「美術館女子」の跡地
過去女性向けで炎上した広告など軒並み削除になってる関係で、今回ももしかしたら削除になるかも…とは思っていましたが、案の定削除になりました。
薪をくべた側として、関連記事も読んでみて、振り返りを書いておきます。
予め言っておきますが、勝った負けたの話ではありません。
「美術館女子」の跡地
本ページは公開を終了しました。次回以降の連載については、さまざまなご意見、ご指摘を重く受け止めて、改めて検討していきます。
グレーをベースにタイトル以外何もないページ。
わざわざ、スライドさせると公開終了のお知らせ。
「どうして、すぐ見えるようにトップページに載せないのか」とか疑問が浮かんだり、どういう意図なのか勘繰ってしまう。
関連記事を読んで振り返る
☑︎ 「美術館女子」は批判のために公開終了
☑︎ コロナ禍で客足が減り焦っている美術館
☑︎ 企画展が遅延や大混雑ビジネスモデルが成り立たなくなった事に焦る読売新聞
終了のお知らせや、分析などを掲載した記事を抜粋してみました。
公開終了となったウェブサイトには、「本ページは公開を終了しました。次回以降の連載については、さまざまなご意見、ご指摘を重く受け止めて、改めて検討していきます」との文言だけが記載されている。また美連協ウェブサイトの「新着情報」からも、「美術館女子」は削除されている。
とりあえずお詫びして無かった事にする気満々を感じる。
連載が違う形で始まらない場合は本当に火を消しただけ…何も考えなかった可能性を考えてしまいます。
本企画は、地域に根ざした公立美術館の隠れた魅力やアートに触れる楽しさを再発見していくことを目的として、読売新聞社と美術館連絡協議会が始めたものです。新型コロナウイルスの影響で国内の美術館が一時休館を余儀なくされましたが、アート作品だけでなく、建物を含めた美術館の多様な楽しみ方を提示し、多くの方に美術館へ足を運ぶきっかけにしていただきたいと考えました。今後のことについては、様々なご意見、ご指摘を重く受け止めて、改めて検討する方針です。
「建物を含めた美術館の多様な楽しみ方を提示」とは言いつつ、全然多角的な視点が含まれてなかったので、多様っていうならグラビアオンリーの時点で無理って気付いて欲しかった…。
「『美術館女子』からは読売の必死さが伝わってきます。日本ではメディアが美術館や博物館の企画展スペースを借り、主催者となって『美術展』を開催してきました。その日本方式の主軸のひとつが読売新聞です。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で、全国の美術館、博物館が長い閉館を余儀なくされています。もちろん読売の関わる美術展も大きな影響を受けており、その最たるものが2020年春の目玉と期待されていた『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』(国立西洋美術館)です。本来3月頭に開幕するはずがかなっていません。
幸いにも今月18日に改めて開幕、大阪にも11月に巡回と発表されましたが、大きく異なるのは今後は入場が日時指定制になることです。これまで美術展の大混雑はいわば当たり前でしたが、これからはお客を会場内にめいっぱい詰め込んで、入場料を稼ぐビジネスが成立しなくなる」
それゆえに、とにかく人々の関心を美術館へ向けたいということか。古賀氏は続ける。
「読売が事務局となっている『美術館連絡協議会』に名を連ねる150の公立美術館も、事情が苦しいのは同じでしょう。ただし、観る側にとっては良い面もあるのです。開館後にはソーシャルディスタンスを取りながら、以前よりも落ち着いて名画や名作を見ることができるでしょう。また業界の誰もが疑問に思いながら続いてきたしくみや慣習も、きっとこの機に見直されていくでしょう」
わざわざ美術館を大混雑にさせていたのは、やっぱりそういうビジネスモデルだったんだな…と判った回。
