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ミニ四駆と空力(その4)

「ダウンフォースだ!」
ミニ四駆と空力の記事、第4回です。
前回の記事で、ジャンプの飛距離が3枚着地となる速度のときに2枚着地に収めるのに必要なダウンフォース0.36Gを得るには、揚力係数CLが2.12必要であることがわかりました。
今回は、ミニ四駆が揚力係数2.12を達成することは可能なのかを考えていきます。

前回までの記事はこちらです。


現実のクルマと比較してみる

実際のレースカーの揚力係数CLを計算して、参考にしてみたいと思います。
以下のリンク先の記事によると、
「GTカーのダウンフォースは最大で3G」
「ヤリスWRCは1.6Gから2.2G」
らしいです。

というわけで、GTカーやWRCカーの揚力係数はどれくらいなのか?

まず、GTカーを見ていきます。最高速度は300㎞/hとのこと。NISMO GT500(全長4775㎜、全幅1960㎜、重量1020㎏)について、ダウンフォース3Gとして揚力係数CLを逆算すると、約0.75となりました。なお、代表面積(水平投影面積)は、単純に全長×全幅としました。
目標は2.12ですから、GTカーの揚力係数では全く足りません。
それでもGTカーが3Gという大きなダウンフォースを得られるのは、速度が大きいからでしょう。

では、WRCカーはどうでしょうか。最高速度は200㎞/hとのこと。ヤリスWRC(全長4085㎜、全幅1875㎜、重量1190㎏)について、ダウンフォース2.2Gとして揚力係数CLを逆算すると、約1.51となりました。
GTカーの約2倍の数値ですが、目標の2.12には一歩及びません。

しかも、ミニ四駆は本物の車よりサイズが小さく速度も遅いので、低レイノルズ数の領域であることから、本物の車よりも空気の粘性の影響を強く受けます。このため、本物の車の形状そのままでは、揚力係数は低下してしまうと考えられます。

つまり、本物のレースカーとそっくりそのまま同じ形状を真似たとしたら、揚力係数CLが不足し、必要なダウンフォースを得られないということです。

飛行機の翼と比較してみる

では、ミニ四駆の断面形状を飛行機の翼のようにしてしまって、ミニ四駆を翼そのものとしたらどうでしょうか。
こちらのサイトで、代表的な翼型の性能データを調べてみます。

ミニ四駆の車体を翼にするということで、普通の飛行機の翼よりもやや厚めの翼型を検索してみました。
とりあえず見つけたのがこちら

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1枚目は翼の断面形状です。
2枚目は迎え角(翼の上下の角度、Alpha)と揚力係数Clのグラフです。レイノルズ数が異なる複数の状態のグラフが描かれています。
いちばん条件がいいとき(黄土色の線、高レイノルズ数の領域)でも、迎え角15°で揚力係数1.5程度が最大です。
実際はミニ四駆のサイズ・速度は低レイノルズ数の領域であり、グラフの水色の線を読み取る必要があります。このときは、迎え角7°で揚力係数0.8程度が限界です。
目標の2.12には到底及びません。
他の翼型も数例調べましたが、ほぼ同様の傾向でした。

また、低レイノルズ数の領域では、厚みのある翼よりも、平板を折り曲げただけのような薄い翼の方が効率が良いことが知られています。

つまり、ミニ四駆の断面形状を飛行機の翼と同じような形状にしても、必要な揚力係数は得られないということです。

結論?

レースカーを真似してもダメ、飛行機の翼を真似してもダメ。
では、必要な揚力係数を得るには、どんな形の車体にすればいいのか。

…実は、これについては現在研究中で、いまだ答えを持っておりません!

