福岡旅行記2024夏 中編
というわけで2日目。まずは北九州を目指す。
福岡の地理を知らない人のために説明すると、福岡市と北九州市はどちらも福岡県内にある政令指定都市であり、ライバル関係にあって、とても仲が悪いと言われている。例えば演劇などでも、北九州市が東京から招聘した人気劇団は福岡市には呼ばれることはない。もちろん逆も成り立つ。私のやっている劇団あひるなんちゃらは呼ばれてもないのに自主的に福岡市で公演をうったことがあるので、おそらくすでに北九州市の芸術関係のブラックリストに載っていて、今後、どんなに人気劇団になっても北九州芸術劇場には呼ばれることはないだろう(いちおう書いておきますが、半分以上は妄想です)。冗談はさておき、本題に戻ると、そんな2つの市の中心地、JRの駅で言うと博多と小倉は、電車で1時間半くらいかかる。福岡市の繁華街である天神から小倉までの高速バスもあるのだが、そちらでも1時間半くらいかかる。新幹線だと20分くらいでついてしまうが、もちろんそのぶんの料金がかかる。といっても差額は1000円もしないので大人は新幹線で移動する。
もちろん私はバスで向うことにした。大人の財力を持ち合わせていないというのもあるが、それよりも、もうちょっと寝たかったのだ。
天神のバスセンターで切符を購入。
バスに乗り込もうとすると、車内にはいきなり見慣れた交通系ICカードをかざす機械が設置されており、みんなタッチアンドゴーしている。え?俺切符なんだけど?どうしたらいいの?PASMOタッチしたらおかしなことになるだろうし、切符タッチしても意味ないし。とプチパニックになり、最終的になんとなく切符を見せながら運転手さんの横を通過し着席。
そしてバスは出発した。寝るためにバスにしたのに、さっきのはあれで本当にあってたのだろうかと不安で、全然眠れない。しかたないので、景色を眺めたり、スマホをいじったりして過ごす。ちなみに西鉄バスはバス内にWi-Fiが飛んでいて無料で使えた。東京ではバスとかほぼ乗らないので、東京のバスがどうなってるのか知らないが、素晴らしいサービスだと思った。
一睡もできないまま、バスは順調に疾走し、やがて高速道路を降りて、それからモノレールの線路の高架下の道に入った。ああモノレールだ、懐かしいな。このモノレールは小倉駅から出ているやつで何度も乗ったことがあるので、駅名を見ればあとどれくらいの距離なのかわかる。もう徳力嵐山口か、あと2駅で守恒で、その次が競馬場だったから、ほぼついたも同然だな。などと、地元民ぶったようなことを思った瞬間に、天罰だろうか、猛烈な強烈な激烈な尿意が。昨日あんなに酒を飲んだのによく考えたら起きてからまだトイレに行ってなかった。これはヤバい。あわててWi-Fi様の力を借りて、徳力嵐山口から小倉まで正確には何駅だったか調べてみる。正確な情報を知って、心を落ち着けるんだ。
10駅もあるヨ!怖い怖い!えー!本当に?そんな遠かったん?徳力嵐山口が?ていうか徳力嵐山口の読み方も知らねえけど?とくりきあらしやまぐちであってる?あ、あってるんだね。違う違う、そんなことより、おしっこ漏れそう!
2、3、5、7、11、13、17とプッチ神父(ジョジョ6部)のように素数を数えて心を落ちつけることにより、なんとか人間としての尊厳を守ったまま小倉駅に到着。危なかった。あ、切符は、降りるときに小銭とか入れるところに入れるという昔ながらの方法で問題なかったと思われます。
とりあえず駅にダッシュ!わ!俺の知ってる小倉駅じゃない!品川駅みたいになってる!すげえ!という感動を味わう余裕もなく知らない駅ビルに飛び込んで用を済ませた。
すでに待ち合わせの相手から「ラフォーレのあたりにいる」との連絡を貰っていたので、北口の方に向かう。小倉にはかつて、ラフォーレ原宿小倉、という、とても正気の人間が名付けたとは思えないラフォーレがあったのだけど、逆にダセえよ、としか言えない名前だったからか、今は別の何かになっていて、でもみんなラフォーレだったということはしっかり覚えていて、黒歴史は黒ければ黒いほど消えにくいんだよ、とビルそのものが物語っています。
そんなラフォーレらへんの道で待ち合わせていたのは、うちの劇団あひるなんちゃらのマスコットキャラクターひるちゃらを描いてくれているCとEと、その息子。
この間のチラシの絵などのお礼を言ったり、作成したひるちゃらグッズを渡したり、次回公演のほうもなにとぞよろしくという話をしたりするためにアポイントをとっていたのだった。とりあえずEの運転する車に乗って出発。
もうすぐ2歳になるという息子氏とは初対面だったが、CとEはまだ単語しか喋らない息子に私の名前を記憶させておいたらしく、ガキが意味もなく何度も何度もしつこく私の名を呼び続けやがるので「この野郎!なんでも買ってやろうか?!」という初孫に対するおじいちゃんのような感情をいだいてしまったのだった。幸い車は玩具店などではなく、うどん店、例の北九州ではおなじみの資さんうどんに到着したので、お子様になにかを買い与えたりすることなく美味しくうどんをいただいた。