勿論、各作品には高額なレンタル料だったり管理維持費がかかるだろうから、気持ちはわかるけど、鑑賞者に対しては「観れるだけ有難いと思えよ」みたいなモデルなのでやっぱりどうなんだろうね…と思ったり。
現代美術の作品が「わからない」という経験は、「掛け算や割り算を知らなかったので、単なる記号の羅列にしか見えなくて方程式が解けない」経験と似ています(繰り返しですが、「単なる記号の羅列」があまりの勢いをもって観客を圧倒してくることもあります)。
しかしながら、「映え」が推奨される今回の企画では、作品の理解は後回しにされ、「ここでは掛け算と割り算が必要ですよ」という丁寧なエクスキューズもなされないまま、「鑑賞」は「感動」の前に空中分解してしまったみたい。
結果、「映え」とジェンダーバイアスだけが残る……という悲しい事態に。
結局、企画はまだしも、表現された内容とマーケティングの不一致が甚だしくて、欠点ばっかりになってしまったのはわかる。
現代美術のハードル
☑︎ 良いと思うか、圧倒されるかが感性任せ過ぎる
☑︎ わからなさゆえのハードルにフォローが必要
☑︎ インスタ映えは映え作品に任せて欲しい
私も現代美術は文脈がわからないと理解できないし、一発で良いと思えるか圧倒されるかは賭けに近いので結構苦手です。
しかも映えかどうかと言われると、そもそもアイドル自体が映えの概念に近いと思うので、アイドルのゆいちゃんがいない状態で映えスポットなのかと言われると、わからないです。
初心者向けという割には、個人の感性任せで理解や面白く無かったときのフォローもなくて投げやり感はあったかも。
現代美術は解説されても全く掴めない事もあり、にわか勢としては敷居の高さが結構強く感じるので、多分もっと丁寧なアプローチじゃないと厳しそう。
しかもインスタ映えって言ってもちゃんと真似出来るようなハウツーがないと、結句ハードル高くて意味ないです。
インスタ系メディアのマーケティングもそうですが、適度な「真似できそう」も共感性に含まれると思うので、プロがプロの機材で撮っちゃうとイマイチなんですよね。
(だってスマホで適当に撮って映えるなんて事、そういう映え用の展示じゃないと無理だから…)
だからアイドルだけ置いて映えでしょ?可愛いでしょ?みたいなの無理がある。
映えを意識した作品はたくさんあるし、そういう映え向きのスポットや作品を丁寧に地道に丁寧にフォーカスして欲しい。
結局、「美術館女子」は風呂敷を広げ過ぎ
☑︎ 地域密着型アイドル推すなら「美術館AKB」を掲げればよかった
☑︎ 変に意識高い系を装うからマーケティングに失敗した
☑︎ 大衆向けは割り切って、わかりやすいパッケージが必要
AKB48 チーム8は各都道府県47人のチームで(多分)地域密着型アイドルです。
メンバーは、全国47都道府県で開催された〈AKB48 Team 8 全国一斉オーディション〉によって、
各都道府県から1人ずつ選出された47名。地域に密着した活動で、ファン一人ひとりの心にたくさんの元気を届けます。
なので東京の回にゆいちゃんが選ばれた事はなんの不思議もありません。
むしろ、地域密着密着型を謳っているチーム8で、何故「美術館AKB」を看板に掲げなかったのかが不思議です。
素直に「美術館AKB」を名乗った方がキャッチーだし、マーケティング対象もわかりやすいし、もっとポップなAKBっぽいパッケージに包んで興進したほうが圧倒的に拗れなかったはずです。
「美術館女子」にしてしまった事で、地域密着型アイドルの面は飛んでしまったし、元々のマーケティング対象と差がありすぎるワーディングをした事で、舞台になった現代美術が度々題材にしてきた差別意識とか、美術・芸術の闇とモロにかち合ったのではないでしょうか。
そもそも、マーケティングでは必要以上に粉飾すると屡々痛い目に遭います。
