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ぼっち・ざ・ろっく!一気見した話

お久しぶり。僕だ。
今回はぼっち・ざ・ろっく!を一気見した感想を書いていくよ。
と言っても、実際に視聴したのは去年の12月ごろなんだけど。
全然別の事を記事に書こうとして久しぶりにアプリを開いたら、下書きのまま1年近く眠っているこの記事を発掘してしまった。
このまま永遠に眠らせておこうかとも思ったが、折角だし加筆修正して野に放つこととする。

最初に結論から言ってしまうと、人生で一度でもギターなどの楽器に触れた、あるいはバンドを志した人はこのアニメを見るべきだと思う。
「◯◯べき」という言い方はあまり好きではないのだけれど、今回ばかりはどうか許してほしい。
陰キャならロックをやるべきだし、ロックが好きならぼざろを見るべきなのだ。
というわけで感想を綴っていく。
例によってネタバレしかないので容赦されたし。


※この記事は既にぼざろ視聴済みの方々向けの記事ではあるが、未視聴でもこの記事を読もうと思ってくれた奇特な貴方の為に、簡単なキャラ紹介をしておく。視聴済みの貴方はスルーして次の見出しに飛んでほしい。

・後藤ひとり
主人公。リードギター。通称『ぼっち』。挙動不審で心の声がでかい筋金入りの隠キャだがギターがとても上手く、ギターヒーローという名前で演奏動画を投稿している。人前で演奏することが苦手で実力を誤解されがちだが、ここぞ!という土壇場でポテンシャルを発揮してメンバーを引っ張っていくような演奏が出来る勝負強さも持っている。

・伊地知虹夏
結束バンドのリーダー。ドラム。頭にドリトスが刺さっているが結束バンド内では一番の常識人にして苦労人。ライブの直前でギターに逃げられ、途方に暮れていたところで出会ったぼっちに即席でギターを任せてなんとか乗り切った。日常回では大体ぼっちとリョウの介護をしているため心労が絶えない。ギターヒーローに憧れている。

・山田リョウ
顔の良い乞食。ベース。実家は太いが小遣いを全て楽器や機材に使ってしまうため常に金欠。路上の草を食べて飢えを凌いだり、後輩であるぼっちに奢らせたりしているどうしようもない人間だが、演奏力と音楽に対する真摯さは本物。所属していたバンドが悉く長続きしなかった過去から、結束バンドには並々ならぬ思い入れがある。

・喜多郁代
"映え"を重んじる陽キャ。ギターボーカル。通称『喜多ちゃん』。人当たりが良く大抵の事はなんでもそつなくこなす。概ね常識人。リョウに並々ならぬ憧れを抱いており、同じバンドに入るためにギターが弾けると嘘をついた挙句ライブ直前で逃げ出すという大戦犯をかました黒歴史を背負っている。結束バンド結成後はぼっちからギターを教わっている。

転がる僕

「失った青春を取り戻しませんか?」
或る日、職場の後輩から唐突にこんなことを言われた。
なんだそれ。んなもん俺だって出来ることなら取り戻してえよ。でもできないままズルズル生き続けた結果が今のダセェ俺なんだよ。
などと内心荒れながらも「どういうこと?」と続きを促した。
曰く、まんがタイムきららで連載している『ぼっち・ざ・ろっく!』という漫画がアニメ化し、大層人気らしい。
その話を聞いた当時は「あーはいはい、またけいおん!とかそれ系列が流行ってんのね。流行は繰り返すしなぁ」と、あまり関心を持っていなかった。
よくある日常系萌えアニメが、よくあるカルト的な人気でインターネットを騒がせているだけだろうと。
「いやいや滅茶苦茶面白いんで見てください!」と後輩から猛プッシュを受け、然程期待はしていなかったがとりあえず頭の片隅に入れておいた。

