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空力マシン第4号「ADF-4」
Ω「ダウンフォースだ!!」
前回の記事からずいぶんと間隔があいてしまい、もうしわけありません。
ADF-3を改良し性能を向上させたエアロダウンフォースマシン4号機、ADF-4を紹介します。
(前回の記事は以下のリンクから)
ADF-4は、数か月にわたって運用したものの、レースで顕著な結果を出すことができず、幾度となく改修を繰り返しました。その結果、かなり良い走りができるようになってきたのですが、長期間の運用で空力パーツが傷んできたので、作り直す必要が出てきました。
しかし、再び同じものを作るのも芸がありません。そこで、新たに空力マシン第5号機を作成することとし、ADF-4は運用を終了することにしました。
レースでよい結果を出せないまま運用を終了するADF-4ですが、前作のADF-3から空力設計の面で大きく進歩させることができたので、今回、ご紹介するために記事を作成することにしました。
設計のポイント
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基本的な車体構成は前作ADF-3と似ています。
TRFワークスJr.のボディをベースに、フロント、サイド、リヤにウイングを装着、さらにアンダーパネルとディフューザーを装備。
シャーシはBフレキで、フロントATバンパーとリヤアンカーの固定を柔らかめにしてマスダンパー代わりとし、通常のマスダンパーや提灯を装備していないのも同じです。
ADF-3から大きく変化したのは、次の3点です。
①フロントウイングの装着
②サイドウイングの面積拡大
③リヤバンパー上面にフェアリングを装着
これらの改良点について解説していきます。
①フロントウイングの装着
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ADF-3ではボディ前部そのものをウイングとして活用しようとしていました。しかし、この手法ではダウンフォースの向上に限界がありました。ダウンフォース向上のためにウイングを増やしたいという思いは常々持っていたのですが、ようやく性能と強度を両立しつつ、見た目がそれほど悪くない(?)ものを考案することができました。
フロントウイングの横幅は、左右のフロントタイヤの間にちょうど収まる長さとしました。車体全幅にわたる長さにした方が翼面積を大きくすることができるのですが、フロントタイヤの前方にウイングを配置しても、タイヤカウルが邪魔になってウイング下面の気流がうまく流れず、あまり効果を期待できないのではないかと考えて、このような横幅のウイングとなりました。
ポイントは、ボンネットの部分が低くなるように加工して、車体そのものが薄くなるようにしたことです。
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車体を薄い形状にして、フロントウイングと車体の上下間隔を広くとり、ウイング下面と車体上面の気流が相互に影響し合うのを防ぐ狙いです。
ボンネット部分上面の気流は、フロントウイングからの影響を最小限に抑えつつ、後方へ向かって流して、スムーズにフロントスクリーンまで到達させます。
その気流を有効活用するために、フロントスクリーン部分にエアダム型ウイングを設置しました。
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フロントウイングのみならず、フロントスクリーン部分でもダウンフォースを発生させます。
前方から車体に当たる空気のうち、高い位置の空気流はフロントウイングで受け止め、低い位置の空気流はフロントウイングの下を通してフロントスクリーン部分で受け止めるようなイメージです。
フロントウイングはゴチャゴチャした形状で、写真では全体像がつかみにくいと思いますが、ボディから取り外した写真も載せておきます。
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②サイドウイングの面積拡大
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サイドウイングは、翼型(よくがた:翼の断面形状のこと)を自由にデザインできる上、気流を乱すおそれのある余計なものが上下に存在しないので、ダウンフォースをかせぐのに最大限利用すべきポイントです。
サイドウイングの翼面積を拡大するため、ボディの横幅を縮めて、ウイングの横幅を広げました。ボディのドアに当たる部分(?)にカットと折り曲げ加工をして、ボディの横幅をMSシャーシの横幅と同じにしています。
ボディの横幅を縮めたことで、タイヤの横幅よりボディの横幅が短くなって、タイヤがボディから飛び出るような形になるので、フロントタイヤ後方をスリットのように加工しました。
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フロントタイヤの巻き込んだ気流がスリットから排出されて、段差による気流の乱れを防ぎ、サイドウイングに当たる気流を乱れのないものにします。
