中高生のOBOG訪問 「最前線の現場の方と子供達を直接つなぐ」
子供達が”ぼんやり”とでも何か特別なテーマや分野や業界に興味を持った時には、その”ぼんやりと”した好奇心や、”知りたい”という探求心を、出来るだけタイムリーに取り扱ってあげたいと思っている。
昨年12月に友人から相談を受けた。「誰か外務省か国連で働いている方をご存じないですか。高三の娘が国際貢献につながる仕事だと興味を持っているんですよ。」
なぜ外務省や国連なのか、なぜ国際貢献なのか、何を持ってそう言っているのか、大人としてそういったことから子供に問い正すことはいくらでもできるだろうし、もっとこういうことを考えてからとか、もっとこういうことを理解してから、とアドバイスすることも出るだろう。自分の経験や知識ベースで、大人はつい「まあ待ちなさい」と上から物を言いがちだ。
でも子供は子供なりに、自分で調べた内容や、限られた情報であってもこれまで見聞きした内容をもとに、今知りたいことや興味を持ったことが実際にあるわけだ。そうした小さくても灯った火が消えないように、それは出来るだけタイムリーにサポートしてあげるべきなのではないかと思っている。
SNSで声をかけて1週間たたずにDMをもらい始めた。また一件、また一件。友人の友人であったり、友人の知人であったり、友人の兄弟経由のつながりでもあった。一件一件、なぜこのようなオファーをしているかの背景を、誠意をもって説明をし、直接お話させて頂けるセッションを申し込んだ。日本の方もいれば国外の方もいた。仕事の合間を縫っての調整だったりした。年末年始で貴重な時間を頂くケースもあった。時差がある国にいらっしゃる方もいた。それでも驚いたのは、全ての皆さんが子供達のためならばと快諾してくださったことだった。
最終的に昨年12月から今年1月にかけて、その高三の女の子に加え中一の娘を加えた二人のために、計5件の下記のOBOGセッションが実現した。
【セッションを実現してくださった方】
●NY在住、国連現地採用職員の方
●ワシントンDC在住、在アメリカ日本大使館公使の方
●ドイツ、ボン在住、国連専門職員、地球環境問題担当の方
●東京在住、外務省外交官、時期ベネズエラ勤務予定の方
●元農林水産省、現米国製薬会社、政府渉外担当の方
【子供達の事前質問】
①その仕事につくことになった経緯・きっかけを教えてください。
②毎日どんな仕事をされていますか。
③仕事や職場の雰囲気はどんな感じですか。
④そのお仕事で必要とされるスキルはどんなことですか。
➄働き方(ワークライフバランス)についてはどうですか。
⑥その仕事をする中で、どんな点で自分が成長し・スキルアップができると思いますか。
➆私たちが仮にその仕事を目指すなら、就職するまでに具体的に何を勉強したらいいと思いますか。
⑧その仕事についてよかったことを教えてください。
➈その仕事について良くなかった事があれば教えてください。
➉今の仕事にやりがいはありますか?どんな時にそれを感じますか。
⑪日本(世界)のために私たちにできることは何だと思いますか。
良い質問ばかりだと思った。率直だし、その仕事について知らないからこそ出てきた素直な質問ばかりだ。そしてセッションは全て素晴らしい時間になった。私も一緒に全て同席して、子供達と一緒に話を聞いた。全ての方が子供達に優しく接してくださり、丁寧にユーモアを交えてお話しされ、子供達の質問に基本全て答えてくれた。そして言葉の宝物のような沢山のキーメッセージを頂いた。背景も仕事内容も異なるのに、とても似通ったキーメッセージが沢山あったことは、きっと偶然ではないと思う。
子供に親しかしてあげられないことはあるけれど、親にも出来ないことは沢山ある。未来を背負う子供達が私たちにとってみんなの財産なら、地域や世界で育てて行くことが出来たらいいなと思う。改めて人とのつながりに感謝した年末年始を過ごし、この取組みは今年2022年、少しずつ続けてみたいと思っている。
※下記はキーメッセージのサマリー。今回の二名の中高生の子たちだけでなく、多くの中高生の子供達へのエールになると信じているので、書き留めておきたいと思う。
「多様性の大切さ」
●多様な人と働くことには大きな価値があること、
●チームを組む時には、その人それぞれのExpertiseを見極めること、
●カルチャー、ダイバーシティを理解して尊重すること、
●違う価値感をリスペクトすること(必ずしも賛成する必要はないこと)、
「キャリアを作ること」
●国連や外務省は直接入るルートもあるが別の仕事をしてからでも可能、
●プロジェクトマネージメントや予算の獲得や交渉力などはどの仕事でも基本的に必要だということ、
●チョイスがある時には難しい方を選んでみること、
●勉強や仕事は「飽きない」テーマを選ぶこと、
●自分の得意なことや好きなことを大事にすること、
●ロールモデルを見つけること、
「国際的な仕事を目指すために」
●難しい壁にぶちあたっても、”たじろぐことはない”こと、
●世界中どんな環境でも暮らせるくじけない強いメンタリティーを持つこと、
●国と国との関係は、人と人とがどう付き合っていくかとある意味同じであるということ
「グローバルコミュニケーション」
●語学力は大事、でも「伝えたい」という気持ちがもっと大切なこと、
●異なる文化背景からきている人たちの話を聞ける力をもつこと、
●歩み寄り、良い意味で妥協点を見いだすことも時には大事だということ、
「大学生をどう過ごすか」
●これがしたい、がまだなくてもいいこと、
●今何もかも目標を決める必要はないこと、
●人や物事に幅広く興味を持つこと、
●バイトでもインターンでもいいので機会を作って働く現場に飛びこんでみること、
●大学生の間に、人間としての幅や器を広げること、
「強い気持ち、考える力、知る力」
●失敗をおそれないこと、そこから学ぶこと、
●なぜこれをするのか、を考えるということ、
●つまり、常に「本質はなんだ」ということを考えること、
●その国で今何が本当に起きているか、正しい情報を見極めること
「日本という国に生まれ育った私たち」
●日本さえよければよい、というのは一人よがりであること、
●我々は日本という世界の中でも恵まれた環境で生まれ育っていることを知っておくこと。