全12話。
その全てを見た後に、僕はそれが浅はかな決めつけだったと思い知ることになる。

アニメと孤独と暗い部屋

後輩とのそんなやりとりからしばらく経った。
見かけない日が無いほどX(旧Twitter)のタイムラインに溢れかえるぼっち・ざ・ろっく!のファンアート。
絵描きの端くれである僕は、今何が流行っているのかを漠然と知る為に公式アプリの所謂おすすめタブを眺め、知らない人のバズったイラストを見たりすることがある。
Xの公式アプリはとても見づらいし、広告ツイートや赤の他人の毛ほども興味のないツイートが流れてきたりするので控えめに言って最悪だが、流行りを知る上では使えないこともない。
そういえばサードパーティアプリが軒並み禁止になって久しいですが、皆様はいかがお過ごしですか。
僕は本当にいい加減にしろよと思っています。

閑話休題。
そんな巷に溢れるファンアートを眺めているうちに、僕の中でぼっち・ざ・ろっく!という作品に対する興味が少しづつ湧いてきた。
僕は元々ロックが好きだし、かつてはほんの少しだけバンドもどきのような活動をしていたこともある。
結局はライブどころかドラム担当を捕まえることすら出来ず、なんやかんやでその集まりは自然消滅したわけだが。
多少は楽器を触っていたし、けいおん!は肌に合わなかったけどたまにはこういうアニメを見ておくのもいいかもしれない。
そんな気まぐれと有給休暇が上手く噛み合い、視聴する運びとなった。

僕はアニメに関して偉そうに語れるほど造詣が深いわけではないが、1クールのアニメだと全12話前後の中で凡そ2〜3回程度の起承転結を繰り返すような構成になっている事が多い。気がする。
そして、大体のアニメは3〜5話辺りで1回目の転と結が、要するに最初の見どころが来る。
故に、1話から具合が悪くなるほどつまらない作品だったとしても、とりあえず3話辺りまではノンストップで見ると決めている。魔法戦争は本当に辛かった。

話を戻す。
そんなこんなで、僕の見ていたぼざろにも"最初の山場"が来た。第5話、虹夏の姉でありライブハウス『スターリー』の店長である星歌に、ライブ出演を賭けたオーディションとして演奏を披露するという、視聴者目線的には4人揃っての初めての演奏回だ。
淡々と曲が進んでいくが、みんなどこかぎこちない。ぼっちは演奏を続けながら、自分も含め全員まだまだだと痛感する。それでも、こんなところで終わりたくない、みんなでバンドを続けたい!と強く願い、心を決めてサビ前で力強く足を踏み込んだぼっちの演奏は普段のキレを取り戻す。
正直、鳥肌が立った。熱い。ティーンエイジャーたちの等身大の青春が、熱を帯びて僕に襲いかかってくるような、そんな錯覚すら覚えた。
そしてオーディションは無事合格。結束バンドは大切な一歩を踏み出し、僕はこのアニメの面白さを確信した。

たいとる・ざ・こーる

話は進み、来るライブに向けチケット販売に精を出す4人。家族以外人脈が無いぼっちはノルマに苦しみながらも、妙な縁で出会った酔いどれバンドマン廣井きくりとの即興路上ライブを行ったり、ファンを獲得したりと奮闘していた。
ちなみに僕はこの廣井きくりというキャラがぼざろのキャラで一番好きなのだが、話が脱線して永遠に帰ってこなくなりそうなので割愛する。

そうして迎えた第8話。初ライブ回である。
ライブの日程が台風上陸とモロ被りしたせいで、チケットを買ってくれた後藤家の人たちをはじめとするお客さんの殆どがキャンセル。まばらな客足と重たい雰囲気のままライブが始まる。
いまいち盛り上がらない場の空気に呑まれる結束バンド。お世辞にも息が合っているとは言い難い演奏に、観客から心無い言葉も聞こえる。
僕が演者だったら泣きながら逃げ出してしまいそうだ。この子たちが何をしたって言うんだ。
最悪な空気のまま一曲目の演奏が終わり、なんとか盛り上げようと頑張る喜多ちゃんと虹夏の拙いMCがシベリア並みに冷え切ったライブハウスに虚しく響いた。
ここが挫折回か。もう駄目かもしれない。
そんなお祭り男も裸足で逃げたくなるようなお通夜ムードで視聴者含め全員の心が折れかけている最中、一筋のストロークが空気を切り裂く。

