【AI4D_9】#001_Figma AIの中長期的なインパクトってなんだろう?
AI4D運営のくろせです。
3月のイベントから月日が流れ7月も終わりに差し掛かろうとしています。
イベントから時間があいてしまいましたが、AI4Dでは新たな取組としてAI4D_9を企画・運営していきます。
AI4Dとは?
AI4D(エイアイフォーディー)は生成AIを始めとするテクノロジーとの共生を通じて、「デザイン」の新たな可能性を探索・実践するコミュニティです。 私たちは、クリエイティブシーンの変化に柔軟に対応し、遊び心を持って新しい試みをし、アイデアを具体化し、それらを社会や他者と繋げて実現することを各々が探索しています。
コミュニティ発起人メンバーとしてもちさんとしょーてぃーさんがいます。
AI4D_9とは?
AI4Dが 運営する デザインとAIの今と未来を考える毎週火曜9:00開催の朝活です。X上のスペースで実施しています。
企画としては、今後AIとどう付き合っていくか気になっているデザイナー向けの企画を毎週おこなっています。
そんな記念すべき#001は2024年7月16日にスタートしました。
このnoteの内容は会話の録音をそのまま文字に起こしたものです。
また録音も下にありますので、録音が良い方は録音を聞いて下さい!
Figma AIがデザイナーに与える中長期的なインパクトを考える
なつ: 皆さん、こんにちは。早速始めさせていただきたいと思います。本日はお集まりいただきありがとうございます。このラジオトークセッションは、僕としょーてぃーさん、もちさんで運営しているAI4Dというコミュニティの企画です。AI4Dは、AIとテクノロジーを駆使してデザインの可能性を広げていこうというコミュニティです。
この「AI4D9」は、AIがデザイン業界にどんな影響を与えるのかについて、今後毎週議論していく場です。
初回となる今回は「FigmaAIの中長期的なインパクト」について、しょーてぃーさんと30分ほど話していきたいと思います。今回は特に議題を固めずにフリートーク形式で進めますので、「私も話したい!」という方は、ぜひご参加ください。
今日のテーマであるFigmaAIですが、6月末にUI3にアップデートされた機能です。僕自身も2、3週間前にウェイトリストに登録したのですが、まだ招待が届いていません。本来であれば、実際に触ってみた感想を踏まえてお話したかったのですが…今日はしょーてぃーさんに色々とお伺いできればと思います。
しょーてぃーさん、FigmaAIには様々な機能がありますが、まず全体的な印象としてはいかがでしたか?
例えば、レイヤー名を自動で変更できたり、プロンプトからデザインを生成できたりといった機能がありますが…。
しょーてぃー: 目玉機能といえば「AIデザイン」ですよね。ただ、プロンプトからデザインを生成する機能は、残念ながら今は使えない状態です。ご存知かもしれませんが、Figma側が機能を停止してしまったんです。
なつ: Appleに酷似したUIが生成されてしまって、「これはまずい」と。
しょーてぃー: そうですね。「Weather appとプロンプトをいれたら、Appleの天気アプリそっくりなものが出てきた!」と話題になって、現在はその機能自体が利用停止になっています。
僕もウェイトリストに登録して承諾の連絡が来たのは、機能停止の後だったんです。ただ、他の機能は問題なく使えています。
例えば、プロトタイプの遷移をワンクリックで繋げられる機能は、今まで手作業で設定していた手間が省けて、とても便利です。
また、先ほど話に出たレイヤー名の自動変更や、英語対応のアプリ開発時に便利なように、デザイン上のテキストを日本語から英語に一括変換する機能なども便利です。
地味に便利だと感じたのは「ビジュアル検索」機能です。例えば、「この画面デザインのファイルどこだっけ? アプリで公開したファイルだったか、それとも誰かに画像で送ったファイルだったか…」という場合に、画像をアップロードするだけで目的のファイルを探し出せる機能です。
なつ: なるほど、それは便利ですね。
レイヤー名の自動変更やプロトタイプの自動生成など、デザイナーの負担を軽減してくれる機能は、とてもありがたいですよね。
ただ、今日一番話したいのは、現在利用停止になっている「プロンプトからデザインを生成する機能」についてです。
しょーてぃーさんは、Figma AI以外にも、Create.xyzなど、プロンプトからAIでデザインを生成するサービスを色々試されてきたと思います。
なつ: ぶっちゃけて言うと、プロンプトから画面を作る機能の現状ってどうなのでしょうか? 個人的には、ビジュアル的に整っていて綺麗なデザインは作れると思うのですが、一方で「実際のユーザーはどのように使うのか?」「そもそもどんなユースケースを想定しているのか?」といった部分が欠けているように感じます。しょーてぃーさんは、どのように感じますか?
