人工知能(AI)の資格 。エンジニア向けの【E資格】と AIのビジネス活用の能力を問う【G検定】の2つ資格を徹底解説


現在、第3次ブームの中にあり、さまざまな人工知能(AI)の情報が飛び交っています。

その中で、
その情報が正しい情報なのか、間違っている情報なのかを判断するのは難しい。また、人工知能(AI)を開発するとして、専門の開発会社に発注しようとするとき、その会社やエンジニアはどのくらいの人工知能(AI)を開発する力を持っているのか判断することは難しいのが現状です。

このような問題を解決するために、人工知能(AI)の専門知識を持っている人材や実際に開発できる人材の育成が重要になります。


みずほ総研の調べによると、2020年までに不足が見込まれるAI関連人材数は4.8万人とされており、人材不足解消は喫緊の課題。また学ぼうとしても、学習情報不足により、どこで、何を学べかよいかわからない状態となっています。さらに、学びたくても、そもそも教育機関が少なく、需要と供給のバランスが悪いという問題もあります。

そんな中で、一定の役割を果たすのは「資格」。
人工知能(AI)を開発するとして、一定の基準を満たす力を
持っていることを証明する資格取得者がたくさんいる会社であれば、発注者としては安心して開発を任せられるというもの。個人としても資格を持っていれば、一定の能力を持っているとしてさまざまな面で有利になるでしょう。

実はAI(人工知能)の資格は既に存在します。まだご存知ない人も多いでしょう。その資格は、JDLA「一般社団法人日本ディープラーニング協会
Japan Deep Learning Association」によって2つの資格が設けられました。1つは人工知能を実装する能力を問うエンジニア向けの「E資格」。もう1つは人工知能をビジネスに応用する力を問う「G検定」の2つの資格です。

現在、人工知能(AI)は急速なスピードで社会に実装されてきており、どんな会社も今後はAI対応を迫られて来るでしょう。しかし、一番重要な開発者が不足しています。そのため、AIエンジニア獲得競争のような状態になっています。

人工知能(AI)を開発しているエンジニアはもちろん、これから人工知能を学習しようとしている方もAI(人工知能)の一定の能力を持っていることを証明する「資格」があれば有利にことを運べることは間違いないでしょう。

また、資格試験のシラバスに沿って勉強をすることにより、むちゃくちゃ広い人工知能(AI)分野の中でどんなことを学べばよいのかを知ることもできます。AI(人工知能)のエンジニアに必要な資格として「E資格」と「G検定」2つの資格を詳しく見ていきましょう。


JDLA 日本ディープラーニング協会とは?その目的は?

まずはじめに人工知能の資格を設けている日本ディープラーニング協会とはどんな団体なのでしょうか?

この団体の名前の第3次人工知能(AI)ブームの火付け役となったディープラーニング。しかし日本は米国や中国に比べて周回遅れと言われるほどこの分野の取り組みは遅れています。

このような日本の人工知能(ディープラーニング)業界に対して、早くから課題意識を持っていた東京大学の松尾豊准教授を発起人として日本ディープラーニング協会が設立されました。

日本ディープラーニング協会の目的は、ディープラーニングを中心とする技術により日本の産業競争力の向上を促進させることです。

大型展示会CEATEC2017で、日本ディープラーニング協会設立のシンポジウムが開催されました。


このシンポジウムに筆者も参加しましたが、経済産業大臣の世耕弘成氏のお言葉が読み上げられるなど政府の期待も高い。会場には主要なメディアも多く訪れていて注目の高さを感じました。

日本ディープランニング協会の目的の中心となるものは人材育成です。

世界に通用するディープラーニング人材を多く輩出することが日本の産業発展にとって急務。そのために「E資格」と「G検定」が設定されました。

エンジニア・・・E資格とは「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を持つ人材」と定義し、2020年までに約3万人の輩出を目指しています。

ジェネラリスト・・・G検定とは「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して事業を応用する能力を持つ人材」と定義し、2020年までに10万人規模で排出することを目指し、知識面から育成を支援する活動に取り組んでいます。

それではそれぞれの資格を紹介していきましょう。


人工知能(AI)を実装する能力が問われるエンジニア向けの資格「E資格」とは

ディープランニングを実装するエンジニアの技能を認定する試験である「E資格」を受験するには、「JDLA認定プログラム」を修了する必要があります。

JDLA認定プログラムとは、協会のシラバスに沿った講義とプログラミング演習を行い、プログラミングスキルやモデルチューニングのスキルなど短期間のペーパーテストだけでは測れないスキルの育成と、ディープランニングを学べる場を増やすことを目的としています。

認定プログラムは2019年1月時点で7つあり、各事業者が運営しています。その中から各自、認定プログラムを選び受講する形になります。この認定プログラムを修了することが受験申し込みの条件となります。