来た────。
立ち上がるのはやはりギターヒーロー。
ライブハウスは。結束バンドは。視聴者は。
お前を待っていたんだ、後藤ひとり。

響き渡るギターソロ。
諦めるにはまだ早いだろうと言わんばかりに独り奮闘するぼっちの姿に、風前の灯火だった結束バンドは再び燃え上がる。
一曲目のちぐはぐでバラバラな音から一転、二曲目のガッチリ噛み合った引き込まれるような演奏に、また鳥肌が立った。
なんなんだこのアニメは。
結束バンドの面々の和やかな空気とライブ後の高揚感、そしてこのままでは全身鳥肌人間になってしまうかもしれないという僕の懸念とともに第8話『ぼっち・ざ・ろっく』は幕を閉じた。

客席に君が降る

文化祭に出演することになった結束バンド。
クラスの出し物がメイドカフェになったり、緊張からぼっちが逃げ出したりと紆余曲折あったが、無事文化祭ライブが始まる。
全員が笑顔のまま、順調に一曲目が終わる。そんな中、ぼっちだけはどこか落ち着かない様子を見せる。
ほのぼのとしたMCとともに二曲目の演奏に入る結束バンド。
ぼっちは自身のギターの違和感、1弦と2弦のチューニングが異常に合わない事に焦りつつもなんとか演奏を続けるが、遂には1弦が切れ、更にペグも壊れてしまう。
もうすぐソロが来る──パニックに陥るぼっち。
絶体絶命の中、なんと喜多ちゃんがアドリブでギターソロを披露する。
今までギターを教えてきた喜多ちゃんの成長に驚きつつも、挽回すべく咄嗟にボトルネック奏法(スライドギター)で乗り切るぼっち。
鳥肌。君たちは僕をどうしたいんだ。
何度も結束バンドを救ってきたギターヒーローのピンチを助けるのが、今までぼっちがギターを教えてきた喜多ちゃんとか熱すぎるだろ。
この瞬間、彼女もまたギターヒーローだったのだ。

スライドギター英語: slide guitar、別名:ボトルネックギター)は、ギターの奏法のひとつ。スライドバーと呼ぶ棒を指に装着または持ち、がフレットや指板から浮いた状態のままバーを任意の位置で弦に接触させ、ピッキングして発音する奏法である。

Wikipediaより引用

二人のアドリブもあって二曲目も無事終わり、歓声に包まれる体育館。
感極まった虹夏が感謝の言葉を叫び、会場のボルテージは最高潮に。
ここで喜多ちゃんから「後藤さんも何か一言!」とマイクを向けられパニックに陥るぼっち。
これは喜多ちゃんが悪い。コミュ障は事前に台本を作っておかないとまともに喋れないのだ。陽キャの皆さんは陰キャが思っているほど酷い奴等ではないし普通に優しいが、すれ違いから時としてこのような事故が起こる。
地獄への道は、常に善意で舗装されている。
マイクを向けられ、何か面白いことをしなきゃ……という強迫観念に駆られた陰キャが上手く行動できる筈もなく、ぼっちは観客席にダイブしてそのまま気を失い、保健室へと運ばれたのであった。

アフタートーク

その後、喜多ちゃんとぼっちの心の距離がグッと近くなったり、ギターが壊れたぼっちのために結束バンドみんなで楽器屋に行ったりして物語は穏やかな幕引きを迎えるわけだが、文句無しで最高のアニメだった。
視聴前の浅はかな自分をグレッチで殴りつけたい気分だ。
ぼっち・ざ・ろっく!という作品を教えてくれた後輩には感謝してもし切れない。
ロック好き、特に学生時代にバンドをやっていた人には間違いなく刺さる作品だと思うので、是非とも見ていただきたい。
最近は結束バンドとしての楽曲リリースも著しいので、ロックが好きな方はそちらも聴いてみてほしい。

ただ一点、僕のように灰色の学生時代を過ごし青春をドブに捨ててきた人は、視聴後に後悔で一日寝込む覚悟をしたほうがいい。
青春は用法・容量を守って程々に摂取しよう。


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