KIRINキャリア教育活動 (Day1)
はじめに
今回の活動に参加させていただいたことに心から感謝申し上げます。
そして、既に「KIRIN」という企業のファンの1人となった、私なりの視点でこの記事を書かせていただきたいと思います。
実を言うと、2日間の内容をまとめて書こうと思っていたのですが、書きたいことがあまりにも多かったので、分けて投稿させていただきました。
その位、私にとって価値のある体験でした!
キリンビール仙台工場キャリア教育活動の概要
「一番搾り とれたてホップ生ビール」をテーマに、それがお客様の素へ届くまでの一連の流れを「産地→製造→広報→営業」と、モノづくりの上流から下流までを広く学ぶことのできる活動です。
ホップの圃場見学
仙台駅から新幹線に乗って、水沢江刺駅で降車、そこから車に揺られること約1時間。
両脇に一面田んぼが広がる道を曲がった先に、見学させていただいたホップ圃場があります。
ここで、ホップについて、少しお話ししたいと思います!
「ホップ」とは、アサ科のつる性植物です。
その雌花の毬花(まりはな)という部分の中にあるルプリンという黄色い球体がビールに苦みと芳醇な香りを与えます。
ちなみに、遠野市のある岩手県は、ホップの生産量日本1の地域となっているそうです!
そんなホップですが、今回見学させていただいた里見さんの圃場では「IBUKI」と「MURAKAMI SEVEN」という2品種が育てられていました。
圃場に入ると遠目から見た以上に高く、自分の背丈の倍くらいのホップが伸びていました。一面のホップのグリーンカーテンは圧巻で、収穫を目前に控えた毬花が太陽に照らされてその緑色がより輝いて見えました。
毬花をとり、半分に割ると、一気に華やかな香りが広がりました。
柑橘系の香り、フローラル系の香り、ブドウ山椒のようなスパイシーな香り。一言で表現するのは難しいのですが、ずっと嗅いでいたくなるような、爽やかな香りです!
きっと、この香りを知ってから飲むビール、このホップが使われたビールはきっとこれまで感じたものと違う味わいがあるのだろうと期待が増しました。
ホップ栽培を行う里見さんのお話を伺う中で、印象的であったのは、ホップの華やかな香りの影にある苦労です。
具体的に
機械導入が難しいため、多くの作業を手作業で行っていること。
天候によって、ホップに品質、収量が大きく左右されること。
害虫、病気との戦い。地球温暖化の影響。等です。
中でも作業の多くを手作業で行っているということに、とても驚きました。というのも、農業においては機械化が進んでいるという印象があったからです。
しかし、ホップ栽培においては、全国でホップ農家が少ないために、ホップ栽培用の国内での機械需要が低く、その機械を輸入せざるを得ないそう。輸入しても機械の金額が高いために、リターンが見込めない、という理由で機械導入が難しく、結果として手作業になってしまうそうです。
つる下げの工程が必要となる「IBUKI」では、その手作業を圃場1周行うと1人で3日もかかるそうで、その苦労は計り知れないと思いました。
2種のうち、もう一方の「MURAKAMI SEVEN」は、つる下げの手間がかからないものの、害虫による被害が比較的多く管理が難しいという特徴があるそうで、「IBUKI」とは異なる苦労があるといいます。
しかしながら、「IBUKI」と「MURAKAMI SEVEN」の2種を同時に育てることによって、作業を分散でき、1人で育てることが可能な面積が年間で
80a/人、[IBUKIのみ]から1ha/人[2種の栽培]にまで増えるとのことです。
ここまで苦労して育てるホップでも、降水量が少なかったり、ゲリラ豪雨等でホップが打たれたりすると、収穫までに至らないことや品質が悪くなってしまうこともあるそうなので、ホップを栽培することが、如何に難しいかを感じました。実際、昨年は降水量が少なく、収量やホップのできにかなりの影響があったそうです。
だからこそ、KIRINが全量を買い取ってくれるという安心感は生産者にとって、1つの支えにもなっているのだと思いました。
ただ、それ以上にこんなにも大変なホップ生産を続けられる自分なりの理由を、Brew Goodの田村さんのお話の中で見つけた気がしたので、その辺りににもふれながら次に進めます。
少し脱線しますが、圃場見学後に道の駅 遠野 風の丘で食べた、「ニジマス丼」がとても美味しかったので、紹介しておきます!
Brew Goodの田村さんのお話
昼食後、遠野醸造Taprppmに向かいました。
そこで、遠野醸造の取締役であり、株式会社Brew Goodの代表でもある田村さんにお話をお伺いし、遠野市とホップ生産、KIRINとのか関わりについて知りました。
遠野市は、ホップ栽培を開始してから今年で61年(1963年開始)を迎えるそうです。元々冷害が多い地域であった遠野が、冷涼な気候を好むホップが適していたことから、KIRINの契約農地として栽培が開始したといいます。
遠野での栽培面積は1987年に112haで最大となり、生産のピークを迎えましたが(収量229t、栽培農家196戸)、その後高齢化、後継者不足などの問題で、2023年には栽培面積は20haと、ピーク時の5分の1以下(収量22t、栽培農家21戸)となったそうです。
このような減少の波の中で、
「ビールの里構想」を具体化する為にBrew Goodが立ち上がりました。
このビールの里構想についてですが、簡単に説明すると
「持続的なホップ生産を行いながら、ホップの魅力を生かしそこに関わる人が一体となって、関連産業まで枠を広げ、遠野という地域を活性化していく取り組み」です。
こちらのサイトやBrew Goodの公式ホームページで詳細についてご覧いただけると幸いです!