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リヤタイヤ前方は、フェアリングで覆っています。
サイドウイングの翼型は、平板を折り曲げただけの単純な形状としました。ADF-3では複雑なS字を描く曲面形状でしたが、流体シミュレーションの結果、平板翼とそれほど性能が変わらなかったので、作成が容易で破損もしにくい平板翼を選択しました。
(流体シミュレーションといってもフリーソフトによる簡素なものです。そのうちシミュレーションの結果を紹介するかもしれません。)
また、ADF-3ではアンダーパネルを横に延長してサイドウイングとしていましたが、この構成でサイドウイングを大型化すると、フェンス乗り上げ時にサイドウイングがボディに当たってしまい、フェンスをいなすことができなくなります。そこで、ADF-4ではボディ側面にサイドウイングを装着しました。
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こうすることで、サイドウイングがフェンスに乗り上げた時、ボディ側面が広がるようにして変形することで、サイドウイングが持ち上がって斜めになるので、乗り上げをいなしやすくなりました。
③リヤバンパー上面にフェアリングを装着
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リヤウイング下面の気流を整えて、リヤウイングの効果を最大限に発揮させるために、リヤバンパー上面にフェアリングを装着しました。
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また、ボディのリヤウインドウ部分を加工して、リヤバンパーのフェアリングまで自然なラインでつながるような形状にしました。このため、この部分はタイヤより低くなっています。
ところで、ボディ後端よりフェアリング前端の方が位置が高くなっています。気流のことを考えれば、高低の位置関係は逆の方がいいのですが、リヤタイヤフェアリングは、アンカーギミックのあるリヤバンパーに乗っているので、リヤバンパーがフェンスに乗り上げると、フェアリングも持ち上げられます。このとき、フェアリングがボディより低いと引っかかってしまうので、それを防ぐためにこのような位置関係になりました。
その他のパーツの解説
リヤディフューザー
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ADF-3ではリヤディフューザーを曲面形状の一体整形としていましたが、走行を重ねると徐々にゆがんできて、しかも左右でゆがみに差がでるので、ジャンプ姿勢が乱れる原因になっていました。また、曲面形状ゆえに、平面だけで構成されるリヤブレーキプレートとの接着面積を確保できず、しっかりと固定できなかったこともゆがみが生じる原因でした。
そこで、前後に分割された平板を階段状に並べる構成として、リヤバンパーにしっかりと固定できるようにしました。
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分割したことで、リヤブレーキプレートの高さ調整も容易になりました。
階段のような段差があったり、分割されたことにより隙間があったりするので、悪影響の心配をされるかもしれませんが、おそらく問題にはならないだろうと考えています。
ミニ四駆は、実車にくらべるとサイズが小さく、速度も遅いです。すると、空気の粘性(ねばりけ)の影響を受けやすくなります。流体がねばっこいと、段差による空気の乱れが起きにくくなるらしいので、たぶん大丈夫だろう、と。
メインボディ
改修ポイントは、サイドウイングの項目で述べたとおりです。写真を掲載します。
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ちなみに、メインボディをサイドウイングごと取り外して、フロントとリヤのウイングだけの状態で走らせてみたことがあります。サイドウイングはかなりのダウンフォースを発生させていると考えられるので、それを取り外したらジャンプで飛距離が伸びると思われます。そこで、ボディを外さずに走ったときにストレート1枚分ほど飛距離が縮まる程度にブレーキを強めてから、メインボディを外して走らせました。
すると、ジャンプ飛距離が少し伸びるくらいで走りました。ダウンフォース低下とブレーキ強めの効果が相殺したものと思われますが、ブレーキを強めてもなお飛距離が伸びたということは、ダウンフォースの効果があったことの証左であると言えるでしょう。
そして、エアターン気味に危なっかしく走っていたところ、なんとレーンチェンジで何の抵抗もなくスパーン!と飛んで行きました。
スロープセクションはブレーキを強めたことでダウンフォースが低下してもクリアできたようですが、レーンチェンジはブレーキが効かないので、ダウンフォース低下の影響が如実に出たのでしょう。メインボディを取り外したことで重心位置は下がりますから、レーンチェンジで有利になる面もあったはずですが、結果としてメインボディなしではクリアできませんでした。
その後、レーンチェンジにリトライしましたが、やはりクリアできず。