少なくとも現段階で出せる結論は、相当の工夫をしない限りは、揚力係数2.12を達成するのは不可能ということです。
つまり、ダウンフォースの力だけでジャンプの飛距離をストレート1枚分(50㎝)短縮するだけでも、ものすごく難しいのです。

しかし、決してダウンフォースが無意味というわけではありません。たとえば、飛距離の短縮をストレートの半分である25㎝に妥協すれば、必要なダウンフォースGは0.15Gであり、揚力係数は0.88で済みます。このくらいなら何とかいけるんじゃないか?という気はします。

ミニ四駆のサイズ・速度で確実にダウンフォースを稼ぐことのできる形状については、今後、研究していきたいと思います。

今後の方向性

ミニ四駆がダウンフォースを稼ぐのに有利な形状については、これから研究していくところなのですが、ここで終わると「ダウンフォースでストレート1枚分の飛距離を縮めるのは無理!」で終わってしまって、おもしろくありません。
そこで、今現在、自分の考えている方向性のようなものについて、書いておきたい思います。

そもそも揚力とは、圧力差によって生じる力です。

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クルマのウイングを横から見ると、上の図のような形をしています。ウイングの上側は、あたかもウイングが壁のような役割を果たして、空気がその場に留まり、圧力が高くなるイメージです。ウイングの下側は、逆に空気の流れが引き延ばされ、圧力が低くなるイメージです。
その結果、ウイングの上側は高圧、下側は低圧となり、高圧側から低圧側にウイングが押される。これがダウンフォースです。

そして、ウイングの上側の空気の流れは多少乱れてもよいのですが、下側の空気の流れが乱れるとダウンフォースを失う状態(失速)となるため、下側の空気の流れはキレイに整えたいところです。
このため、車体下側に気流を乱すような空力デバイスを付けるのは避けた方が良さそうです。
逆に、車体上側なら、多少気流を乱してでもダウンフォースを稼げる空力デバイスを載せたいところです。

また、少しでもダウンフォースを稼ぐためには、車体自体もウイングとして活用したいところです。車体そのものはウイングとしての効率は悪いのですが、使わないより使う方がいいことは間違いありません。

そして、レースカーの車体も飛行機の翼も、「空気抵抗を減らす」ということが重要な要素の1つとして考慮されています。しかし、ミニ四駆は実物の車よりも密度が高いので、空気抵抗の増大による悪影響は、さほど大きくならないと考えられます。そこで、空気抵抗の減少をあえて度外視して、とにかくダウンフォースを稼ぐ努力をする…これにより必要な揚力係数を達成できないか、という解決策が考えられます。

以上を踏まえ、次のような基本方針を考えました。
「車体下側の気流を整え、車体そのものをウイングとして活用する」
「車体上側に何らかの空力デバイスを取り付け、車体上側に空気をためて圧力を上げる」
「空気抵抗は度外視して、とにかくダウンフォース確保を優先する」

空力デバイスとしては、エアダム型ウイングというのがあり、RCバギーなどでよく使われているようです。(以下のリンク先参照)

エアダム型ウイングは、普通のウイングよりも空気抵抗は大きいようですが、低レイノルズ数でも揚力を確保できそうです。

ということで、自分がいま考えている大まかな案としては、

・アンダーパネルで車体下面をフラットにする。
・エアダム型ウイングを3つくらい車体上側に取付ける。
・空気抵抗の増大は許容する。

というものです。
たぶん見た目のカッコよさは期待できませんが、イメージ画像としてはこんな感じでしょうか…?

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しばらく時間がかかりそうですが、そのうち試作して実験してみたいと思います。

まとめ

4回にわたって書いてきたミニ四駆と空力に関する記事、ひとまず今回で一旦終了となります。

現段階まででわかったことをまとめると、
・ミニ四駆ではコーナリングではなくジャンプ飛距離短縮にダウンフォースを活用すべし
・ストレート3枚着地の速度は5.9m/s
・これをストレート2枚着地におさめるのに必要なダウンフォースは0.36G
・そのダウンフォースを得るには揚力係数2.12が必要だが、本物のレースカーや飛行機の翼の形状を真似ても達成は難しい。
・このため、ミニ四駆のサイズ・速度に適したミニ四駆用空力デバイスの研究が必要

となります。

今後は、時間をかけて空力デバイスに関する研究をして、またnoteにてお披露目できればと思います。
(まずは前後長や高さの異なるエアダム型ウイングをいくつか試作して、最適な形状を研究するところからスタートか?)

長々と小難しいことを書き連ね、しかも中途半端なところで途切れてしまい大変恐縮ですが、お読みいただきお礼申し上げます。
ご意見ご感想等、いただけると大変ありがたいです。
ありがとうございました。

次回




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