しょーてぃー: ええ、私も全く同じように感じています。
ただ、これはある意味仕方ない部分もあると思います。なぜなら、現状のプロンプト入力では、前提となる情報があまりにも少ないからです。例えば、「デリバリーアプリ」や「ECアプリ」といった、ごくごく基本的な情報しか入力できないサービスがほとんどです。本来であれば、サービス開発の現場で行われているような綿密なヒアリングや要件定義、ペルソナ設定などを経て、UIデザインに落とし込んでいくべきですが…現状のAIは、そういった前提情報を理解できるレベルには達していないのだと思います。
なつ: 本当にその通りだと思います。
普段私たちがUIを設計する際には、様々なプロセスを経て、最終的なアウトプットに落とし込んでいきます。しかし、AIが出力するのは、そういったプロセスを全てすっ飛ばした「画面デザイン」だけなので、デザイナーからすると「ちょっと違うんだよな…」と感じてしまうのも無理はないでしょう。
しょーてぃー: そうですね…。
ただ、プロンプトからデザインを生成する機能の可能性も感じています。現状はテキスト情報からデザインを生成するサービスが多いですが、今後はデザインシステムの中からパーツを選んで組み合わせるアプローチも考えられると思います。
なつ: つまり、あらかじめこちら側でデザインシステムを用意しておいて、「この中から選んでね」とAIに指示するということですか?
しょーてぃー: はい、そうです。例えば、AIがデザイン要件を解釈して「このパーツが最適だろう」と判断して、デザインを生成していくようなイメージです。
なつ: なるほど。例えば、PC版のデザインを、SP版のデザインシステムで展開してくれるとしたら、とても便利ですね。
しょーてぃー: そうですね。UIデザインのルールやモジュールをあらかじめ定義しておくことで、AIがより精度の高いアウトプットを生成できるようになる可能性は高いと思います。
なつ: 確かに、Create.xyzなどで生成されるデザインが、UI的に微妙だと感じるのは、プロンプトの指示の仕方に問題があるのかもしれませんね。
しょーてぃー: そうですね…。ただ、現状のプロンプト入力でどこまで意図を伝えられるのかというと、なかなか難しいのが正直なところです。
僕自身も、ワイヤーフレームの内容を言語化して入力してみたり、UIモデリングの内容を反映させてみたりと、色々試行錯誤してみましたが、劇的に改善されたという印象はありませんでした。
なつ: AI側が、そういった複雑な情報に対応していないということでしょうか。
デザイナーの中には、「このUIパーツは、なんとなくこの位置に配置するもの」という、暗黙の了解のようなものに基づいてデザインしている人もいるかもしれません。しかし、AIはそういった曖昧な情報を読み取ることが苦手なのではないでしょうか? つまり、データソース自体が曖昧であるがゆえに、AIが生成するデザインも曖昧になってしまう…という悪循環が起きているように思います。
しょーてぃー: 仰る通りです。AIは「UIのどこに何の要素を配置するのか?」といった情報は認識できても、「なぜその要素をそこに配置するのか?」という意図までは理解できていないのでしょう。
なつ: UX5段階モデルでいうところの「戦略」「要件」「構造」「骨格」といった、UIデザインの土台となる部分を、どのようにAIに理解させるかが重要になってくると思います。しかし、デザイン業界全体として、そういった部分を言語化して共有するという文化が根付いていないという問題もありますよね…。
しょーてぃー: そうですね。他の業界でもよく耳にする「暗黙知を形式知化できない」という問題が、デザイン業界にも当てはまるということでしょう。
なつ: ただ、私たちはデザインしたUIをクライアントに説明する義務があります。説明できないUIデザインに、果たして価値があるのでしょうか?
