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「インサイト」とはなにか
先日、「インサイト」に関する記事を公開しました。
インサイト然り、採用ブランディング、採用マーケティングなど、ビッグワードを自分の言葉で説明できるようにするため、「中学生にもわかるよう説明する」という制約を設け、チームでワークショップを実施しました。ポイントは、専門用語を使わずに概念の本質を捉えること。もうひとつは、中学生という属性を理解した上で適切な表現で伝えることです。
実際にワークショップを行ってみると、想像以上にいろんな気づきがあり、有意義な時間となりました。この体験を踏まえ、今回は中学校生活でありそう?な一幕を具体例としてとりあげ、採用活動におけるインサイトと関連づけてみました。
インサイトの定義
インサイトという概念を理解するために、まず、その定義を明確にしておくことが重要です。先日公開した記事では、インサイトを捉えるために必要な要素として、以下の4つを挙げました。
1. 潜在的なニーズや欲求の発掘
2. 本質的な理解
3. 葛藤の解明
4. 行動変化の促進
これらの要素を踏まえ、採用活動におけるインサイトの定義を次のように設定しました。
「求職者に潜在しているニーズであり、企業が採用活動に活かすことができるもの」
この定義の前半部分、「求職者に潜在しているニーズ」は、上記の1から3の要素を指しています。求職者自身も気づいていない、あるいは明確に表現できていないニーズや欲求を見出し、その本質を理解し、さらにはそこに含まれる葛藤を解明することを意味します。
一方、定義の後半部分、「企業が採用活動に活かすことができるもの」も同様に重要です。これは4番目の要素、「行動変化の促進」に関連しています。インサイトを獲得することそのものが目的ではなく、それを企業の採用活動にどのように活用し、どのような変化をもたらすのかが重要なのです。
中学生にとっての転職とは
では、中学生にとって転職とはなんでしょうか。例えば、あなたが学校で学級委員をしていて、次に図書委員に変わるとしましょう。これは、ひとつの役割から別の役割に変わることで、大人が仕事を変えるのと似たような感覚かもしれません。
次に、この考えを使って「インサイト」について、中学生が遭遇するかもしれない?状況を例に説明していきます。
Aさんは現在、サッカーチームのキャプテンを行いながら、クラスの学級委員も務めています。このクラスは他のクラスと比べて、合唱コンクールや文化祭などの行事でいまいち盛り上がらず、活動に対する熱意が低いのが特徴です。この状態について、クラスメイトからも変化を求める声がポロポロとあがっており、責任感が強いAさんは、クラスの長として何とか雰囲気を変えなければと取り組もうとしてました。
ところがある日、Aさんは担任の先生に学級委員の役割について「学級委員の仕事、もしかしたら合っていないかもしれません…別の方に変わっていただきたいです」と相談を持ちかけました。
先生としては、本人の意思を尊重したいと思いつつ、その判断がしっかりと自分の本音と向き合っているものなのかを確認したく、対話を始めました。
担任:「どうしたの?急に何かあったの?」
Aさん:「うーん、正直、楽しくないんですよね。学級委員を決める時、誰も手を挙げず、すごく気まずい空気が流れていました。サッカー部のキャプテンをしているからか、みんなが期待する目で見ていた気がして…。結局、誰もやりたがらない中で、僕が仕方なく手を挙げたという背景もあり……」
担任:「なるほどね…みんなの期待にこたえてくれて、Aさんに感謝してるよ。でも、どうして楽しくないと感じてるの?」
Aさん:「感謝されるのは嬉しいですが、何かモヤモヤしてて…。サッカー部のキャプテンとしては、試合で勝つためにみんなと一緒に頑張るのがすごく楽しいんです。一方でクラスメイトが期待してくれていると言う割には、みんな協力的ではないんです。何かものすごいみんなと距離がある気がするんです。」
担任:「期待かあ…。ちなみにクラスメイトから何を期待をされていると感じてるの?」
Aさん:「やっぱりなにかしらの変化を求めてるのかなと。現状のふわふわした感じではなく、僕を学級委員にしたということは、サッカー部のように規律があるようにしたいのかなと。」
担任:「なるほど。」
Aさん:「そう思ってたんですが、いざなにかをするために役割分担をしようとするとシーン…となるんです。」
担任:「サッカーと違って、少し孤立してしまってる感じを受けてるのかな?」
Aさん:「孤立…そうですね。サッカーはみんなで一つの目標に向かっているから、困難も楽しい挑戦と感じられるんです。でも、学級委員の活動は一体感がなく、それが苦しく感じることがあります。」
