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まとめ『チームの力』西條剛央著(2015ちくま新書)

 著者である西條剛央氏は私が学んだエッセンシャルマネジメントスクール(EMS)の代表であり、4期で学んだ時の課題図書でもあったので今回は3年ぶりに読み返しました。
 この中では、東日本大震災の際の「ふんばろう東日本支援プロジェクト」のリーダーをつとめた経験に照らし合わせながら、著者の専門である「哲学」「構造構成主義」の理論を実践する方法を提示してくれます。


 「構造構成主義」を説明することは大変難しいですが、この本で説かれているのは、たとえば「方法の原理」。
 有効な「方法」は「状況」と「目的」によって決まる、という本質的な原理です。
 震災下で「ふんばろうプロジェクト」が機能したのは、刻々と変化する状況にしなやかに対応できたからだとして、事例が具体的に語られています。

 ドラッカー教授の著作に触れてから読み直すと以前は気付かなかったことに立ち止まります。

 今回一番胸に刺さったのは「リーダーの人格と組織の体質は相関する」。
つまり、「リーダーの人格に応じて組織の体質が決まってしまう」のです。

 清廉なトップの元には清廉なメンバーが集まる、ということですが、なにもトップばかりの話ではないと感じます。

 それぞれの職場で職務を遂行するにあたっては単独でこなせることは多くありません。メンバー同士が連携して初めて成り立ちます。 
 その側面ではそれぞれが何かしらのリーダーなのです。自分が分担した範囲では自分がリーダーです。そこで誠実な仕事をしなければ、周りは必ず感知します。

そうすると最終的には、どうすれば人格を高められるのか、という話になってくる。人格を高めるとはそもそもどういうことなのだろうか。

『チームの力』 p88

 そして、ドラッカー博士のリーダーシップの定義が引用されます。

リーダーシップは、人のビジョンを高い視点へ持ち上げること、人のパフォーマンスを高いレベルに引き上げること、人格を通常の限界を超えて陶冶すること、である。

ウイリアム・A・コーン 『ドラッカー先生のリーダーシップ論』

 なんだかとても難しいことのように感じますが、西條氏は自身が「人間性を高める・人間力を高める*1」というセミナーに参加したときのことに触れて、

 「人間性を高めるというと、今の自分ではダメだ、自分にないものを身につけなければ、と思いがちだが、そうではなく、すでに自分が持っているよいところをより多く出せばいいんだよ、と今の自分を肯定して、背中を押してもらえたと感じた。p89」と書かれています。

 そして、「やるべきことは、シンプル」と結論されます。
「誠実なチームを作りたいと願うならば、日々誠実に行動すればよいのである」。

 もちろんこれは単に「真面目に努力しさえすればよい」ということではなく、上述した「方法の原理」や、他の章で語られる「価値の原理」「戦略の原理」など理路を指針として「本質からブレることなく目的達成のために尽力していく必要p93」があります。

 自分の目的はなんなのか。今の状況はどうなのか。シビアに見つめてこつこつ行動するしかないのですね。

 *1 「人と経営研究所」所長・大久保寛司氏と「人とホスピタリティ研究所」代表・高野登氏によるセミナー

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