しょーてぃー: 確かに…。もしかしたら、AIが出力したUIデザインを元に「説明資料」を作成してくれる機能の方が、需要があるのかもしれませんね(笑)
なつ: そうかもしれませんね。UIデザインの良し悪しを判断する際に、パッと見の印象は重要ですが、それ以上に「ユーザーがどのような文脈でその画面を操作するのか?」という視点が欠かせません。AIが生成したUIに対しても、そういった視点から評価できるようにならないと、本当の意味で「使えるUI」とは言えないでしょう。
しょーてぃー: 本当にその通りです。最近、「たた」などのAIツールでLPやゲームを作れるようになったという話がありますが、「結局誰に向けて、どんな目的で使うものなのか?」という部分が抜け落ちていて、"作れるようになっただけ"で終わってしまっているケースが多いと感じます。
なつ: まさに、見た目だけの「ハリボテ」になってしまっているということですね。AIが生成したデザインにカーソルを合わせると、「このUIは、このようなユーザーの行動を促すために、このような意図で配置されています」といった説明が表示されたら、デザインの意図を理解することができますし、修正すべきポイントも見えてくると思います。
しょーてぃー: 面白いですね!
「このUIは、このようなユースケースとユーザーシナリオを想定して作成しました」とAIが説明した上で、「実際には、このようなシナリオでUIを使いたい」と修正指示を出せたら、より実用的になるでしょう。
UXデザイナーやプランナーは、言語情報からビジュアルイメージを膨らませることが得意なので、そういった機能は重宝されそうですね。
なつ: そうですね。ただ、UIデザインのプロセス自体を知らない人もいると思うので、そういった人たちの理解を深めることも重要になってくると思います。
しょーてぃー: そうですね…。
今までは、上流工程から下流工程まで、言語化して認識を合わせていくことが重要視されてきましたが、AIを活用することで、UIデザインを起点に上流工程にフィードバックしていくという、新しいワークフローが生まれる可能性もあります。
上流から下流へ、下流から上流へ…といった一方通行なコミュニケーションではなく、双方向で、あるいは中間地点からプロジェクトに参画するなど、柔軟な働き方ができるようになるのではないでしょうか。そういった、従来の枠にとらわれない働き方を、AIがサポートしてくれる未来を期待したいですね。
なつ: 上流工程と下流工程の橋渡し、翻訳作業をAIが担ってくれることで、スムーズなコミュニケーションが実現するかもしれませんね。
しょーてぃー: そうですね。そうなれば、人間が担うべき業務も自ずと変化していくでしょう。
なつ: 今話している内容は、2024年7月16日9時17分現在では実現できていません。しかし、今後1〜2年の間に実現する可能性は大いにあると考えています。
AIがUIデザインの前段階の思考プロセスをサポートしてくれるようになれば、デザイナーはより本質的な仕事に集中できるようになるはずです。
しょーてぃー:そうですね!AIの進化の鍵を握るのは、それを開発する「人間」です。AI開発者が「UIデザインにおける思考プロセス」を理解し、それをAIに学習させることができれば、私たちが期待する未来はそう遠くないでしょう。
少し技術的な話になりますが、最近のAIは、UI画面を構成するパーツを細分化して認識し、学習するようになっています。AIにUIの構造を理解させることで、将来的には人間のようにUIを操作できるようになることを目指しているのです。
なつ: なるほど…。
しょーてぃー: UIデザインの研究が進めば、人間がどのような状況下でどのような行動をとるのか、AIが分析できるようになるかもしれません。
例えば、AIに様々なシナリオでUIを操作させることで、人間の行動パターンを学習させるという方法も考えられます。
なつ: なるほど、AIにUIを使わせてみて、そのログを分析するということですね。
しょーてぃー: はい、そうです。そうすることで、現状では言語化できていない「暗黙知」の部分を、AIが明らかにしてくれるかもしれません。
例えば、「AIが出力したUIデザインに対して、人間が後から説明を加える」といったプロセスを繰り返していくことで、AIの学習データが蓄積され、精度の高いUIデザインを生成できるようになるのではないでしょうか。
なつ: 面白いですね! 例えば、「ペルソナ」と「サービスの概要」をAIに与えると、「このペルソナだったら、UIをこのように操作するだろう」と予測して、UIの改善点を提案してくれるようになるかもしれませんね。
しょーてぃー: そうですね。
実際に、世界中でAIを使ったUIデザインの研究が進められています。
なつ: AIが進化すれば、私たちの仕事が奪われるのではないか? と不安に感じる人もいるかもしれません。もちろん、今まで通りのやり方では通用しなくなるでしょう。しかし、AIはあくまで「ツール」です。AIを活用することで、より創造的で人間らしい仕事に集中できるようになると捉えるべきだと思います。
