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産業看護職のキャリアラダー

最初に断っておくと、産業看護職は必ず受けなければいけない!というものではありません。

産業保健看護専門家制度とは

旧制度である「日本産業衛生学会登録産業看護師制度」から、新制度として2015年に設立。
日本産業衛生学会による産業看護職の認定制度。
産業看護職にとっては現在(令和3年10月時点)唯一、名称に「産業保健看護」と冠した認定制度でもあります。

詳細は公式HPをじっくり参照あれ!

日本産業衛生学会 産業保健看護専門家制度
https://www.sanei.or.jp/hokenkango/

日本産業衛生学会 産業看護部会
http://sangyo-kango.org/wp/

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あいみ作成

私は「登録者認定試験」に合格し「登録者(看護師)」となりました。
2023年2月24日付けのお知らせで、この制度に関するパンフレットが完成したとのこと。
こちらも読むことで制度の概略がより掴みやすいかと。

受験(登録者認定試験)

100分の試験時間で問題数100問(マークシート式)
試験範囲はとにかく広い!
公式HPに試験要項が掲載されているので試験範囲はそちらで確認を。

受験対策として、日本産業衛生学会の産業看護部会による「登録者認定試験準備講座」が開催されており、私はそちらにも参加。

看護師資格のみで受験をされる方は第Ⅰ種衛生管理者の資格が必須
まずはそちらを受験しましょう。
実際の認定試験にも衛生管理者試験と同じような問題がありました。

※受験情報は産業衛生学会の産業保健看護専門家制度委員会による自由集会でも得ることが出来ます。
2022年5月の高知で開催された第95回日本産業衛生学会でも
登録者/専門家認定試験 合格への道」と題した自由集会が開催されました。
その時の資料はHPに掲載されるのでこちらもチェック!

実際に受験をした感想

100分はあっという間で、正直時間が足りませんでした。
保健師国家試験問題を更に応用した問題、衛生管理者の試験問題など、基礎ありきの応用問題という印象。

試験終了後は「受かった気がしない…」と落ち込むほど、手ごたえを感じませんでした。

とにかく試験範囲が広いので、余裕をもった学習計画が必要かと思います。

試験に合格!その後は

試験に合格後は「登録者名簿」への登録が必要です。
名簿登録完了をもって「登録者」となります。
合格から名簿登録までの期間は1年間ですので忘れずに!

名簿に登録をされると「登録証」が手元に届きます。
これで晴れて「産業保健看護専門家制度 登録者」の誕生!!!

※この名簿登録について、産業衛生学会の「正会員」であることが必要となりました(2023年2月17日のお知らせより)。

会員の種別は、正会員/学生会員/賛助会員(法人)となっているので自分の種別は確認しておこう!

登録者になったら

登録者の次は、更なるステップアップ「専門家」を目指します。
ちなみに、「登録者」のままで「専門家」を目指さないというのもありです。
登録者となった後は、5年以内に専門家へのステップアップが必須!

合格→登録→認定試験→更新継続、とこの制度を抜けない限り、研修受講や学会参加などの費用と時間と自己研鑽が続きます。

                         公式HPから引用したものを一部改変

私は「専門家」を目指します!
そのために満たすべき要件は以下のとおり。

登録者→専門家のために必要な要件
◇実務経験:産業保健に関する実務5年以上(私は現在2年目)
◇継続教育:研修単位50必要
◇研究:学会や論文発表の実績(これから頑張ります)
◇学会参加
◇社会貢献

公式HPより

これらの要件を満たし、受験資格の審査に合格すると認定試験の受験が可能。

「継続教育」として「基礎研修」50単位が必要ですが、その単位は各学会や研修参加で取得可能。
産業保健看護部会ではまとまって単位取得が可能な研修を開催しています。

私が通っている大学院プログラムでは、講義とこの継続教育カリキュラムがほぼリンクするようになっていて、無事に授業の単位取得が出来ればこの50単位はほぼクリアします。

「登録者」としての継続教育についてはこちらをどうぞ(一部有料記事)。

学会発表や論文(メイン発表者・筆頭論文者として)もこれから挑戦!
学会参加はすでに行っているので、こちらは5年間で単位取得は余裕です。
(※学会参加時の「参加証」などは保存しておきましょう。専門家受験時に提出が必要。)