資さんといえばぼた餅でしょうが!という現地人の方もいると思うが、ちょっとぼた餅の気分じゃなかった。というか、昔からずっとぼた餅の気分になったことがなく、食べたことがない。歳を重ねて、今日こそはぼた餅の気分になるかと思ったが、ならなかったのだからしかたがないし、また次に北九州に来た時のための宿題としておこう。いつかは食べたいと本気で思ってはいるのだが。
それから、CとEのおすすめの海へ。
最高じゃねえか!「いつもは夕方に来とるんやけどね〜、やっぱ昼間だと影がないね〜」とCの言う通り、景色は最高だが体感温度などは灼熱地獄であり、あんまり長くいたら死んじゃうな、と、お気に入りの車のおもちゃを躊躇なく海水にぶち込んで遊んでいる1歳児を見ながら思った。もちろんCもEもそう思ったようで、早めに退散することに。ちょっとまたトイレ行きたいし(Eは、海でしちゃえば?、って言ってたけどさすがに遠慮した)、車に戻ろうとすると、1歳が帰りたがらない。おい!一番ヤバいのはお前だぞ!あとお前のお気に入りのおもちゃの寿命も海水によってどんどん縮まってるぞ!、と、本人に理解できるわけないけれどもつっこまずにはいられなかった。
そして車は、彼らの家へ。暑かったでしょ、シャワーでも浴びなよ、というお言葉に甘えてシャワーをいただく。あがったらアイスまで振る舞われ、食べ終わったら床に寝転がり、あやうくそのまま昼寝しそうになったのだが(数秒くらいは落ちてたかもしれない)、気を取り直して、劇団の人としての仕事をまっとうする。それからまた横になって、横になったままお子様と戯れたりしつつ、だらだらした時間を過ごさせていただいた。スーパーリフレッシュできました、CとEよ、ありがとう!
というわけで、あっという間に次の予定の時間が近付いてきたので、車でまた小倉駅まで送ってもらう。途中で、次の待ち合わせ相手から連絡があり「ラフォーレらへんにいる」とのこと。みんな好きだなラフォーレが。
ラフォーレらへんでPちゃんと合流。今度はPちゃんの車で出発。とある住宅街を目指す。
目的は「タカシという共通の友人(東京在住)の実家に突然訪問しタカシの母とツーショット写真を撮影、それをいきなりタカシに送りつけ驚かせる」という他愛のないお遊びだ。
もちろん何度も行ったことがあって両親とも面識があるから成立する遊びなのだが、普通に全然道がわからない我々。なんとなくで行けると思ったのだが、最後に行ったのが25年前とかなのでさすがに無理だった。はっきりいって最寄り駅までしかたどり着けなかった。
自力で行くのは無理だとわかり、今度は、昨日念の為に、私を泊めてくれたK(タカシの兄の中学の同級生、超近所にKの実家もかつてあった)にGoogleマップを見ながら教えてもらった住所情報をカーナビに入れてゴー。なんとそれが間違っていて、坂の上の住宅街の中で完全なる迷子になる。おい!あいつ!自分の家の近くなのに間違えるか?普通。あの野郎!さてはワザと!そもそもあいつは昔から…、などと、ひとしきりKの悪口で盛り上がる。
さて、人のせいにしてても始まらないし、私の企画に軽量化されたミニ四駆くらい穴が空いていたのが悪いわけで、この状況をなんとかしなければならない。いや、とっとと帰って飲み屋に直行しても問題はないのだけれども、このまま帰るのは悔しいので、とにかくタカシ以外のいろんな人に連絡して住所をゲットし、なんとか到着。あーそうだこんな感じの建物だったわ。懐かしい。
しかし、いざ、呼び鈴を鳴らすとなると、とたんに緊張してくる。だって他人の実家だよ?
ん?この状況、以前にも味わったことがあるな。そうだ、昨日の夜だ。再放送が早えよ。などと関係ないことを考えている間にPちゃんも車を降りて準備万端、早く押せよ、という顔をしている。意を決して呼び鈴を鳴らした。
数秒の間。
タカシの母「はい、どちらさま?」
私「あの。東京からきました。関村と申します。あの。タカシくんの友達の。」
タカシの母「…。」
どうしよう。完全に不審人物なってしまった。
P「と、〇〇(Pちゃんの旧姓)です。」
タカシの母「……あー!はいはい!ちょっと待ってね、今行く。」
1人だったらたぶん警察を呼ばれていたな。
そんなこんなで無事、ツーショットの撮影にも成功し、なぜかお父さんとのツーショットも撮れたのでその場でタカシに送りつけた。
あとは酒を飲むだけなので、車を置きにPちゃんの家に行き、Pちゃんの旦那Tにもだいぶ久しぶりに会えたので、なぜかTともツーショットを撮影し、タカシに送りつけてから、居酒屋へ。
Pちゃんと飲みたいという人(先輩B)がいたので、飲み屋の前で合流することにしていた。「せっかくだから誰が来るかはお楽しみにしておこうかね。」「え?誰だろ?オレが知ってる人だよね?(Pちゃんはボクっ娘ならぬオレっ娘です)会ったら腰抜かす?」「や、腰抜かすほどでは。」「えー、誰かなあ。」などと話していたのだけど、実際に会ったら「い、生きてる!」と腰を抜かしていたので、どうやらすでに先輩Bは死んだと思っていたようで、面白かったです。
それから楽しく数時間飲んで解散となったのでした。
まだ書くことあるから、続く。