犬連れヤバ友達と旅行に行った話③

ついに3日目

1日目と2日目は私が運転したため、3日目はヤバ友が代わってくれる事になった。

チェックアウトし、2日目とは別の牧場に向かった。
牧場に行こうと言ったわりには全く動物に近づかず、結局ドッグランで犬を走らせていた。

私とムスメはその間、動物たちに課金し人参などをあげていた。

久しぶりに平和である。
しかし、それも長く続かないのが犬連れヤバ友達のヤバ部分なのだ。

お昼は餃子を食べるため宇都宮方面へ向かった。
ヤバ友はまたしても犬連れOKの餃子屋さんを調べていないため私が探しておいたお店へ向かうことにした。

そして事件はおこる。

お店の駐車場に入る際、左折時に縁石にホイールをこすったのだ。
ガガガガッと嫌な音が鳴り響いた。

私は「えっ!?うそ!?」と今年1番驚いた。
ヤバ友も焦ったのか、駐車の仕方がとても酷いものだった。
すぐさま縁石とホイールを確認したが、縁石はどうもなっておらずホイールの縁が削れていた。
ヤバ友は「ごめん!ごめんね」と謝った。

この車は私が親から譲り受けたものなのだが、名義は親である。
母にLINEで確認したが、特に何も言われなかったため警察を呼んだりすることはなかった。
しかし、修理代云々の話もヤバ友から一言もでてくることはなかった。

空気は地獄であった。


宇都宮には悪いが、せっかくの餃子もよく覚えていない。
餃子を食べ終わり車に乗った直後、追い打ちをかけるかのようにゲリラ豪雨が始まった。

少し話はそれるが、私は旅行前にヤバ友が他車運転特約に加入しているかの確認をしてもらっていた。
基本的に自動加入しているものだが、万が一を考えた。
それと同時に、今回運転する私の車の運転範囲についても確認した。
年齢や範囲、すべて満たしていた。

その話をしていたにも関わらず、ヤバ友は「ごめんね」だけで済ませたのである。
先に言っておくが、ホイールを擦ったことに関しての謝罪は後にも先にもこの1回である。

旅行が終わったあと「楽しかったよありがとう」LINEにも、書かれておらず忘れ去られた事故となった。


車に関してはレンタカーを借りる選択肢もあったが、犬連れ(しかも中型犬)と子連れという微妙な組み合わせに難航した。

もちろん、車を出すということは何かあった時に覚悟を持っていたがまさか本当にぶつけるとは思っていなかった。

言っておくが、私の車はトヨタのタンクである。軽自動車より少し大きいくらいのコンパクトカーだ。
これをぶつけるヤバ友は免許返納を考えるレベルだと自覚してほしい。
ヤバ友はホンダのSUVに乗っているが、この前フェンスに突っ込んだらしくバンパーが割れていた。

ヤバ友の方から「修理代だす」と言われたら、私は「気にしないで」と答えられていた。しかし、答えさせてもくれなかった。

それでも問い詰めることなく今をすごしているのも、私の父もスポーツカーを友人に貸して湖に突っ込み沈んだというエピソードを持っているからかもしれない。
だからかわからないが、それよりはマシという謎の包容力が私には生まれてしまったのだ。


話が逸れて申し訳ない。

結局ゲリラ豪雨にあったため、行きたかった道の駅は諦めることにした。

その代わり、急遽佐野のプレミアムアウトレットに寄った。
無計画だったため何があるか分からない状態。しかも、当たり前だが店内は基本犬は不可だ。

私はまずはじめに夫の大好物であるリンツのチョコレートを購入し、あとはフラフラと歩いた。

X(旧Twitter)で先程投稿したが、ヤバ友は犬のおやつなどを売っているところがないかと調べ始めた。
私は犬関連のお店には興味がなかったため、ヤバ友が調べ終わるのを待った。

GODIVAの近くにあるらしいと言うので向かうもそれらしいお店は無い。
私はお店の名前を聞いた。
ヤバ友は「テンピュール?」と答えた。
どこかで聞いたことがある。

私は目線を上げ、看板を一つ一つ確認した。
あった。テンピュール。

近づくと、そこには枕があった。
一瞬何が起きたか分からなかった。
でも直ぐに理解した。

「ここ……ペットじゃなくてベッドじゃんw」

やばいwwwどんな見間違いだよwww

笑いが止まらなかった。
今回の旅行で1番笑ったと思う。

振り向くと、うしろにいたヤバ友はチベットスナギツネになっていた。
私は必死で口角を下げようとした。だが無理であった。

大爆笑していた私をヤバ友がどう思ったかはわからないが、もう嫌われても何も感じない域に達しているため、テンピュールに対してのドラケンの召喚も諦めた。

正直、このエピソードを笑い飛ばせない人間とは今後も友達になれないとすら思った。
私が同じことをしたら3日は笑えるし、夫に話したら水曜日のダウンタウンを見てる時くらい笑っていた。

そして、今回テンピュールは被害者である。
勝手に勘違いされ期待され絶望されたのだ。
私は二度とテンピュールの名を忘れることはないだろう。
それを確信させるかのように、先程テレビCMが流れた。

その後、何事も無かったかのように帰路に着いた。
帰りの車の中は9割無言であった。
途中、埼玉の辺りで夕日がとても綺麗だった。
その旨を話した直後にシャッター音がしたので、「上手に撮れた?」と聞くと「犬だけを撮った」と言われた。
もうなにを言えばいいかわからなくなっていた。
でも、ムスメは幸せそうに眠っていた。

【完】


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