しょーてぃー: そうですね。UIデザインの細かな作業はAIに任せ、人間は全体の設計や、ユーザー体験の向上といった、より高度な仕事に注力していく必要があるでしょう。
そのためには、AIを「競争相手」ではなく、「共存共栄していくパートナー」と捉えることが重要です。
AIに代替されることを恐れるのではなく、「AIでは代替できないスキル」を身につけることが、今後のデザイナーには求められるでしょう。
なつ: 最近、上司と「AIが進化すると、自分たちの仕事はどうなってしまうのだろう…」という話をしました。
AIの進化は、人類にとっては大きな進歩ですが、私たち個人にとっては、不安や恐怖を感じる出来事でもありますよね。
例えば、僕はボタンのデザインにこだわるのが好きなのですが、そういった作業は真っ先にAIに取って代わられる可能性が高いと感じています。
時代の流れに合わせて、新しいスキルを身につけていくしかないのでしょうか…。
しょーてぃー: もちろん、新しい知識やスキルを身につけることは重要です。
しかし、それ以上に「AIにはない視点」を磨くことが重要なのではないでしょうか? 例えば、ボタンのデザイン1つとっても、「ユーザーにどんな感情を抱いてもらいたいのか?」「サービスの世界観をどのように表現するのか?」といった、多角的な視点を持つことが重要です。
なつ: なるほど…奥が深いですね。
しょーてぃー: AIはあくまで「最適な答え」を導き出すツールです。しかし、デザインにおいて本当に大切なのは「最適解」だけではありません。ユーザーの心を動かすような、創造性豊かなデザインを生み出すためには、人間の感性が不可欠です。
Figmaも、AIとの「競争」と「共存」を掲げています。Figma AIによって、今まで人間が行ってきた作業の一部は効率化されるでしょう。しかし、だからといってデザイナーの仕事がなくなるわけではありません。AIを活用しながら、人間にしかできないクリエイティブな仕事に、より一層力を入れていくべきです。
なつ: AIの進化によって、私たちの働き方が大きく変わろうとしている今、改めて「人間らしさ」とは何か? を問われているのかもしれませんね。
しょーてぃー: 法律、倫理、個人の感情、社会、人類全体…。様々な視点から物事を捉え、AIとどのように向き合っていくべきかを、常に考え続けることが大切です。
しょーてぃー: AIに仕事を奪われるのではないかという不安や焦燥感は、誰しもが感じる自然な感情です。
しかし、悲観するのではなく、AIを「より良い未来を創造するためのパートナー」と捉え、共に歩んでいきましょう。
なつ: UXリサーチの分野でも、AIの活用が進んでいます。正直なところ、AIが進化した先に、自分たちがどのような役割を担うことになるのか、まだ明確な答えは出ていません。
しかし、AIの可能性を信じ、積極的に活用していくことで、新しい道が開けてくるのではないでしょうか。
しょーてぃー: AIの進化は、私たち人類にとって、大きな可能性を秘めていると、私は信じています。
なつ: ラッダイト運動のように、技術革新を拒むのではなく、AIと共存していく方法を探っていくべきですね。
残り時間もわずかとなりましたので、そろそろまとめに入りたいと思います。
なつ: Figma AIをはじめとするAIツールは、デザイナーにとって非常に強力な武器になります。
しかし、AIはあくまで「道具」です。
AIに仕事を奪われることを恐れるのではなく、AIを活用しながら「人間にしかできない仕事」に集中していくことが重要です。
しょーてぃー: まさにその通りですね。
なつ: 本日はこの辺りで終わりにしたいと思います。
改めてご説明させていただきますと、この「AI4D9」は、AIとデザインの未来について考えるコミュニティ「AI4D」が運営しています。
毎週火曜日の夜9時から、様々なテーマで議論していきますので、もしよろしければ、また来週もご参加ください。
なつ: しょーてぃーさん、本日はありがとうございました。
しょーてぃー: ありがとうございました。今週も一週間、頑張りましょう!
なつ: はい、頑張りましょう!(笑)
それでは、これで終了とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました!
収録した録音はこちら
https://x.com/i/spaces/1DXGydmwwoEKM
最後に
いかがだったでしょうか?
次回は 2024年7月30日(火) 9:00~ です。
次回の内容は「みんながAI使わない理由はなんだろう?」です。
ぜひぜひお越しください!
また #AI4D と書いてnoteやラジオの感想をつぶやいて頂けますと、今後のテーマの選定や、別途イベント等の実施の際の参考にさせて頂くこともございます。ぜひぜひつぶやいて頂けますと幸いです。
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