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仮想読書会:「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著の(1)エネルギー

***** 【 仮想読書会が初めての方へ 】 ******
6人のキャラクターとの仮想読書会 ~AIと創る新しい読書体験~
「仮想読書会の進め方」と「このnote」
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【 今回の仮想読書会の範囲 】

「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著

序 なぜ本書が必要なのか?
第1章 エネルギーを理解する—燃料と電気

※引用に適した文字量などの事情もあり、元の書籍にある詳説のほとんどは、読書メモから割愛しています。今回の範囲に限りませんが、具体的な話や数値など、詳細に興味をお持ちで未読の方は、是非、ご自身でお読みになることをお薦めします。

【 読書メモ(引用、問いなど)】
・このような知識の細分化のせいで、公の意思決定がいっそう厄介なものになった(中略)新型コロナウイルス感染症のパンデミックで明らかになったとおり、専門家どうしの意見の相違は、マスクを着用するかどうかといった一見単純な決定を巡ってさえ起こりうる(p.10)

・いわゆる切れ者たちは、土壌学の分野には進まず、セメントの改良に挑戦したりはしない。代わりに、今や無数のマイクロデバイスを通過するただの電子の流れと化した、実体のない情報の処理に心を引かれる。法律家やエコノミストから、プログラマーやファンドマネジャーまで、彼らが得る法外な報酬は、この世の物資的な現実から完全に切り離された仕事に対するものだ。(p.13)

・本書は、このような理解不足の改善を図るとともに、私たちの生存と繁栄を支配するごく基本的で主要な現実をいくつか説明することを試みる。(中略)私は悲観主義者でも楽観主義者でもなく、世の中の実状を説明しようとしている科学者であり、その知識を使って、人類の未来の限界と機会についての理解を私たちが深めることを目指している。(p.16-17)

・今やEUでさえ、原子炉無しでは並外れて野心的な脱炭素化の目標達成には遠く及ばないことに気づいている。(中略)電気は、世界の最終的な総エネルギー消費量の18%でしかなく、産業、家庭、商業、輸送による最終的なエネルギー使用量の80%以上の脱炭素化は、発電の脱炭素化よりもいっそう困難になる。(中略)現代の長距離輸送を脱炭素化する道筋は、相変わらず不明だ。
(中略)
現代文明を支える四本柱とも言える素材の生産に、電気だけでエネルギーを供給するような、すぐに導入可能な商業規模の代替手段はない。つまり、たとえ再生可能エネルギーの豊富で信頼できる供給があったとしてさえ、セメント、鋼鉄、プラスティック、アンモニアを生産するための、新しい大規模なプロセスを開発しなくてはならないということだ。(p.70-71)

・世界の年間の化石需要は、今では100億トン強に達する。これは、全人類を養う主食穀物の最近の年間収量と比べて5倍近い質量であり、世界の約80億の人が毎年飲む水の総質量の2倍を超える。
(中略)
あけすけに言えば、どんな種類のエネルギーであれ、もっと使用を控えてやっていくべきだ。だが、富裕な世界の水準と比べるとごくわずかしかエネルギーを消費していない、50億超の人々の場合には、そうはいかない。(中略)すなわち、この転換は、化石炭素の突然の放棄によっても、使用量の急激な削減によってさえもなされることはないし、また、なされえない。むしろ、緩やかな減少という形を取るだろう。(p.73-74)

<問1>
「知識の細分化が進んで、世の中全体の実状を把握したうえでの意思決定が難しくなっている」のは確かだと思いました。そして、そうした役割を専門とする人を育成する仕組みが必要だとも思いました。
一方で、そうした専門家を育成できたとして、彼らが下した判断について、ほとんどの人が適否を判断できない(社会的受容が進まない)だろうとも想像しました。
こうした点について、みなさんの考えを教えて欲しいです。

<問2>
普段暮らしていて、エネルギー問題というと、「電気やガスの節約」を思い浮かべがちですが、「現代文明を支える素材の、新たな商業規模の生産プロセスを開発しなければならない」という指摘が大切だと思いました。
研究開発テーマの設定について、<問1>のような専門家がテーマを設定して予算を付けて研究者を募集するスタイルと、自身の好奇心に基づいてセレンディピティなども期待するスタイルの研究には、社会的に望ましい比率があると思うかどうか、あると思うならどのような比率だと思うか、みなさんの考えを教えて欲しいです。

【今回の成果共有】

芸術家:赤松さん
エネルギーの見える化アートプロジェクトを通じて、科学技術と芸術の融合の可能性を実感しています。特に、緑川さんの教育プログラムとの連携や、黄田さんのデジタル技術との協働により、より多くの人々にエネルギー問題への理解を深めてもらえる可能性を見出せました。芸術には、複雑な問題を直感的に伝える力があると確信しています。

実務家:青柳さん
テキサス州での停電経験を踏まえ、エネルギーの安定供給とコスト管理の重要性を再認識しました。白石さんご提案の産業活動データを活用した需要予測や、黄田さんの個人間電力取引システムは、企業のBCP戦略にも大きな示唆を与えてくれます。特に、工場の生産計画と電力需給の連動は、具体的な成果が見えてきています。

フリーランス:黄田さん
AIとブロックチェーンを活用した電力取引システムの開発を通じて、白石さんから産業活動データの活用という具体的な示唆を得られました。また、黒木さんの指摘された規制緩和の必要性は、実装面での重要な課題です。技術開発と制度設計の両面からの取り組みが、この分野では特に重要だと実感しています。

起業家:緑川さん
高校生向けエネルギーミックス教育プログラムに、青柳さんご提供の実証実験データや、赤松さんのアート作品を組み込むことで、より実践的な学びの場を作れそうです。特に、実データを使った意思決定プロセスの体験は、生徒たちの問題理解を大きく深めることがわかってきました。

物理学者:白石さん
蓄電技術の物理的限界と新技術開発の可能性について、黄田さんのAIプロジェクトに具体的な提案ができたことは大きな収穫でした。また、青柳さんの工場での実証実験は、理論と実践の橋渡しとして非常に興味深い事例です。科学的知見の社会実装には、このような分野横断的な協力が不可欠だと確信しています。

政府官僚:黒木さん
2030年の電源構成目標達成に向けて、具体的な政策課題が見えてきました。特に、黄田さんの個人間電力取引システムの実装には法制度の整備が必要です。また、緑川さんの教育プログラムのような取り組みを政策的に支援することで、社会的受容性を高められる可能性を感じています。

主宰者:7人目
今回が、仮想読書会の初回ですが、各キャラクターどうしで対話を重ねさせることで、「独りで読んでいるだけとは異なる、広く深い読み方が可能になった」と感じました。明日(日本時間の2025年1月21日未明)、米国でトランプ大統領が就任し、世界のエネルギー動向にも影響を与える発言をするのではないかと思っています。「生成AIに相談すると、Google検索する場合の約10倍の電力が必要となる」「各地でのデータセンター建設が進む」など、電力需要の急増が叫ばれる中、今回言及された内容も踏まえて、電力に限らずエネルギー全般に関する問題意識が、世の中に広く浸透し、議論されると良いなぁと思いました。

◆今回の成果から、どんな問いや展開が浮かびますか?◆

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