素直に「美術館AKB」を推さず、「女子」という使い所が難しい単語を使用して創語してしまったり、現代美術を舞台に選んだ挙げ句、小説っぽいものを絡めて格調高さを演出したり、俗になりきれなかった事が敗因だと思います。
批判でゆいちゃんの仕事潰したって叫ぶヲタは、なんで「美術館AKB」を堂々と掲げてもらえず「美術館女子」にされたかよく考えた方がいいと思うし、AKBがそれだけの力を認めてさえもらっていれば、わざわざ「美術館女子」みたいな余計なパッケージされなかったんじゃないの?と思ってます。
私は、有名な作品をバックに主役はゆいちゃんを推していくのなら、それに見合ったパッケージで売り出せなかった編集の落ち度だと思ってます。
今回、薪になった感想
☑︎ 更地になったことで「美術館女子」のエンパワーメントのなさを実感
☑︎ 「女子」「男子」の利便性に引っ張られない戦略を持って欲しい
☑︎ 今回はたまたま「〇〇女子」に嫌がってる人達が可視化されただけ
☑︎ イエスマンしかいない業界は滅びるだろうし、貧乏人黙れは権威主義
今回の炎上では、完全に薪になった側ですが、消された事で「美術館女子」に込められたエンパワーメントなんて結局何もなかったんだな〜ってガッカリしています。
正直、「〇〇女子」を持ち出すなら、世の中に圧倒的にプラスになるようなエンパワーメントが欲しいんですよ。
そもそもジェンダーレスだったり、ジェンダーニュートラルみたいな概念が出てきてる時代に「〇〇女子」「〇〇男子」なんて、よほど強烈な陽のエンパワーメントがない限りマーケティングで使う意味はないです。
(男女をつけると)対象の半分が削ぎ落とされるから便利って言うけど、その便利さにかまけてターゲット分析を疎かにするマーケターを信用出来ません。
「〇〇女子」「〇〇男子」みたいな言葉を使わず、いかに価値観を表現するか、と言ったテクニックもブランディングやマーケティングの基本になりつつあるのではないでしょうか。
(「雌」「ガール」を連発してる某雑誌はあえて「女」に拘って尖ったマーケティングをしてるので、それぐらいの勢いがなく批判にも負けるなら、使うだけマイナスの施作ワーディングだと思います)
「業界のことを考えるなら黙ってて欲しかった」みたいな言説をよく目にしたけど、それってめっちゃ閉鎖的だし、イエスマンしかいない業界なんて、ひっそり離れるしかないんだから、むしろ衰退するよね?
ゆいちゃんの写真を見て、行きたいと思った層の気持ちは否定しないけど、公共性とか教育機関としての一面、現代美術で問うてきたあらゆる問題と比較して、これはこういう視点で好きじゃないって言うことすら出来ないのなら、何のための現代美術を背景にした企画だったんだって感じ。
逆に問うけど、黙ってて改善することある?って感じが半端ない。
今までも「〇〇女子」で嫌な思いをしたり、肩身の狭い思いをしてきたり勝手なイメージから人に笑われたり、嫌だって言ってきた人達は沢山いるよね。
突然可視化されて、フェミとかアンチが沸いたみたいに考えてるんだろうけど、実際は、年齢×性別の昭和的なマーケティング枠に堂々とNOを宣言する人が「アイドル」という光を通して照らされただけに過ぎないと思ってる。
「マーケティングにマズっただけなのに、男女差別とか発想が飛躍過ぎ」って意見も見たけど、「何でマーケティングに失敗したのか」「そこにジェンダーバイアスはなかったのか?」って検証すら出来ないのなら、これからも失敗し続けるだろうし、永遠に人と向き合わないんだろうなって感じです。
あと、「大して金も払ってない貧乏人は黙ってろよ」は究極にえぐい反論だと思いました。
今もだけど、芸術ってそもそも上流階級が嗜むもので、一般庶民にはめっちゃ遠いものだったわけじゃないですか。
美しさの力で民を煽動したり、宗教的な啓蒙を促したり、そういうツールとして使われ歴史の上で、やっと普通の人でも少しお金を払うだけで見れるようになってきたのが現代じゃないですか。
