イマここに生きる!オーガニックオーダーの旅、暦のお話 〈立冬 末候『金盞香 (きんせんかさく)〉
2020年11月17日~21日
七十二候 第57候 立冬末候 『金盞香 (きんせんかさく)』
ここで言う『きんせんか』とは、春に咲くキク科の金盞花のことではありません。
なんと、あの可憐な水仙のことなのです。
金盞とは黄金の杯のこと。
白い6枚の花びらの真ん中に、艶やかな黄色の副花冠を持つ水仙の異名なのだそうです。
水仙は他にも別名を持ちます。
二つ目の別名は、『雪中花』。
水仙が咲くのは11月中頃から3月中頃まで。
寒さ厳しい雪の中であっても美しい花を咲かせるところから名付けられました。
最後はこれ、『ナルキッソス』。
スイセンの学名は、ナルシストの語源である「Narcissus(ナルキッソス)」。これは神話の登場人物の名前にちなんでいます。
あらすじは有名ですが、解釈は諸説あり、なるほど…と深く心にしみるものもありました。
ここでは控えておきますが、ご興味が沸いた方は、知への探索をぜひお楽しみください。
水仙はその楚々とした佇まいから、お正月のお花や、茶花としても好まれますが、毒がありますので扱いには注意も必要です。
ヒガンバナ科なので、ヒガンバナと似ていますね。
肌が弱い方は触れただけでもダメージがあると言われます。
食べるのはもってのほかで、ニラと間違えられたり、球根を玉ねぎと間違える等で、食中毒が何件も報告されています。
菜園の近くへは植えないようにと呼びかけられることも。
また、直売所でニラと間違えて売られてしまったこともあるそうで、ニラを購入しても念の為に香りを確かめるほうが良いかもしれません。
可憐で清楚で毒もあるとは、さぞや古代に生きる人は想像力を掻き立てられたことでしょう。
眺めることしか許されない可憐な美しさとは、いくつものドラマが生まれそうです。
純恋なイメージの香り
簡単ではありませんが、特殊な方法を使えば、この素晴らしい香りの抽出は可能です。
かの有名なシャネルの№5も水仙の香りが決め手とか。
成分的な薬効は調べても出てきませんでしたが、可憐で上品な芳しさは、心と気持ちを調える最高のお薬になりそうです。
サロンのある地域は、水仙が愛され、たくさんの方に楽しまれています。
道端やお庭にも多くの水仙が植えられており、シーズンにはどこを歩いてもなんとも良い香りに満たされます。
わたしは、水仙の香りがこんなにも良い香りだったとは、サロンをこの地に開くまでは実は全く知りませんでした。
ですから、初めてシーズンを迎えたときは本当に驚きました。
歩いているだけで、しあわせいっぱいになります。
実は、五日ほど前に、今シーズン初の水仙が咲きました。
暖かい日が続いていたから?と思いましたが、寒い時期に咲くものですしそれはちがうか??なんて、よくわからずに観察。
気が早くなってしまったかのように、一本だけ茎が伸び、あら?と思っているうちにつぼみが育ち、ある日の暖かな日差しの中で、可愛らしい花を咲かせていました。
香ってみると、たった一輪ですが、本当に良い香り。
今後が楽しみです。
今は、山茶花が満開。
次々とお花が咲き、今もこのあとも、本当に心にしみいる栄養です。
香りの養生
香りの刺激が脳へ伝わるまでの時間は0.2秒。
歯痛や体の痛みが伝わるまでの時間は0.9秒あるいはそれ以上と言われています。
このデータだけ見ても、香りの可能性を大いに感じますね。
元々は感覚的な体験の蓄積で香りを取り入れてきた人類ですが、近年研究がすすみ、仕組みが発表されています。
香りの刺激が伝えられる脳の部位と快・不快を感じる部位は大変近く、故に香りによって人の情動が左右されるということもわかってきました。
様々な香りは、意識しないうちに身体の生理的な反応や心に影響を与えているのですね。
ふと漂ってきた香りで唾液が分泌されたり、昔の記憶が鮮やかに蘇ったり、懐かしい情動に満たされたり、それも一例です。
『直感でピンときた』
というときも、自覚する前に脳が反応してGoサインやStopサインを出しているのかもしれません。
良い香り、心地よい香りに触れることは、ただの趣味や娯楽に止まらず、
心身を整えていく、とても大切なことと言えますね。
ですから、オイルトリートメントをするときに、精油をベースオイルに混ぜなくても、アロマポットで香らせたり、枕に少したらしておいたりするだけでも、心身で愉しめるということ。肌刺激が気になる場合等に、無理に肌に付けなくても良いのです。
直接つけることで有効成分を取り込むという考え方もありますが、芳香成分は、鼻の奥の部位から脳へ、電気信号に情報を変えて脳へ送られていきます。
仕組みから想像するなら、場合によっては肌に直接つけるよりも、香りを楽しむ方がベストということもありそうですね。
covid19の影響で、直接触れる施術の機会が減ったとしても、アロマトリートメントのコアな魅力を考えるなら、様々なサービスのかたちがみつかりそうな氣がします。
(参考図書:アロマテラピーの教科書 和田文緒著 株式会社新星出版社)
20201119