試験概要といたしましては、2019年は2月と8月に試験が予定されており、会場は全国の試験会場からお申し込み時に選択します。試験日は2部制(各部120分)となっており、申し込み時にどちらか選択。試験はパソコンで受験する形になり、計算用紙とボールペンが与えられます。

E資格に合格するためには、必要なディープラーニングを実装するプログラミングの技術や線形代数、確率・統計などの応用数学の能力も問われます。

過去の試験を例に取ってみますと、2018年9月に第1回の試験が行われ、時間は120分、107問出題。受験者数337人中、合格者は234人。合格率は69.4%となっています。受験者は30代が一番多く、「研究・開発」、「情報システム・システム企画」などの関連の職種が受験者の大半を占めます。まだ受験者数は少なく、今後、学生、その他の職種の方の受験も増えていくと思われます。


受験者の声
・レベルの高い講師陣やサポートの方々に直接質問できる
・最新の機械学習の論文を追っていないと解けない問題が出る
・深層学習でない領域の機械学習の問題も多くある
・とにかく実装力が問われる。
・受験するのに高額な費用がかかる。

合格者の声
〇変わったこと
・学習アルゴリズムの背景を理解できるので、機械学習を用いる案件で、顧客への説明能力が飛躍的に上がった。
・思うような精度がでない時の原因と対策を考える力が伸びた。
・(時間はかかるが)論文を理解することができるようになった。理解が難しい時は、何を調べればよいかわかるようになった。

〇変わらなかったこと
・資格自体の認知度が低いこともあり、対外的な評価、影響は今のところ限定的。
・日本では制度上、年収アップにすぐに繋がらない。
(ブログやツイッターより)


それでは次に人工知能 (AI)を活用する能力を証明する資格についてお話ししましょう。

ビジネス面で人工知能(AI)の事業応用する能力を問われる「G検定」とは

ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して事業を応用する能力を問われるのが「G検定」。知識問題が中心でプログラミングなどの実技は問われません。そのかわり、時事問題を含む人工知能の全般的な知識、ディープラーニングに関わらず機械学習のアルゴリズム全般の技術的な問題、法律、倫理、産業応用など、非常に幅広い知識が問われます。

試験概要といたしましては、過去の例を挙げますと、120分の小問226問の知識問題。オンラインでの試験実施。(自宅受験)。過去3回実施され、1回目受験者数1448人中、合格者は823人(合格率56.8%)2回目受験者数1988人中、合格者は1136人(合格57.1%)3回目受験者数2680人中、合格者は1740(合格率64.9)
となっています。

受験者の年代は30代、40代が多く、業種としては「ソフトウェア業」、「情報処理提供サービス業」の受験者が多数。今後、学生や情報サービス系以外の分野にも受験者が広がっていくと思われます。
地域別受験者数は東京、神奈川など都市部に偏っていて、まだ全国的に認知されていないようです。

特徴としては、オンライン受験のため自宅での受験が可能です。そのため参考書を見ながらの回答が可能。しかし120分で226問もあるため、1問30秒ほどで回答しなければならず、いちいち調べていては最後まで回答するのは困難。しっかりとした知識も持っていてスラスラ回答できないと合格にはたどり着けないでしょう。

試験問題の構成
①人工知能全般の基礎知識(時事問題も含む)(2割)
②機械学習、ディープラーニングの技術面も踏まえた知識(6割)
③人工知能の現行の議論(倫理や法律、産業応用など)(2割)
(ブログやツイッターなどの受験者の報告によると、大体このくらいの問題の配分となっています。)

受験者の声
・技術に関して深い知識は必要ないと思って受験したら、実際には参考図書にも載っていないような技術的な問題も出題された。
・実装経験があるエンジニアにとっては技術的な知識問題は楽勝。
・ディープラーニングというよりは機械学習、人工知能全般を扱う感じの試験だった
・人工知能で何ができて何ができないかしっかり把握してほしいという感じの問題だった。
・ビル・ゲイツがどう発言したかなど、「そんなの知るか」という時事問題も多かった。
・初めは資格ビジネスのようなものかと思ったが、試験を受けてみて、試験内容、その網羅性から、協会の本気度が伝わった。
・受験料が高い
(ブログやツイッターなどより)

合格者の声
・人工知能関連の知識を体系的に整理できた
・AIベンダーやエンジニアとの会話が成り立つようになった
・周囲から一定の知識を持っていると認められるようになった
・AI関連の製品や展示会の内容がわかるようになった
・実際に案件が立ち上げられた・ビジネスにつながった
(JDLA公式ホームページより)

その他、「E資格 」「G検定」取得のメリット

・合格者だけが参加することのできるslackのオンラインコミュニティ( CDLE「Community of Deep Learning Evangelist」)に入ることができる。
・合格者だけが参加できる「合格者の会」に参加することができ、そこで成績優秀者は松尾理事長より表彰されます。(参加は抽選で倍率は高め)
・協会認定の「ロゴ」を発行してもらえる(名刺などに使える)