正直、権威主義過ぎて引きます。
(乱暴に言えば、企画してくれる大手は客寄せパンダ的な作品を設置したり、金蔓になる素人を連れてきてくれる有難い存在なんだから阿ろって言ってるのと変わらないと思うんだよね。)
美術館、博物館は公共性を求められているし、少なくても「美術館連絡協議会」みたいな美術館を推していく名前を一緒に出すなら、「教育機関」としての一面も忘れないで欲しいところ。
薪になった側からすれば、マズすぎて燃やさずにはいられない酷すぎマーケティング事例として殿堂入りして、啓発モデルに転じて昇華されて欲しい。
これからの美術館マーケティング
☑︎ 大衆向けは小手先だけじゃなくて、きちんとサービスとして向き合って欲しい
☑︎ どんな表現をするかの前に、どんな媒体と組んでいくかは重要な観点
私は、ライト層っぽく、ミュシャとかウィリアムモリスなど、商業デザインがベースのわかりやすくとっつきやすい展示が好きなんですが(綺麗・可愛い、好き・嫌いを自由に感じられるし、大衆芸術ゆえのわかりやすさが良い)、ああいうのってやっぱり見てすぐわかるキャッチーな大衆感っていうのはインスタ映えに繋がるところがあって、小手先じゃなく大衆向けにひらいていくのはすごく大事で。
よくわかんないけど綺麗そうだから行ってみるポップさって、一部の意識高い系は毛嫌いしてますけど、展示の方法で両方共存させる事は可能だと思うし、ハコとしての美術館というパッケージサービスをもっとアップデートしていく必要があるんだろうなって感じです。
今でも美術館は前庭がめちゃくちゃ綺麗だったり、すごく素敵なスポットがあったりするけど、でも写真撮りづらいとか、タグの付け所がわからんとか、そういう事たくさん積み重なってイマイチ流行ってないように見える。
もっとそういうところを個々の美術館が誘導できるようになっていけば、ピントのズレたマス広告より、もっと予想外の楽しみ方が可視化されるんじゃないか、とか思ったりして。
今回は折角のAKB企画なのに、AKBとしての魅力より、マーケティングや表現のまずさが上回った訳だけど、やっぱりターゲットに合わせたイケてる媒体とコラボしていくのがまず確実かな。
ゆいちゃんはラルムにも出ているから、ゆいちゃん×ラルム×美術館だったらもっと違うアプローチがあっただろうなって思うし、誰と組んでいくかってやっぱりターゲットへの訴求では外せないポイントです。
まとめ
☑︎ 「美術館AKB」としてやり直して欲しい
☑︎ 美術館はもっとマーケティングのプロが入った施作をしてほしい
☑︎ 美術館として前面に出るなら「教育機関」の一面を忘れないで欲しい
今回も結局長々と書いてしまいました…。
批判への批判って全然ありだと思うけど、主張によってはソレって微妙に「美術館女子」企画を後ろから撃ってない?って感じるものもあって、そういう擁護を受ける企画ってちょっと哀れだな…なんて。
(「100万円ぐらい出せないなら口出すな」とかあって、じゃあ何でわざわざ興味も金もなさそうな層へアピールしてんの…その擁護()完全に企画を後ろから撃ってるじゃん)
コロナ禍で焦る気持ちもわかるけど、入場制限がかかったせいか、いつもよりゆったり見れる環境になった気がしたし、これを機にクラファンとかで企画立ち上げて、サービス面の底上げを図って欲しいって思いました。
やっぱり美術館は良いぞ!って啓蒙活動とサービスの向上はセットであって欲しいし、お金持ってる層は持ってるので、クラファンやります!って金持っててウズウズしてる層にアピールするのは良いことだと思う。
今回の企画で散々記事を書いた私がいうのも何だけど、なにより、「ゆいちゃんお疲れ様」って感じです。
決してゆいちゃんのせいで炎上した訳ではないし、ゆいちゃんというアイドルの光がたまたま濃い闇を照らしただけだと思うので、めげずにチーム8としての仕事をしていって欲しいし、また新生企画があれば、再キャスティングされると良いですね!