What is theatre for? 演劇の役割って?
アメリカでは1月に新学期が始まります。そこで1週目にあるクラスで出されたディスカッショントピックがこれ。What is theatre for?
これは大学生の授業で、私は院生のアシスタントで参加していただけだったので、大学生の発言を聞きながら、自分の中でいろいろと考えを巡らせていました。たくさん思いつくものはありますが、一番私にとって大きいのは、「異なる文化/世界を伝えるもの、またその架け橋となるもの。」ということでしょうか。
これは必ずしも異なる「国」の文化、というわけではないです。確かに翻訳を勉強してきて、また演劇業界で翻訳家として仕事をしていきたいと考えているため、常日頃から英語圏の文化と日本の文化の違い、特にアメリカと日本の違いということについてよくよく考えてはいます。実際、わかりやすいのが、国ごとの文化の違い、使用する言語ごとの文化の違いなどだと思います。でも、私が言う「異なる文化/世界」は必ずしも「国」の違いを指しているわけではありません。
というのも同じ国に住み、同じ言語を話す人間であっても、皆文化が違うのです。育った家庭、経験してきたことなどによって皆それぞれ異なる文化、価値観を持つようになります。例えば、朝ごはんは必ず家族全員揃って食卓を囲むのが当たり前の家庭もあれば、それぞれ好きな時間に起きて好きなものを食べる家庭もあります。前者は、個々より家族との時間を大切にしているわけですが、後者は一人一人の時間を尊重しているわけです。どちらが良い悪いではなく、単に文化の違い、価値観の違いです。
この例がわかりやすかったかどうかはわかりませんが(笑)、このようにして演劇を通して、様々な人の考え方、生き方、文化、価値観を知ることができるのが演劇の醍醐味だと私は思っているのです。「あーそういう考えもあるんだ」と知る、感じることで、世界が広がり、視野が広がると思っています。その結果、異なる世界に住む人への理解が深まって、どんな相手でも受け入れられる寛容さが身についたり、考えが全く異なる相手にも寄り添うことができたりすることがあると思うのです。
演劇の魅力は異なる人の考えを知ることができることである!というのは、中高時代、私が舞台に立って役として舞台上で生きていた時にも思っていました。演じた経験があるからこそ、これをより強く感じているのかもしれません。中学生、高校生の昔の私の役作りなんてとてもちゃんとしたものではなかったのですが、中学生、高校生なりに精一杯考えていたなと思うのです。この時代、この状況でなぜこの行動をとったのか、何を成し遂げたかったのか、何を考えていたのか、何を思って死んでいくのか…。全く異なる世界、時代、国、環境で生きる、1人の人間の人生を生きる中で、日常で考えることもないことを考えられました。触れることのなかった世界に触れられました。
この考えは今でも変わらないし、役者の立場であっても、観客の立場であっても同じです。観劇することで、自分の知らない世界を知ることができます。また、それが観劇後に自分の生きる世界を見つめ直したり、自分の生き方を見つめ直したりすることに繋がります。
綺麗事ではなく、心の底からこれが演劇の良さ、演劇が必要な理由だと思っています。中高生の時に、演劇を通して、異なる世界を知ることができることに魅了されたからこそ、翻訳という仕事で、言葉の壁を超えて、もっと広い世界を伝えていきたい、と思うようになったのです。今も、今まであまり触れてこなかったタイプの演劇にたくさん触れているので、刺激がいっぱいで、世界がどんどん広がっています!知らない世界を知るって楽しい!今学期もたくさんの作品に出会って、自分の世界を広げていきたいですね。
皆さんの思う「演劇の役割」ってなんですか?