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ソフトウェア技術者が支持するNVIDIA


はじめに

NVIDIAの強みについて面白い記事(「なぜ半導体大手エヌビディアは「超儲かる」高収益企業になったのか。2兆ドル企業の「売上3.7倍成長」の秘密に迫る 」参考文献参照)を読んだのでそれについてお話しします。

NVIDIA一強時代

NVIDIAはAI半導体で8割のシェア、76%の粗利率を誇っています。このNVIDIA一強時代を支えているのが次の2つのポイントです

  • NVIDIAはAI企業

  • NVIDIAはソフトウェア企業

NVIDIAのソフトウェアエコシステム

ソフトウェア技術者がしたくないこと

ソフトウェア技術者はAI学習以外の本質的な部分以外の周辺部の仕事はできるだけしたくないと思っています。
したくないことは例えば以下のようなことです:

  • コードをいじっていないのにライブラリやGPUの構成変更によるデバッグに苦しめられること

  • GPUを追加するたびに構成変更や通信制御のデバッグをすること

  • GPU間が遅い問題を解消するためにトリッキーでバグの出やすいプログラムを強いられること

NVIDIAのアーキテクチャとライブラリと開発環境はソフトウェア技術者があまりAI学習に関係ない面倒なことをしないようにしてくれているわけです。

ソフトウェア技術者が支持する理由

NVIDIAはソフトウェア技術者から支持されています。その理由は次の3つです:

  • CUDAによってソフトウェア開発が簡単になっている

  • CUDAによるソフトウェアはGPUの追加で簡単にスケーリングする

  • GPUを追加したシステムは高速のGPU間通信で支えられている

一番目のポイントはNVIDIAがグラフィックス処理の時代からソフトウェアエコシステムを重視していたことです。CUDAはその典型例です。ハードウェアがどんなに速くてもそれが簡単にプログラムできなければ意味がありません。大規模なソフトウェアのデバッグには膨大な時間がかかるからです。コーディングするうえでnum.pyがエラーをはいてValueError: numpy.ufunc has the wrong size, try recompiling. Expected 192, got 216とかいうとソフトウェア屋は顔を真っ赤にしてしまいます。ライブラリが安定的に動くことは重要です。
二番目のポイントはNVIDIAがGPU群の実装を隠蔽していることです。性能を追加したけれがGPUを追加すればいいです。CUDAが一定の実装を隠蔽してくれるので同じソフトウェアが動きます。
三番目のポイントは高速通信です。GPUを試しに動かすとCPUで動かすより遅くて驚くというのはソフトウェア屋にはよくあるパターンです。GPUは必要なデータをロードしてからでないと高速に動かすことができません。たくさんのデータを飲み込んでこそGPUは本領を発揮します。GPU間通信が遅いとデータ入力の遅延が大きくなります。
これらの利点はNVIDIAがソフトウェアとしての生成AI学習開発をよく理解しているというところから来ています。
GPUを追加しても同じソフトウェアが動くからこそ巨大IT企業はためらいなく大量のGPUをNVIDIAに発注しているわけです。

逆に言えばソフトウェア技術者がしたくないことは次のようなことです:

CUDAによるエコシステムの囲い込み

ソフトウェア資産を別のプラットフォームに移行するには大きなコストがかかります。「NVIDIAがCUDAを他のハードウェア上で実行することを禁止」の記事にもあるようにNVIDIAは明示的に自社GPU以外でのCUDA資産の活用をライセンス条件で禁止したようです。すでにあった制約を明示するものです。一部の中国企業はCUDAを使っていることを認めていますので、対応が必要です。

おわりに

AI半導体はAI学習をスケールするためのソフトウェアノウハウに寄り添い、それを支援することで、ソフトウェア技術者に支持されています。ソフトウェア技術者の支持がNVIDIA帝国の力の源泉です。
ソフトウェアエコシステムによる囲い込みがNVIDIAの優位を築いているというお話をしました。

参考文献

  • なぜ半導体大手エヌビディアは「超儲かる」高収益企業になったのか。2兆ドル企業の「売上3.7倍成長」の秘密に迫る https://www.businessinsider.jp/post-283698 2024年

  • NVIDIAがCUDAを他のハードウェア上で実行することを禁止 https://gigazine.net/news/20240305-nvidia-cuda/ 2024年

  • AI半導体はAI時代の総合格闘技: NVIDIAの三位一体の強み https://note.com/ai300lab/n/n1ebafffd0903 2024年

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