AIと自然に会話する:GPT-4oとビジネスを考える
今回は、OpenAIが新たに発表した最新のAIモデル「GPT-4o」についてご紹介します。GPT-4oは、従来のモデルを超える性能と広範なマルチモーダル性を併せ持ち、特に、自然な対話の実現という点で、今後のAIとのインターフェイスに革命をもたらす可能性があります。本記事では、GPT-4oの特徴、新たに可能になったこと、そしてビジネスにおける活用方法について詳しく解説します。最新のAI技術をビジネスに活用して、利益創出を実現する方法を見ていきましょう。
GPT-4oとは
参照:OpenAI公式ブログ「Hello GPT-4o」
GPT-4oは、より自然な人間とコンピュータのインタラクションへの一歩であり、テキスト、オーディオ、画像、動画のあらゆる組み合わせを入力として受け入れ、あらゆる組み合わせを出力として生成する新しいモデルです。
ちなみに、GPT-4oの”o”は「全ての」などの意味を持つ「omni」の略。
性能
特筆すべき能力として以下になります。
リアルタイム応答
人間の会話の応答時間に近い、平均320ミリ秒での応答
高速化された音声対話の実現
テキスト、視覚、音声の統合による学習
テキストだけでなく視覚情報や音声などのマルチモーダルなデータを処理可能
背景ノイズ、複数の声、トーンの理解から、感情表現、歌、相槌などの出力も可能
高速かつ低コスト
GPT-4 Turboと比べて処理速度が2倍に向上
GPT-4 Turboと比べて入出力のコストが半額に
さらに、トークナイザーの改善(日本語では約30%減)により、さらにコスト削減が可能に
精度の向上
テキスト、推論、コーディング・インテリジェンスでGPT-4 Turboレベルの性能を達成
多言語、オーディオ、ビジョン機能で新たな高水準を達成
※ただし、コード生成などにおいて精度が下がっているという現場の話も
また、OpenAIは、GPT-4oを用いた様々なデモ動画も公開していますので、その一部をご紹介します。
GPT-4oを用いたリアルタイム翻訳を活用し、異なる言語を話す人同士の対話
GPT-4oもMTGに参加し対話
画像を見ながら子供に算数の問題を教えるGPT-4o
価格
GPT-4oの価格は、GPT-4 Turboの半額で、GPT-4と近い精度を持つClaude 3 Opusよりも安い価格帯となっています。
利用方法
実際の利用に関する詳細は以下の通りです。
GPT-4oのテキストと視覚機能はAPIとChatGPTで既に利用可能
無料プランとプラスユーザー(最大5倍のメッセージ制限)両方で利用可能
今後数週間でChatGPT Plusのアルファ版でGPT-4oを使ったボイスモードを予定
新しい音声と視覚機能のサポートは、今後数週間のうちにAPIで一部パートナーから開始予定
ここまで、GPT-4oの性能、価格、利用方法について見てきました。「omni」の名前の通り、あらゆる情報を処理できるようになり、様々な可能性が広がるAIとなっています。ここからは、実際にどのようなことが可能になったのか、それによってどのようなユースケースが考えられるのかを具体的に見ていきたいと思います。
GPT-4oによって可能になること
今回のGPT-4によって新たに可能になったことの代表例を3つご紹介します。
AIとの自然な対話:まるで人と話すように
GPT-4oの画期的な点の一つは、音声を直接入出力できるようになったことです。従来のAI音声対話では音声をテキストに変換する必要がありましたが、GPT-4oは音声データを直接理解し、感情認識や表現、複数話者の識別、会話の遮りへの対応など、高度な対話機能を備えながら、リアルタイムで応答を生成します。これにより、人間と同等レベルの自然でスムーズな対話が可能となり、ユーザーはストレスフリーな体験を得られます。GPT-4oによる自然な対話能力は、AIをより身近で日常的な存在へと変え、会話しながら他の作業を行うなど、応用範囲を飛躍的に広げます。
マルチモーダル性:テキスト、オーディオ、画像、動画の融合
GPT-4oは、テキスト、オーディオ、画像、動画のあらゆる組み合わせを認識しながら指示を処理できるマルチモーダル機能を備えています。例えば、デモ動画にあったように、算数の問題や図を見ながら勉強の手助けを行うことができます。また、ビデオ会議中には、音声と映像をリアルタイムで分析し、重要なポイントを要約したり、関連するドキュメントや資料を即座に提示したりすることも可能となるかもしれません。このように、複数のメディアを統合して活用することで、より人間に近い処理を行うことができます。
コスト削減
