僕達は。3
食堂の六人掛けのテーブルの窓際に、一人でCランチを持って席に座る。
「鷹博は…単独行動が好きなんですね」
「…まぁな」
「ここ、いいですか?」
「ああ…」
千尋が俺の向かいに座ってくる。
確かに誰かと行動するのには慣れてない。友達いなかったし。
寧ろ俺をノケモノにすることで
クラスの男子の結託が強くなってたみたいなもんだったし。
「よお、千尋~。お、Aランチにしたのか?一緒だな~」
悠樹が千尋の横に座る。
「隣、いいかな?」
「…ああ」
光希が俺の隣に座ってくる。
「あっ、光希くんだ~、ここ座っていい?」
「いいよ」
「やっと飯食えるぜ~~」
「お。トシCランチにしたのか!おれ迷ったんだよな~!」
要人が光希の隣に
稔之が悠樹の隣に座る
一人だけだった六人掛けのテーブルが埋まる。
「賑やかだね」
「…そうだな」
「…安心できるよ」
「…なんで?」
「僕だけじゃ、間が持たないから…」
「…ふっ」
確かに余り俺から話しかけないからか
会話のネタや沈黙に困ってシドロモドロする千尋を何度も見てきた。
…ちょっとは俺も話しかけてみるかな。
「…これ、美味いな」
「…そうだね」
「今度部屋で作ってくれよ。和食得意なんだろ?」
「えっっ、確かに和食は得意だけど白和えは作った事ないよっ…」
「…、残念。」
「…っっ」
「…ふふ」
千尋は困った顔して俯いた。
…、話しかけるのも悪くないかも。
「トンカツいただきっ!」
「ああっ、ゆーき!最後の一切れを~!要人~、頼むよ~、わけてくれよ~!」
「やだよ~、僕は背伸ばすためにちゃんと食べなきゃいけないの~」
「と、稔之、トマトで良ければ残ってますが食べますか?」
「いいのか千尋!サンキュ~!」
「…トマトなんて慰みものになんねぇだろ」
「な、ないよりかマシかと思って…喜んでくれてるし」
ああ、なんて天然なヤツ…
面白いな…。
「稔之くん、中華スープ食べる?僕中華味苦手なんだ。」
「いいのか光希!いただくぜ~!」
「稔之くんは食べれたら何でもいいもんね~」
「食べ物は粗末にしちゃあいかんぞ要人!」
「ふふ。稔之、お父さんみたいですね」
千尋が笑ってる。
「アハハ。食う専門のお父さんはねぇよ千尋~」
悠樹も…
「おいゆーき、キャベツ残ってんじゃん」
「俺生野菜嫌いなんだよ~」
「おまっ…!生野菜に謝れ!」
「じゃあ食べてくれよトシ、ほい」
「そりゃ食うけど!生野菜に謝れ!」
「アハハ。稔之くんの実家は野菜育てるらしいから野菜には厳しいよ~」
要人も…
「すまんトシ!生は勘弁!温野菜は食えるんだけどな~」
「温野菜だって!?なに立派なご婦人みたいな事言ってんだよ!」もしゃもしゃ…
「ふふ、稔之。こう見えて悠樹はここの理事長の息子なんだよ。」
光希も…
「み、光希~やめてくれよ~。照れちまうよ~」
「ええっ!?それってお金持ちじゃん!貴族じゃん!!悠樹くん全然それっぽくないから庶民だと思ってたよ~。」
「なはは。確かにゆーきにはオーラがないもんな~」
稔之も…
「だってオヤジが金持ちでなんなんだって感じだし~、凄いのは俺じゃねえじゃん~」
「悠樹くん!お金は大事だよ!お金があれば何でも買えるんだからね!あぁ、僕んちもお金持ちだったら女の子の服着せられて育つ事なかったのにっ…」
「女の子の服着せられていたのか要人…そりゃ可哀想だな…」
「要人んとこは上に三人ねぇちゃんがいるらしいからな~~。羨ましい限りだぜ~~!!」
「まぁトシはバカだからどこに行ってもモテそうにねえもんな~」
「バカとはなんだゆーき!!」
「バカだろ~!食欲バカ!バスケバカ!」
「うぐっ…!!確かにバスケはバカみたいに好きだし食欲もバカみたいにあるけどっ…女の子には、女の子にはモテたいぜっ!!」
「ふふ…っ」
稔之以外が笑ってる。
みんなで笑うのって、心地いい。
「稔幸、面白いね」
「…そうだな。」
ああ
千尋の笑顔が
みんなと過ごす一時が心地いい
ああ。
…大事にしたい。
みんなの笑顔を
千尋の笑顔を…。
知らなかった…。
俺にも他人を大事だと思えたんだ…。
…知らなかった…。
こんな気持ち、知らなかった…。