そんな取り組みを行う田口さんのお話の中で印象的であったことがあります。
◇持続可能性がカギである
2007年に「ビールの里構想」が開始し、それに伴う活動によって、新規就農者が増えたそうです。しかしながら、その新規就農者も収益等の問題で辞めてしまう人が出きたといいます。
日本の現在の農業の課題として、”担い手不足”という言葉をよく聞きますが、新規就農者を増やすことだけが必ずしもその課題解決にはならないという事を如実に表す事例であると思いました。新規就農者を増やすこと、加えてその方々が農業を続けることも、それと同じくらいに重要であるという事です。
このような問題がある中で、田口さんらは、ふるさと納税、寄付つきソーダの販売等による支援金を活用し、新規就農者を含めたホップ生産者の支援も行っているといいます。
「ホップというニッチな産業だからこそ、自分たちで支援制度を構築しなければならない」
ホップの持続可能な生産を続けていくために何が必要かを、目の前にある課題だけでなく、その先を見据えて自分で動いていく姿勢が印象的でした。
また、先ほどの話の続きとして、支援制度が里見さんのような生産者の支えになっており、身近に支えているくれるヒトがいるという事実も生産の支えになっているのかもしれないと感じました。
あくまで憶測なので、これが事実と異なることもあるかもしれませんが、誰かに応援されたり、一緒に仕事をでき共有できる相手がいるというのは仕事をする上での励みになるのかなと思います。
世嬉の一酒造
遠野市を後にし、Day1の最後に向かったのが世嬉の一酒造です。水沢江刺駅から新幹線に乗り、一関でおり、車で5分位の所にあります。
この訪問は今年度から、新しく追加されたものです!
1918年(大正7年)に横山酒造として創業。「世の人々が嬉しくなる一番の酒造りを目指す」という願いが込められた、世嬉の一酒造株式会社として、伝統文化と地域性に立脚しつつ、現在はクラフトビール、清酒等の販売、レストラン運営を行っている会社です。
今回は、世嬉の一酒造の酒造りの技と、醸造士の経験と知識により生まれたクラフトビールブランド いわて蔵ビール を中心にビールの製造等のお話を聞かせていただきました。
ここで少しビールの種類とクラフトビールについてお話させていただきたいと思います。
ビールは、麦芽、ホップ、酵母、水を主な原材料として作られますが、”材料”と”製造方法”によって様々な種類(ビアスタイル)があります!
発酵の違いによって、上面発酵でつくられる「エールビール」と下面発酵で作られる「ラガービール」分類されます。
詳細はこちら
「キリン一番搾り」をはじめとした大手ビール会社が販売するビールの多くは、下面発酵により作られるラガービールです。
以前は酒税法で、酒類の製造免許を取得するのが難しく、国内のビール市場は大手メーカーの寡占状態で新規参入は制限されてましたが、1994年の法改正により、規制が緩和され、小規模なブルワリーが数多く誕生。全国各地で地ビールが造られるようになりました。
この地ビールこそが、現在でいう、クラフトビールです!
(いわて蔵ビールは、上面発酵のエールビールです)
実はクラフトビールという呼び名が主流になったのはここ10年くらいの話だそう。名前の呼び名の変化によって、一時は沈静化したブームが再度再燃してきているそうです!
ネーミングがいかに重要かわかりますね。
お話を伺う中で、驚いたのは世嬉の一酒造さんが販売するクラフトビールの受賞歴と種類の多さです。
「三陸牡蠣のスタウト」は世界で最も権威あるビールのコンテストWORLD BEER CUPで2位、「ジャパニーズハーブエール山椒」は世界に伝えたい日本のクラフトビールの第2回大会で、グランプリを獲得しています。
これまで60種類以上のクラフトビールを販売されてきたそうで、中には農業関係者などビール業界以外の方からの依頼製造もあるそう。それもクラフトビール製造では副原料として、果物や野菜等を使用でき、製造ロットも比較的小さいため、依頼者に応じたクラフトビールを製造できるからだそうです。
見学後、ヴァイツェン・ペールエール・レッドエール ・スタウトの4種類のビールを飲み比べさせていただいたのですが、味わいがかなり異なっているのが印象的でした。
味わいの違いが見学中に食べさせていた、それぞれの麦芽の味の違いが表われているように感じ、甘い麦芽は苦みが少なめで甘味を感じやすく、反対に苦みのある麦芽は苦みが比較的強かった気がします。
また、試飲後の感想の中で、ビールが苦手な子の多くがヴァイツェンを4種の中で好きなビールとして数人挙げており、ここまで好みのビールに偏りが生まれていたことに驚きました。実際、苦みが少なかった点で私としても飲みやすく、ビールを初めて飲むような方にもおすすめしやすいビールだなと思いました!一方で、黒色のスタウトは最初はかなり、苦みが強く、4つの中だと一番苦手な印象がありました。そんな感想を持ちながら、話を聞く中で、時間が経ち少しぬるくなったスタウトを飲むと…全く味わいが違う!甘味が強くなり、かなり飲みやすく、ここまで変化し、クラフトビールへの興味がさらに湧きました。
さいごに
長い一日が終わり、仙台駅に到着したのは、20:00頃。
1日目でここまで、贅沢で、内容の濃いキャリア教育活動絶対にない!
そう言い切れるくらいに、身に余る経験でした。
最後まで、お読みいただき、ありがとうございます!