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理想郷への道
年頭なのでポジティブに始めたいと思います。
理想郷への道
100年くらい前は人類は自動車や飛行機や電灯の発明を目にしていました。21世紀にはもっともっと技術が進歩して平和で豊かな暮らしが待っていると思われていました([delong])。
大恐慌の後でさえ、大経済学者ケインズは100年後には週15時間労働が実現するだろうと述べています ([keynes])。
2024年12月にはo3が発表され、高度に論理的な判断能力で人間をしのぐ生成AIが明らかになっています。実際に2025年1月末にo3-miniがリリースされるのが楽しみです。
生成AIによるノーベル賞獲得とともにさまざまな分野で生成AIを利用した飛躍的な発明が行われる可能性が高まっています。21世紀の大部分の発明が今後10年の間に行われるだろうという予想をしている人がいます。
生成AIが人間を失業させるという連想をする人も多いです。それも事実ですが、今一度100年前に立ち上り、人類にとって一番いい理想郷にとって生成AIがどう寄与するかを考えたいと思います。
生成AIが価値創造を担い、人間が平和で安全で豊かで自分の望む自己実現ができる社会になるといいと思います。
ギリシア・ローマ時代の市民社会で労働を奴隷ではなく生成AIが担うバージョンです。
マイグレーションの難しさ
2024年の生成AIおよび人間型ロボットの進化を見ると、将来的に労働を生成AIが担うのも不可能ではないと思います。
では、21世紀には理想郷が誕生するでしょうか?
技術的には可能ですが、社会的、政治経済的にそれを可能にするのは難しいと思います。
産業革命はどの国も政治経済的な大混乱は避けられませんでした ([zaihan])。Zaihanは米国を除くとイギリスもドイツもロシアも日本も中国もそうだったと言っています。
労働の意味を変えてしまうという意味では政治経済が同じで生成AIだけがそのなかで何かの役割を果たすというのは予想しづらいです。
企業でもそうです。創業者が生成AIを使って創業者チームだけで起業するというのが労務の苦労も成長による会社組織の脱皮もなくて便利です。しかし、今いる社員を生成AIで代替するというのはゼロから生成AIで会社を作るより何倍も大変です。
生成AIは2024年に予想に反して進化しましたが、それと社会の政治経済的な変化、会社の組織的な変化を整合させるのは1年や2年でできることではないと思います。
それでも前を向く
GPUの能力は年4.1倍で拡大すると予想されています(MicrosoftのIgnite 2024基調講演)。高度な思考が浮動小数点演算ででき、さらに浮動小数点演算を追加すればいくらでも精度があがるとわかってきました。
o1がリリースされて4ヶ月ですが、o1を支える4つの要素:ポリシー初期化、報酬、検索、学習に関する論文も出ています([zeng])。
一時期、データの枯渇によって、生成AIの進化は頭打ちになっているという説もありました。どうやら、そんな壁は存在しないようです。
技術の進歩と社会が幸せになるのは別物です。しかし、技術の進歩が作り出す付加価値の拡大が社会をよりよい方向に導く貴重な原資であることは確かです。
簡単に知的生産できる世の中になることで人間同士の相互尊重が拡大すればいいと思います。
むすび
生成AIベンチマークの墓標とかコンサルティング冬の時代とかは来週回しにします。
ポップアーティスト ロメロ・ブリットは人をポジティブにするのが芸術の仕事と言っています。生成AIも人類をポジティブにしてくれるといいと思う年頭です。
少なくとも理想郷への想像力は追求したいと思います。
参考文献
[delong] J. Bradford DeLong: Slouching Towards Utopia: An Economic History of the Twentieth Century https://www.amazon.co.jp/dp/0465019595 2022年
[keynes] John Maynard Keynes: Economic Possibilities for our Grandchildren http://www.econ.yale.edu/smith/econ116a/keynes1.pdf 1930年
[zaihan] Peter Zaihan: The End of the World Is Just the Beginning: Mapping the Collapse of Globalization https://www.amazon.co.jp/dp/006323047X 2022年
[zeng] Zhiyuan Zeng et al. : Scaling of Search and Learning: A Roadmap to Reproduce o1 from Reinforcement Learning Perspective https://arxiv.org/abs/2412.14135 2024年