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AI時代の労働市場最前線 - 内閣府レポートから読み解く中小企業の未来戦略

皆さまこんにちは、フューチャーゲートAI事業準備室です。
https://futuregate.jp

今回は、内閣府が2024年7月に発表した「世界経済の潮流-AIで変わる労働市場」というレポートから、特に中小企業経営に関わる重要なポイントをご紹介します。このレポートは、AIが労働市場に与える影響を包括的に分析しており、今後の経営戦略を考える上で貴重な示唆を提供しています。


●AIの汎用技術としての位置づけ:


AIは、広範囲な用途に使用可能な「汎用技術」(GPTs)として位置づけられており、社会、経済、政策に大きな影響を与えると指摘されています。

「AIは一般的な技術とは異なり、広い範囲で多様な用途に使用され得る基幹的な技術である「汎用技術」(General-Purpose Technologies: GPTs)と位置付ける見方が広がり、社会、経済、政策に大きな影響を与え得ることが指摘されている」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

●生成AIの登場

特に、ChatGPTに代表される生成AIは、従来のAIとは異なり、対話形式での指示に基づき、自然な文章を作成する能力を持ち、広範なタスクに対応可能です。

「生成AIは、対話形式で入力された指示文(Prompt)に対し、事前に学習した膨大な情報(インターネット上の文字情報、画像等)に基づく確率分布を用いた予測を行い、「尤(もっと)もらしい」単語を連続的に返すことで、人が書いたような自然な文章を作成できる」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

●AIによる職業・タスクの補完と代替:


AIは、労働者のタスクを「代替」する一方で、生産性を高める「補完」の役割も果たします。

「AIが導入される場合、労働者の一部(または相当程度)のタスクをAIが担うこととなり、労力が削減され得る。その点では労働の「代替」と「補完」には、実際には語感の差ほどの大きな違いはなく、「補完」される職業においても、一定の「代替」は発生し得ると考えられる。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「物理的タスクのシェアが大きな職業は、AIの導入から受ける影響が小さい。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「AIによる自動化への抵抗が小さい職業は、AIの導入によって将来的に雇用が減少する(代替される)可能性がある。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「AIによる自動化への抵抗が大きい職業は、人の関与が残り、AIの導入によって生産性と質が高まる(補完される)可能性がある。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「AIの活用により、新たな職業(雇用)が創出される可能性がある。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

●AIの影響を受けやすい職業

事務補助員などの比較的スキルレベルの低い職業は、AIによる代替リスクが高く、一方で、専門職や管理職はAIの恩恵を受けやすい傾向があります。

「専門職や管理職のような必要とされるスキルレベルが高い職業については、AIからより多くの便益を得る可能性がある一方で、事務補助員については多くの雇用がAIに代替されるリスクに直面していると考えられる。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「AIは教育水準の高い労働者により大きな影響を与える可能性があること、それと同時に、補完性の高さから、教育水準の高い労働者がAIの便益を受けやすいことが示唆される。」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

●リスキリングの必要性

AIの活用を促進するためには、労働者全体のAIリテラシー向上、特に管理職におけるAI管理能力の強化が重要です。また、年齢が高くなるにつれてITスキルに関するリスキリングの必要性が高まります。

「官民及び大学の協力によるAIリテラシー向上のためのリスキリングが必要」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「労働生産性の向上のためには管理職のAI管理能力が必要」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「年齢が高くなるにつれてリスキリングが更に必要」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

●自律学習能力の重要性

AIに代替されない能力として、自ら課題を見つけ、自律的に学習する能力が重要であり、教育システムの見直しも必要です。

「AI活用能力とともに自律学習能力の向上も重要」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

●AIのリスクと規制

AIの利活用に伴うリスクに対応するため、法規制や国際ルールの形成が重要です。EUのAI法はリスクベースの包括的な法規制を、アメリカは目的ベースで既存の法律を改正するアプローチを採用しています。

「安全なAIの利活用に向けた法規制や国際ルール形成の動向」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「EUでは、AIのリスクレベルに応じた規制が行われている」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「アメリカでは、アルゴリズムによる差別がない公平なAI利用を含む、国民の権利保護を前面に出したAIの開発・利用政策が打ち出されている」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

「G7では、AIの国際的なルール形成に向けた動きが見られている」

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh24-01/pdf/s1-24.pdf

資料全体を通して、AI導入の一般的なポイントや、労働市場への影響に関する記述から、中小企業が生成AIを導入する際に考慮すべき点をいくつかポイントをまとめましたので参考にしてみてください。

●AIの「代替」と「補完」を理解する

AIは、人の仕事を「代替」するだけでなく、「補完」する側面も持っています。中小企業は、自社の業務内容を分析し、どの業務がAIによって効率化できるか、どの業務がAIによって質の向上が見込めるかを検討する必要があります。例えば、事務的タスクは代替されやすい一方で、創造性や判断力を要する業務はAIによって補完される可能性が高いです。

●従業員のリスキリングの重要性

AI導入によって、従業員の仕事内容や必要なスキルが変化する可能性があります。中小企業は、従業員がAIを使いこなせるように、リスキリング(学び直し)の機会を提供する必要があります。資料では、AIリテラシー向上のための研修プログラムや、企業研修への税額控除などが紹介されており、これらを参考に、自社に適したリスキリング施策を検討できます。

●AI導入による生産性向上への期待

AIの導入は、企業の生産性を向上させる可能性があります。資料によると、従来型AIの導入は企業レベルの生産性を0~11%向上させ、生成AIはタスクレベルの生産性を10~56%向上させたという報告があります。中小企業は、AI導入によって業務効率化やコスト削減が見込める分野を特定し、積極的に導入を検討すべきです。

●AI導入の段階的な進め方

資料では、AIの導入はまだ初期段階であることが示唆されています。中小企業は、AI導入を一度に大規模に行うのではなく、段階的に進めることが重要です。まずは一部の業務で試験的に導入し、効果を検証しながら、徐々に適用範囲を拡大していくのが良いでしょう。

●管理職のAI管理能力の重要性


AIを活用して労働生産性を向上させるためには、個々の労働者のAIリテラシーを高めるだけでなく、企業全体としてAIの効果を最大化するよう管理能力を高めていく必要性があります。管理職は、AIがもたらすメリットとリスクを理解し、AIと労働者の関係を管理することが求められます。

●AI導入における倫理的側面と法規制の遵守

AIの利用には、情報が歪曲されたり、基本的人権や著作権が侵害されたりするリスクも存在します。中小企業は、AIを安全に利活用するための法整備や国際的なルール形成の動向を把握し、遵守する必要があります。資料には、EUのAI法やG7の「広島AIプロセス」などが紹介されており、これらを参考に、AI利用に関する社内規定を整備する必要があります。

●自律学習能力の重要性

AIの活用能力だけでなく、自ら課題を見つけ、解決する能力、自律的に学習する能力も重要です。中小企業は、従業員の自律学習能力を育成するための研修や教育プログラムを検討する必要があります。


このレポートが示すように、AIの導入は避けられない流れであり、むしろビジネスチャンスとして捉えるべき変化です。しかし、その変化に対応するには、経営者の明確なビジョンと、計画的な準備が不可欠です。

特に重要なのは、AIを「人の代替」ではなく「人の可能性を広げるツール」として位置づけることです。従業員のリスキリングを支援し、AIと人間が協調して働ける環境を整備することで、企業の競争力を高めることができます。

フューチャーゲートは、中小企業の皆様がAIをビジネスの力に変えていけるよう、今後も最新の情報と実践的な知見を発信してまいります。AI時代の経営について、ともに考え、行動していきましょう。