社会貢献」である学会ボランティアについては下記記事をぜひ。

大事なこと、それは資格審査の際に提出が必要な
登録者基礎研修指導内容報告書」という書類。
この記載には「上級専門家との契約」が必要です。

登録者と上級専門家との契約

登録者は、上級専門家と指導契約を結ぶ必要があります。
登録者試験の受験資格では産業看護職としての実務経験は問われません。
つまりほぼ未経験に近い人も受験可能な試験。

一人職場や少人数で働くことが多い、かつ経験の浅い産業看護職が自己研鑽を積み、スキルアップを図る過程で、経験や知識を持った上級専門家が指導・相談に乗り専門家試験受験を目指す。
そのための契約です。

ちなみに対面でなく、メールや電話、ZOOMなどで相談に乗っていただいても良いそうです。(参考文献「産業保健と看護」2017.Vol.9 No.1)

登録後に上級専門家一覧の名簿を見ることができます。
名簿を確認して自分で上級専門家の方にアポイントを取って契約をお願いします。
一人職場も多い産業看護職、周囲に上級専門家がいないなど、この指導契約はハードルが高い!

私は、大学院プログラムの講師の方にお願いをしてご快諾いただき、無事に指導契約締結いたしました!

その他の方法としては学会や研修に参加をして、上級専門家の方に直接相談をする、知り合いから紹介をしてもらうなどでしょうか。

指導契約を結び、指導を受けながら登録者として経験を積み、条件を満たし、指導者である上級専門家から「ヨシ!(これが登録者基礎研修指導内容報告書)」をいただいて、専門家試験にエントリー!となります。

産業看護職にとって「産業保健看護専門家制度」とは

〇就職・転職で有利か
履歴書に書けるとは思いますが、採用する側の人が理解をしていないと採用時の評価にどう影響するかは分かりません。
産業カウンセラーなどの有名な資格と比べ、この認定制度は採用時に有利に働くとは言いにくいかと。

ですが、募集要項に「認定されているとなお良い」と記載されているものも少なからずあります。
今後の流れでは、募集時に求められる条件となる可能性もあります。
また企業の採用側に産業看護職が関わり、この認定制度の理解があれば違うかもしれません。

〇産業看護職にとってのキャリアラダー
私は産業看護職2人体制で勤務しています。
臨床時代と異なり、社内での産業看護職の評価制度は整備されていません。
産業看護職を多数配置しているような大規模な事業所は教育・評価体制は整っているところもあるとはいえ、そのような体制が整っていない・ない、という方も多いと思います。

何をもって自分が成長したか、自分がどこを目指すのか、どの程度出来ていれば良いのかという基準がない。
一人職場が多い産業看護職にとって、日々の業務に追われる中で自分の成長を振り返ることや目標を定めていくことは難しいのではないでしょうか。
またどんなキャリアを歩めば良いのか、そうしたキャリアモデルも描きにくい。

この認定制度は臨床で用いられているラダーに近いものでもあります。
実際にこの制度を教育・評価に用いている企業もあるそうです(何かの学会かセミナーで話されてました)。

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日本公衆衛生看護学会誌 JJPHN Vol.6 No.1 (2017) 
「産業保健分野における保健師等の現任教育制度」五十嵐千代より

日本看護協会のクリニカルラダーの流れを産業保健看護専門家制度に当てはめたモデルもあるのですが、限定資料のためこのnoteでは割愛。

そして上級専門家の方々は、これから目指す産業看護職のキャリアモデルとも言えます。

〇学会認定というお墨付き
産業看護職が取得する資格は多々あれど、「産業保健看護」の名前のついた資格は現在ありません。
認定を受けることは学会から「産業保健に従事する看護職」であり、ある一定の水準を満たしているというお墨付きをもらうことでもあるのです。


ここまで、自分の体験を踏まえて制度についてまとめました。

学会や研修参加など更新に必要な要件を遂行することで、質とともに「産業看護職」としての専門性も高めていける制度だと私は思っています。

この制度について、少しでも皆さんの理解の一助になれば幸いです。
また状況に応じて、適宜修正していきます。

(2022.3 一部訂正・加筆)
(2022.6 一部加筆)
(2022.7 一部加筆)
(2023.2 一部加筆)
(2023.3 一部加筆・修正)

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