担任:「それじゃあ、サッカーのキャプテンとしてのやりがいは、チームメンバーと共有する目標と達成感にあるんだね。学級委員の仕事にも、もっとクラス全体と共有できる目標があれば、楽しくなるものなのかな。」
Aさん:「確かにそうかもしれません。ただ、共有できる目標…。頭ではわかっているのですが、そんなもの、クラスのみんなにはない気がするんですよね。」
担任:「なるほど。最後の部分、ポイントかもね。つまり、クラスメイトが本当に望んでることってなんなんだろうかね。」
Aさん:「変化を起こしてほしい雰囲気は出てるのに…あんまり主体者として関わりたくないのかな…?」
担任:「うんうん。じゃあそれを確認するにはどうするのが良いかな?」
Aさん:「うーん、みんなと話してみます。直接聞いてもいないのに勝手に決めつけてました。もしかしたら、変えたい気持ちはあるけど、そもそもみんな、宿題や部活などやらなきゃいけないことが多く、優先順位が下がってるだけかもしれないです。」
担任:「そうだね、クラスメイトの考えを『おそらく、たぶん』など自分の頭の中で完結させちゃってる気がするんだよね。それと、いきなりみんなに問いかけるのではなく、個別に聞いていくのが良いと思うよ。」
具体例の解説
「学級委員を辞めたい」という発言の背後にある問題は、単に役割に適さないと感じているのではなく、クラスメイトとのコミュニケーションのギャップや、感じられるサポートの不足にあります。担任はこの点に気づき、Aさんに対して、辞めるのではなく、まずはクラスメイトとの個別の会話を通じて問題の根底にある誤解や期待のズレを明らかにし、解決策を探ることを促しました。
一方で、クラスメイトのインサイトについても、Aさんと担任の先生の対話からひとつの仮説が浮かび上がりました。それは、「変化を望んでいるものの、面倒だから変化の輪の中心には入りたくない」というものです。
クラスメイトたちは現状に満足していないようで、何かしらの変化を期待してAさんを学級委員に選びました。しかし、実際に行動を起こすとなると消極的な態度を示しています。これは、変化に伴う責任や労力を避けたいという気持ちの表れかもしれません。
このインサイトの仮説は、Aさんがクラスメイトと個別に会話することで検証され、クラスメイトの本当の気持ちを知ることで、クラス全体の協力を得やすい方法を見出せる可能性があります。
このように、インサイトを探ることは、表面的な言動の奥にある本質的な欲求や葛藤を理解することにつながります。それによって、より効果的な解決策を見出し、互いの理解を深めることができるのです。
採用活動に置き換えると
このAさんとクラスメイトの例は、実は採用活動にも同じことが言えるのです。両者には、表面的な情報と本質的な理解のギャップ、理想と現実のジレンマ、そして相互理解の重要性という共通点があります。
企業の採用担当者は、Aさんのような立場にあります。例えば「優秀な人材を効率的に見極めたいが、本当の適性は時間をかけないとわからない」というインサイトを持っているかもしれません。このインサイトには、効率的な採用プロセスを行いたいという願望と、候補者を深く理解するには時間がかかるという現実の矛盾があります。また、本質的な価値観や適性を見極めたいと思う一方、時間的な制約もあり表面的なスキルや経歴で判断せざるを得ない葛藤もあります。これは、Aさんがクラスメイトの本音を理解したいが、表面的な態度からは読み取れないという状況と類似しています。
一方、就職活動中の候補者たちは、クラスメイトに似た立場にあると言えます。「理想の仕事に就きたいが、自分の本当の適性がわからない」というインサイトを持っているかもしれません。変化や成長を望みつつも、具体的に何をすべきかわからず、積極的な行動に踏み出せないでいる可能性があります。これは、クラスメイトが変化を望みながらも実際の行動を起こせないでいる状況と重なります。
両者とも、表面的な情報や印象だけでは本質を捉えきれないという課題に直面しています。そして、この課題を乗り越えるためには、Aさんが個別にクラスメイトと対話しようとしたように、より深いコミュニケーションと相互理解が必要となります。
このように、クラスの課題解決と採用活動は、人々の想いや適性を理解し、それに基づいて行動することの重要性という点で共通しています。両者とも、表面的な情報だけでなく、深い洞察を得ることが、より良い結果につながる可能性を示唆しているのです。
つまりインサイトとは
インサイトとは、人々の行動や考え方の中に隠れている矛盾や本質的な欲求を明らかにする洞察のことです。これは特に、「言っていること」と「実際にやっていること」のギャップを認識することで得られます。
多くの人はこのギャップに無意識のうちにいますが、誰かに指摘されると「あ、、、確かに」と気づかされます。この瞬間は少し恥ずかしいかもしれませんが、その気づきが新たな自己理解や行動の変化へと繋がるものであると捉えました。