があると思いますので、そういう意欲・熱意のある方と一緒に働けたら嬉しいです。
編集後記
今回、薬事責任者の田光さんにインタビューをさせてもらいながら、改めて薬事の担当者が関わる人の多さに驚きました。
社内は勿論、共同研究先の先生方やPMDAの方々など、本当に多くのステークホルダーを巻き込んで業務を進める中で、様々な関係者の考えを聴き、ロジカルに整理・合意形成し、医療課題を解決できる製品を出していく、まさにAIMバリューの「聴く力を、解く力へ」を体現していると感じました。
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