見出し画像

空力デバイス研究⑤

「ダウンフォースだ!」
今回も空力デバイスについて研究していきます。
前回は、ウイングの工夫によってダウンフォースの発生能力を向上させ、実際に走らせた結果としてジャンプの飛距離を一定程度抑えることに成功しました。しかし、空気抵抗の増大が原因と思われる速度の低下があったのと、まだまだ揚力係数が目標には遠いというところでした。

前回の記事はこちらです。

今回は、空気抵抗の低下と揚力係数の増大を狙って改良したエアロパーツをテストしてみます。


試作したエアロパーツ

空気抵抗の低減のためには、前方投影面積を減らすことです。特に、エアダム型ウイングは、高さがあるほど揚力係数が増すものの、それ以上に抗力が増してしまいます。揚力をそれほど落とさない範囲で、高さを低くして抗力を落としたいところです。
そして、揚力係数増大のためには、リヤウイングをエアダム型から通常型に変えてみたいと思います。エアダム型ウイングは揚力係数は大きいものの、後方の気流を大きく乱すと思われます。すると、車体全体をひとつの翼として見たとき、車体後方の気流が乱されることで、車体下側を流れて来た気流を上手く利用出来ていないのではないかと考えました。リヤウイングを通常型のウイングにして車体後方の気流を乱さないようにすることで、ダウンフォースの向上を狙います。

そして、前回使用したエアロパーツを改修したのがこちらです。

画像1
車体全景
斜め後方から

改修したポイントは次のとおりです。
・フロントのエアダムウイングは、後端垂直部分の高さを12㎜から4㎜に変更しました。かなり高さを落としましたが、タイヤカウル部が斜めにせりあがっていることでウイングとしての役割を果たすため、揚力はあまり落ちないと考えました。しかし、前方投影面積を減らしたことで空気抵抗は減るだろうと思われます。
・フロントウイング両サイドの垂直フィンは、内側を高く、外側を低くしました。ウイングを通過した気流が内側へ流れにくくなって、リヤウイングへ流れていく気流が乱れないといいな〜、と。
・リヤウイングは、普通のウイングにガーニーフラップを組み合わせたものにしました。ガーニーフラップとは、ウイング後端を上側に折り曲げた低いフェンス状の部分で、ウイングを通過した気流を渦にすることで、その渦を擬似的な翼面として活用し、ウイングの効果を向上させるものです。実物のレースカーで使われる技術で、ミニ四駆のサイズ・速度でどれほど効果があるかはわかりませんが、とりあえず付けてみました。リヤウイング上を通過した気流で渦を作り、これをアンダーパネル下を通過してきた気流と組み合わせて、ダウンフォースを向上させる狙いです。

ガーニーフラップによる渦の効果

・サイドウイングは幅を5㎜ずつ広げ、面積増大によるダウンフォース向上を図りました。

まとめると、全高の高いエアダム型ウイングを廃止して空気抵抗の低減を図りつつ、ガーニーフラップ付きリヤウイングによるダウンフォース向上を狙いました。

風洞(?)試験の結果

例によって扇風機の風を当ててテストします。
実験の結果、風速3.5m/sで9.8gfのダウンフォースを示しました。車体としての揚力係数は1.09となります。
前回の形態は8.0gf、揚力係数0.89だったので、性能が上がっています。
フロントウイングもリヤウイングも単体で見れば揚力は落ちているはずですが、ガーニーフラップによる渦の効果とサイドウイングの拡大により、総合的にはダウンフォースを向上できたものと思われます。

風洞試験結果の考察

速度3.5m/sで9.8gfのダウンフォースという結果から、これまでの研究をもとに計算すると…

ドラゴンバックからの飛距離がストレート3枚着地となるのは速度6.4m/sのときで、これは空力無しだとストレート3.6枚着地となる速度です。この速度でのダウンフォースは約33gfとなります。
同じように、4枚着地となるのは7.5m/sのときで、空力無しだと5.2枚着地となる速度です。この速度でのダウンフォースは約45gfです。

ちなみに、空力無しだと3枚着地は5.9m/s、4枚着地は6.7m/sまで減速する必要があります。
つまり、空力によって、3枚着地なら0.5m/s、4枚着地なら0.8m/s速く飛翔できるということです。

試験走行レポート

以上の結果を踏まえて、実際に走らせてマシンの動きを見てみました。

走らせたのは、テーブルトップ3枚着地のレイアウト。ドラゴンバック3枚着地とは異なるレイアウトですが、概ね似た結果になるはずです。
空力パーツを搭載した状態でちょうど3枚着地となるようにブレーキを調整してみます。
そして、ブレーキセッティングはそのままにエアロパーツを全て取り外してみると、やはり飛距離が伸びましたが、コーナーインに成功し、コースアウトはしませんでした。このときの飛距離は、目測ではストレート3.3枚分くらいに見えました。

計算では飛距離が3.6枚分ほどになるはずですが、実際は3.3枚分程度でした。

これは推測ですが、通常形式のウイングは、エアダム型ウイングと異なり、AOA(Angle Of Attack、迎え角。ウイングと気流が成す角度のこと。)が浅いときにダウンフォースが落ちると考えられます。
ジャンプ中の車体の姿勢は水平よりやや頭下げの状態に調整していました。この姿勢はジャンプ中にほぼ変化しませんが、車体の進行方向は上昇から降下へと常に変化を続けています。つまり、ウイングのAOAはジャンプ直後が最も大きく、その後、時々刻々と浅くなっていき、場合によってはマイナスもあり得ることになります。このため、ジャンプの後半に行くにしたがってダウンフォースが低下していった可能性が考えられます。

扇風機での実験のときは、ジャンプ姿勢がやや頭下げということで、やや上から風を当てています。角度は5〜10度くらいで、この角度は実験中に変化しません。
実験では良い結果が出たのに試験走行では予想を下回る結果になったのは、こういったことが要因と考えられます。

一方、エアダム型ウイングは、AOAの大小によるダウンフォースの変化は少ないと考えられます。さすがにマイナスになればダウンフォースは落ちるでしょうが、風が当たってさえいればAOAが浅くなっても効果があまり落ちないため、前回の実験では扇風機での実験結果と試験走行の結果に変化が見られなかったものと考えられます。

空気抵抗による速度低下については、多少マシになったようには感じますが、計測手段がなく感覚的なものなので、あくまで参考程度かなと思います。

まとめ

以上の結果から、リヤウイングについては、通常形式のウイングは適切なAOAを保持できれば効果が高いものの、飛翔中のAOAは一定ではないため、総合的にはエアダム型ウイングの方が効果が高いと考えられます。

今回の結果を踏まえて、次回以降、更なる改良を加えたいところですが、ちょっとアイデアが浮かびません!
何かアイデアが浮かべば試作と実験をしてみたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

次回


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?