そんな母さん〜母と、小学2年生の私のこと〜
「お母さんにそっくりだね」
誰かにそう言われると、小学2年生の私は、思わず顔をしかめた。私のどこが母に似ているのだろう。特に顔はそっくりだと言われることが多いけれど、自分ではちっとも似ていないと思っている。とにかく、母に似ていることがすごく嫌で、恥ずかしいからやめてほしかった。
私の母は、いつも不機嫌で、不安定だ。
そして私は、何かと母のストレスと不満の捌け口だった。大抵いつもイライラしている母が嫌いだったし、すごく恐かった。それに、子どもに当たり散らすなんて大人気ないし、母親なのに頼りなくて信用できない人だと感じていた。
だから、お母さんみたいになりたくない。大人になっても、母親になんてなりたくない。ずっとそう思っていた。
それなのに、母を嫌う気持ちとは裏腹に、心の底から湧き上がるような、切実な願望に戸惑う自分がいる。
「お母さんに愛されたい、大事にされたい、必要とされたい」
いろいろあって、母と私のこじれた親子関係は、これからも解消されることはない。それでも、未だに心のどこかで、母の愛情を期待してしまうのだ。そんな期待をしたところで、苦しいだけで無駄なことだと分かっていても、母の存在と愛情をいくつになっても求め続けてしまう。
母を嫌い、敬遠しながらも、そんな矛盾した気持ちを抱えた小学2年生のままの自分が、いまでも心の片隅で、俯き立ちすくんでいる。