「E資格」「G検定」取得の意義・役割とは

JDLA事務局長の岡田隆太朗氏によると、実は人工知能(AI)の分野でディープラーニングだけが、万能という事ではなく、実際は他のAIアルゴリズムも重要。しかし、飛躍的に精度を上げているのはディープラーニングであり、協会の名前はどうしてもディープラーニングの名前を入れたかった。

G検定により、ディープラーニングを説明できる人を増やしたい。会社の営業さんであれば彼らがディープラーニングについて説明できなければいけません。もし安請け合いをして、「はい予測は100%保証します」なんて言ったら、期待感が暴走し、その後顧客の怒りを買ってしまいます。また経営者の方にも受けてもらいたい。人工知能(AI)のプロジェクトを部下に丸投げするのではなく、自身が人工知能とは何なのか、何ができるのかを知ったうえで、AI事業に取り組んでもらいたい。

E資格については教習所形式にしており、JDlA認定プログラムで研修を受け、実習をやった上で、最後にチェックとしてE資格を受験する形にしたということです。
試験の難易度は、松尾先生が東大で行っている授業がIPAのレベル4だとすると、E資格はレベル3、G検定はレベル1。G検定はITパスポートのように本当にエントリー向けに設定しているとのこと。

E資格、G検定の合格者を2020年までにそれぞれ3万人、10万人輩出するという事で、高い目標のように感じますが、協会の中では、「ケタが違うんじゃないか」、それでも全然足りないという話になっているということで、米国や中国に追いつくための本気度が伝わってきます。

JDLA理事長の松尾豊氏も、Googleには世界トップレベルの技術者が数百人単位でおり、年間投資金額もGoogle1社で1兆円クラスなのに対し、日本は数百億円レベルでしかない。AIの技術者世界トップ300位に日本人は0人、それに対して米国や中国には数百人単位でいる。その技術者を、1人数億円単位で米国や中国企業は奪い合っているような状態。日本は人事制度的にそのようなことは出来ず、全く勝負にならない。日本は「投資額」にしても「人材」にしても戦いすらさせてもらっていない。そのため、E資格とG検定によってAI人材を多く輩出したい。

相当な危機感を持たないと将来、日本の産業のほとんどが衰退の危機に晒される。本気にならないとダメだと松尾理事長は言っています。

まとめ

人工知能(AI)エンジニアになるための必要な資格として「E資格」と「G検定」を紹介しましたが、この資格を持っていなければ、人工知能(AI)の仕事ができないという事では勿論ありません。そしてまだ資格自体が認知されていないのが現状です。しかし少しずつ認知が広がっており、注目されつつあります。

現在、第3次人工知能ブームの中で、多くの人工知能(AI)の情報が飛び交っていますが、必ずしも正しく伝わっているとは限りません。そのために、人工知能(AI)は何ができて何ができないなど、正しい知識を取得するために「G検定」を受験することは一定の価値があると思いますし、実際に実装できるのかを問われる「E資格」も今後は重要性を増してくるでしょう。

それと、エンジニアにとってはエンジニア向けの「E資格」だけ持っていればいいと思うかもしれませんが、それだけでは十分ではありません。技術力だけを持っていても、実際に産業の発展には結びつかないからです。
日本の携帯電話のガラバゴス化がいい例でしょう。

ディープラーニングなどの技術を用いて、日本の産業を発展させるためには、人工知能(AI)を取り巻くさまざまな現状や現場の状況を知り、それをビジネスに応用する力を問う「G検定」と結びついて、初めて産業応用へと結びつき、大きな成功へとつながっていくと思います。そのため「E資格」と「G検定」の2つの資格を両輪として持っていることは重要な意味を持つでしょう。
「E資格」取得者と「G検定」取得者の連携も重要です。特に「G検定」取得者は「技術」と「ビジネス」の橋渡し役も期待されています。

また将来的には、資格保持者数によってその会社の能力が計られ、開発を依頼する基準になる可能性もあります。そのような意味でも重要性をますと思われます。
G検定は、協会の推薦図書がありますが、分厚くて学習するのが大変など、学習に取り組む環境が十分に整ってなかったのですが、最近は推薦図書も増え、協会推薦の「公式テキスト」も発売されました。学習する環境も徐々に整ってきており、受験のハードルも下がっています。E資格の認定プログラムもますます学習する環境が整いつつあります。

エンジニア向けの人工知能(AI)の資格の認知がまだまだ低いということは、周りよりも早く学習できるチャンスでもあり、人工知能に興味がある方は、ぜひ「E資格」と「G検定」の受験を考えてみてはいかがでしょうか。

また、人工知能(AI)の分野は進歩が早いため、現在、「E資格」は年2回「G検定」は年3回、試験が設定されていますから、1年に1回は受験するなど、定期的に受験して知識やスキルをブラッシュアップしていくのもいいでしょう。

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