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NVIDIAはAIデータセンタ・ソリューション・カンパニー
5月22日のNVIDIAの四半期決算発表が注目されています。半導体会社からデータセンター・ソリューション・カンパニーに進化したNVIDIAのお話をします。
NVIDIAの進化
NVIDIAは創業から31年を迎えています。創業時のCEOが今でもCEOを続けている会社です。ゲーム向けのGPU (Graphic Processing Unit) の会社でした。今やGPUはAI向けの並列計算になくてはならない半導体です。
半導体会社といっても社員の多くははAIエンジニアやスケーリングエンジニアです。スケーリングエンジニアは大規模計算の実行管理を行います。
NVIDIAの売り上げの8割はデータセンタ向けで、その用途はAIです。
半導体のエキスパートであるとともにデータセンタを組むためのハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアにも精通しています。
今やAI向けデータセンタの核心部分を担っています。
NVIDIAはAIデータセンタ・ソリューション・プロバイダです。
半導体会社は数あれど、データセンター・ソリューションにおいてNVIDIAに匹敵する会社はありません。BlackwellアーキテクチャはAIデータセンターの大規模運用に最適化したソリューションです。
データセンタ・ソリューション・カンパニーなら半導体サイクルとかは関係ありません。
データセンター・ソリューション
データセンター・ソリューションの中核は、演算能力だけでなく、大規模な計算を実行管理した場合の設置運用コストの最小化です。
CEO のJensen Huangは、AI半導体を大量に集積した場合、ケーブルのコストだけでNVIDIA GPUのチップの価格を上回ってしまう、と言っています。つまり、NVIDIA以外のチップを使うとしたら、チップがタダでもわりに合わないということです([ai300lab])。
NVIDIAの顧客はハイパースケーラー企業
世界で一番儲かっているのはハイパースケーラー企業です。ハイパースケーラーとは100万台以上のサーバリソースを持つ企業です。Microsoft, Amazon, Googleのクラウド企業などがその代表です。Mataなどの数十億人の顧客を持つ企業もハイパースケーラーです。
これらの企業はIT業界で最も投資余力のある企業であり、彼らはNVIDIAの優良顧客です。
NVIDIAのチップはハイパースケーラーにとってなくてはならない構成要素です。今や、NVIDIAは0.5次ハイパースケーラー、すなわち、ハイパースケーラーに不可欠な基盤を提供する企業とも言えます。ハイパースケーラー企業のサービスを再販する事業者を2次事業者として、逆にハイパースケーラー企業の上流にいるというイメージです。
中期的に見てもデータセンター・ソリューションという観点からNVIDIAに対抗できる会社は見当たりません。Intel, AMD, ARMがどうにかできるレベルではないと思います。あえていえばMicrosoft, Google, AWSです。しかし、NVIDIAからチップを買ってきて自分たち本来の土俵で儲けるほうが効率がいいと思います。
NVIDIAの死角
技術的には問題がないので、仮に死角があるとすれば次の3つです:
市場の過度な熱狂
需要の先食い
TSMCに製造を委託
市場の過度な熱狂
期待があがりすぎることは常にバブル崩壊の危険があります。儲かるから上がる、上がるからさらに期待が過熱する、となれば、どこかで限界は来ます。
今までのバブルと違って利益が1年で10倍になっているので株価が10倍になっても行き過ぎと言うことはありません。ただし、どんなものにも限度があるということは間違いありません。
需要の先食い
MetaのZackerburg CEOがAIデータセンター投資の回収には数年かかると言っているのには注意が必要です。NVIDIAのチップを買い漁っているのはメガIT企業ですが、彼らの投資は先行投資です。先行投資ということは需要の先食いをしているということです。需要の先食いが尽きれば、NVIDIA GPUを大量に搭載したAIコンピュータを買ってそのコストを回収できるプレイヤーは限定的です。
TSMCに製造を委託
一説にはNVIDIA GPUは納品18ヶ月待ちともいわれています。これだけ待ち行列があればあとは作るだけです。TSMCがチップを製造する限り、3ヶ月毎の決算に影響が出ることはないと思います。万一、TSMCが製造できなくなるような事態になればNVIDIAには打撃です。
最後の死角
AI戦争が終結し、究極のAIが完成する日が来ることでもリスクとえばリスクです。AIへの先行投資が収束すればNVIDIAには打撃です。これは誰にもいつ来るかわかりません。
NVIDIAの未来
NVIDIAのAIデータセンター・ソリューションは一強状態です。Jensen Huangの言う通り、10年で100万倍の性能向上ができれば、単純計算で3年で100倍近いコストパフォーマンス向上が得られます。コストが1/100になるというのは経済学的に言えばタダになるに近い状態です。この場合、需要の先食い理論は適用されません。3年前のAIコンピュータは全部廃棄して次に乗り換えたほうがコスト的にも電力消費的にも有利だからです。NVIDIAのIT覇権は続くと思います。
むすび
AIはPCやインターネットやスマートフォンよりも大きな技術革新だと思います。唯一無二のテクノロジーを持つ企業が時価総額No.1になるというのは世界にとってもよいことです。人類が頭を使って進化している証です。決算発表と次の四半期の業績予想が楽しみです。
参考文献
[ai300lab] 競合AI半導体がタダでも負けないNVIDIA https://note.com/ai300lab/n/n468f422a71cc 2024年
[ai300lab2] AI半導体はAI時代の総合格闘技: NVIDIAの三位一体の強みhttps://note.com/ai300lab/n/n1ebafffd0903 2024年