GPT-4oは、従来のGPT-4 Turboよりもコストが半減し、さらに強力な性能を持っています。これにより、高度なAI技術がより経済的に活用できるようになり、小規模なビジネスや大量の処理が必要なユースケースでも導入しやすくなりました。新しいAIの活用によって、ビジネスの効率化やサービスの向上が期待されます。
GPT-4oの利用において注意が必要なこと
正確性
様々なベンチマークからわかる通り、GPT-4oはその回答の正確性において、相対的には世界トップクラスの性能を有しています。しかしながら、ビジネスユースにおいては依然無視できない程度のハルシネーションが発生しており、正確性こそが求められるタスクへの単純な適用は難しいのが現状です。
安定性
モデル自体がAPI経由で提供され、また当記事配信時点では類似のモデルが登場していないため、APIダウン時の代替手段を確保できません。そのため、サービスの停止や一時的なダウンにより致命的な障害が発生するビジネス応用は、慎重に行う必要があります。
ビジネスでのユースケースの考察
GPT-4oは高性能でありながらコストも安価になりましたが、導入コストは無視できないため、まずは高いROIが期待できる用途から段階的に進めることが重要です。現時点では、音声や動画を含めたGPT-4oは一般公開されていませんが、GPT-4oとAIの発展を踏まえた上で、その潜在能力を最大限に引き出す高ROIのユースケースを、具体的な経済効果と実現可能性を交えながら考察していきます。
1. AIアシスタントによる業務効率化:話しながら仕事する世界
詳細: GPT-4oは、音声指示で様々なタスクをこなし、業務効率を大幅に向上させるAIアシスタントとして活躍します。各種ツールと連携し、メール作成、スケジュール管理、資料作成、データ分析、Web検索など、あらゆる業務をハンズフリーで実行可能。音声と画像の両方で指示を出せるため、直感的な操作性を実現します。
経済的利益: 従業員の生産性向上、残業時間削減、人件費削減、業務プロセス効率化によるコスト削減など、多岐にわたる経済効果が期待できます。
実現可能性: 既に音声アシスタントは普及しつつありますが、GPT-4oは、より高度なタスク処理能力、多言語対応、自然な会話能力により、既存のAIアシスタントを凌駕する存在となるでしょう。ホワイトカラー業務を中心に、幅広い業界での導入が期待されます。
ユースケース例:
会議中に議事録作成やタスク指示を音声で行う。
営業担当者が移動中に顧客情報を確認したり、報告書を作成したりする。
研究者が論文を執筆する際に、参考文献を検索したり、データ分析を依頼したりする。
2. ハンズフリー革命:あらゆる作業現場に
詳細: GPT-4oは、音声と画像による指示を理解することで、医療現場、工場、建設現場など、ハンズフリーでの作業が求められる環境において、作業効率と安全性を大幅に向上させます。例えば、医師が手術中に音声で医療記録を参照したり、作業員が両手を使いながら機器の操作手順を音声で確認したりすることが可能になります。
経済的利益: 作業時間短縮、ミス削減、事故防止、人材育成コスト削減など、様々なコスト削減と生産性向上に貢献します。
実現可能性: ハンズフリーデバイスの普及や音声認識技術の進歩により、音声による作業指示は現実的な選択肢となりつつあります。GPT-4oは、複雑な指示を理解し、状況に応じた適切な情報を提供できるため、様々な作業現場での導入が期待されます。
ユースケース例:
医師が手術中に音声で患者の情報や画像診断結果を確認する。
工場作業員が音声で組立手順を確認しながら作業を進める。
建設作業員が音声で設計図面を参照しながら作業を行う。
3. カスタマーサポートの省力化と高度化:顧客の感情までも読み取る
詳細: GPT-4oは、顧客の音声から感情を分析し、状況に応じた適切な対応を実現します。顧客の不満や不安を早期に察知し、丁寧な言葉遣いや共感的な態度で対応することで、顧客満足度向上とクレーム削減に貢献。また、音声認識・生成機能により、自動音声対応システムを高度化し、24時間365日対応のカスタマーサポート体制を構築することも可能です。
経済的利益: 人件費削減、顧客対応時間短縮、顧客満足度向上による解約率低下、ブランドイメージ向上など、大きな経済効果をもたらします。
実現可能性: 顧客対応業務は、AI導入による自動化・効率化が期待される分野です。GPT-4oは、感情分析機能により、より人間らしい自然な対応を実現できるため、顧客接点を持つあらゆる業界での導入が期待されます。
ユースケース例:
コールセンターにおいて、顧客の感情をリアルタイムで分析し、オペレーターに適切な対応を指示する。
WebサイトやアプリにAIチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに自動対応する。
顧客の声を分析し、サービス改善や商品開発に活かす。
4. 研修や教育の機会創出と自動化:AIとの会話を通じての学習
詳細: GPT-4oは、個々の学習者のレベルや進捗状況に合わせて、最適化された学習コンテンツを提供するパーソナルAI講師として活躍。音声対話を通じて、学習内容を理解しやすく説明したり、質問に答えたり、課題を出したり、ロールプレイ相手となることで、効果的な学習を促進します。
経済的利益: 講師の人件費削減、教材開発コスト削減、学習効果向上による人材育成期間短縮など、教育機関や企業における人材育成コストの削減と質の向上に貢献します。
実現可能性: オンライン学習の普及や個別最適化された学習へのニーズの高まりを受け、AIを活用した教育サービスは急速に発展しています。GPT-4oは、音声対話機能により、よりインタラクティブで効果的な学習体験を提供できるため、教育機関や企業研修など、幅広い分野での導入が期待されます。
ユースケース例:
語学学習において、AI講師と音声で会話練習を行う。
プログラミング学習において、AI講師からコードの書き方を教わり、実際にコードを書いて実行する。
企業研修において、新入社員研修やスキルアップ研修をAI講師が担当する。
5. 接客の自動化:店舗での無人化・省人化
詳細: GPT-4oを搭載したロボットやデジタルサイネージが、顧客の質問に答えたり、商品を案内したり、注文を受け付けたりするなど、店舗での接客業務を自動化。多言語対応により、外国人観光客への対応も可能です。
経済的利益: 人件費削減、営業時間延長による売上増加、顧客満足度向上によるリピーター増加など、小売業における収益向上に貢献します。
実現可能性: 労働力不足や人件費高騰が深刻化する中、小売業界では省人化・自動化へのニーズが高まっています。GPT-4oは、自然な音声対話と画像認識機能により、顧客にストレスを与えないスムーズな接客を実現できるため、導入が加速すると考えられます。
ユースケース例:
アパレルショップで、顧客の好みや体型に合わせたコーディネートを提案する。
スーパーマーケットで、商品の場所を案内したり、レシピを提案したりする。
レストランで、注文を受け付けたり、メニューを説明したりする。
6. 新サービスの創出:AIが活躍する未来
介護施設等での会話アバター:
詳細: GPT-4oは、高齢者や障がい者とのコミュニケーションを支援する会話アバターとして活用できます。音声対話を通じて、日常会話や趣味の話、思い出話などを楽しむことで、孤独感を解消し、認知機能の維持・向上に貢献。また、健康状態や生活状況を把握し、家族や介護士に報告する機能も搭載可能です。
経済的利益: 介護施設における人材不足解消、高齢者のQOL向上による介護サービス需要増加、新たなAI介護サービス市場の創出など、社会課題解決と経済効果を両立できる可能性を秘めています。
実現可能性: 高齢化社会の進展に伴い、介護需要はますます増加しています。GPT-4oは、高齢者の生活を豊かにし、介護の質向上に貢献できるため、介護業界における新たなサービス創出を促進すると期待されます。
ユースケース例:
介護施設で、高齢者と会話したり、ゲームをしたりするAIアバターを提供する。
在宅介護において、高齢者の見守りやコミュニケーションを支援するAIアバターを提供する。
高齢者の認知機能訓練やリハビリテーションを支援するAIアバターを提供する。
これらのユースケースは、GPT-4oで実現される可能性の高い、比較的ROI算定がしやすいものをピックアップしました。現時点では実際にテストを行えないため、どれほどの実用性があるのかを実証できてはいません。しかし、音声と画像理解を組み合わせたAIの進化は、私たちの生活やビジネスを劇的に変え、新たな価値を創造していくことは間違いないものと考えられます。
さいごに
GPT-4oは、AIの可能性を大きく広げる革新的な技術です。しかし、AIは実際に活用してこそ真価を発揮します。
私たちは、具体的な課題解決や最適なユースケースの提案、費用対効果(ROI)を重視した計画の策定、スムーズな導入と運用サポートを通じて、AIが実社会に具体的な利益をもたらすための取り組みを進めています。
ご質問等ございましたら、メール(ai.business.laboratory@gmail.com)または、記事執筆者の水野(Xアカウント: @kakerumiz)、納村(Xアカウント: @akinoriosamura)までお気軽にお寄せください。