しかし、ローラーのスラスト抜けやバンパーの不具合の可能性もあります。もしそうなら、メインボディを装着した状態で走らせても飛ぶはずです。
そこで、メインボディを装着して、電池も充電しなおして、改めて走らせたところ、なんとレーンチェンジを難なくクリアしました。
どうやら、メインボディとサイドウイングのダウンフォースは、レーンチェンジでも仕事をしてくれていたようです。
(逆に言えば、空力なしではLCをクリアできないほどローラーセッティングやバンパー強度がクソザコだったとも言えますが…。)
リヤウイング
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メインボディの後端をリヤタイヤの後端とほぼ一致するまでに短縮したことで、リヤウイングを前方側に引き伸ばして面積を拡大することができました。ADF-3よりも全長が5ミリほど長くなっています。
取り付け位置が少し高いような印象を受けるかもしれませんが、この高さが最適でした。これより3ミリほど低く取り付けたところ、リヤのダウンフォースが不足して空中姿勢が頭下がりになるという現象が起きました。ある程度高い位置でないと、フロントウイングやボディによって乱れた気流の影響が大きく、リヤウイングの効きが悪くなるようです。かと言って、これ以上高い位置に付けても重心が高くなってしまうので、現在の高さに落ち着きました。
(見栄えを考えると、あと3〜5ミリくらい低い位置の方が好きなんですけどね。)
ADF-3と同様、形の違う複数のリヤウイングを用意し、これを交換することで空中姿勢をコントロールします。ADF-4では、5種類のリヤウイングを用意しました。
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写真の右からハイダウンフォース、ミドルダウンフォース、ローダウンフォース、キャンバーゼロ、ネガティブキャンバーです。つまり、リヤのダウンフォースを、大、中、小、ゼロ、マイナスの5段階で調整できます。
使用率が高かったのはローダウンフォース、次いでミドルダウンフォースでした。ハイダウンフォースとキャンバーゼロをたまに使用、ネガティブキャンバーは空中姿勢が頭下がりになりすぎるので、ほぼ全く使いませんでした。
ADF-3のときはネガティブキャンバー(ダウンフォースがマイナス)のリヤウイングを使わなければ空中姿勢が頭上がりになるのを防げないことが割とあったので、それを使わなくてよくなったということは、フロント側のダウンフォースを強化することができていることの裏付けと言えそうです。
走行させた所感
定量的に計測する手段がないので、個人的な感想レベルの話になってしまいますが…
ADF-3と比べると、よりブレーキを緩めて立体セクションに突っ込んでも、入ってくれることが多くなりました。反面、ブレーキを強くして安全マージンを確保した走りをしようとすると、思った以上にタイムが落ちる感じがしました。
ダウンフォースは速度の2乗に比例して大きくなりますから、おそらくダウンフォースを発生させる能力が向上したことで、立体セクションに突っ込む速度が速いほどダウンフォース向上の恩恵を大きく受けることができていたのではないかと思われます。
その反面、空力パーツの分量が増えているので、空気抵抗が増大している可能性はあります。しかし、特にトップスピードが低下した感じはしないので、実用上の許容範囲内なのだろうと思っています。
レースの戦績としては、微妙な感じです。
まず、優勝がありません!
いい走りはするんですけどね。肝心なところでCOしてばかりで…。
フレンドリーカップでのみ入賞が何度かあり、しかもオープニングレース(練習走行なし、最後までセッティング変更も電池交換もなしの1発トーナメント方式)だけ、なぜかよく入賞していました。
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決勝でCOしなければなぁ。
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上記は半年以上前からの戦績で、今回の記事で紹介した形態になる前のものです。フロントウイングとリヤバンパー上のフェアリングがない状態でした。
今回紹介した形態の方が良い走りをするのですが、レースには1回しか出せておらず、そのときは表彰台に乗れませんでした。もしレースに出し続けていれば、よい結果が出たかもしれませんが、もう各部の空力パーツの強度が限界です。今後のレースで走らせるのは、空力マシン第5号に任せたいと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。
レース戦績は大したことないのですが、空力設計の面は大きく進歩したと言って良いと思っています。それに、戦績はアレでも走りは間違いなく良くなったと実感しています。
今後は、第5号機「ADF-5」の運用に移行して、引き続き空力マシンの研究を続けていきたいと思います。
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今回もお読みいただき、ありがとうございました。
ご質問やご感想などありましたら、お気軽にコメントしていただけると嬉しいです。
一緒に空力マシンで走りましょう!!