春の桜に思うこと
この時期はいつも、最後の桜を思い出す。
大学卒業の前日、母と回った私の一人暮らしの街。桜の名所でなくても、桜が点在して、別れと出会いを演出していた。
思えば、初めての桜は、大学入学の時だった。
地元は、品種の違う桜が、1月〜2月に満開を迎える。花びらの舞う桜は、画面の向こうの世界だった。大学図書館の前で桜吹雪が舞った時、私だけがその光景に「初見の感動」をしていたのは、忘れもしない特大カルチャーショックだった。その桜の土地を卒業する時も、「桜の景色も見納め」という感覚で、母と花見散歩をした。カメラ片手に、もう片手は母と手を繋いで、4年間過ごした土地を母に案内した。
あれから、桜を見れない春を過ごしている。
忙しさや土地柄や、別れの寂しさに目を逸らして慌ただしく過ぎる春を、走り抜けているだけの私。
こんな月日を過ごしてたら、私の心はしんでしまわないかと、たまに不安になる、春。
そんな時に、最後に母と見た桜を思い出す。
あの時の心象と、桜の景色を、まだ覚えている。
だから私の心は生きている。そう証明するように思い出す。
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