空力デバイス研究④
「ダウンフォースだ!」
今回も空力デバイスの試作と実験をしていきます。
前回の記事はこちら。
前回は、アンダーパネルを装着した車体に沢山のエアダムウイングをつけまくってみたものの、全く良い性能を発揮できませんでした。
今回は、エアダム型ウイングの付け方を工夫して、性能向上を探ってみます。
試作したエアロパーツ
前回、良い結果とならなかった原因は、エアダムウイングを乱雑に搭載した結果、前方のウイングによる気流の乱れにより後方のウイングが揚力を失ったためだと考えられます。
そこで、ウイングの数を減らしたり、取り付け方を工夫したりして、気流の乱れを防止するような形を模索してみます。
試作した空力パーツを装着した車体がこちらです。
今回工夫した事項は次のとおり。
・ウイングは大きく分けて前部と後部の2箇所に。もしウイングをリヤのみとするとジャンプ中に車体後部が下に押され、頭上がりの姿勢となるのではないかと思い、これを抑えるために前後にウイングを付けてバランスをとっています。
・中央部にはウイングを搭載しないことにしました。搭載してもフロントウイングで乱れた気流のため効率が悪く、しかも後方の気流を乱すことでリヤウイングの働きを阻害すると考えたためです。ただ、アンダーパネルのサイド部分は、リヤウイングへの気流に影響が無さそうな位置だと思ったので、小さなウイングにしています。
・フロントウイングは左右に分割しました。リヤウイングの前方を開けて空気の通り道を確保し、リヤウイングへの気流の乱れを防ぐためです。ただし、翼面積を確保するため、フロントウイング内側は少しだけリヤウイング前方と重なっています。また、外側はフロントローラー軸付近まで広げています。
・リヤウイングは、リヤの可動バンパー上に搭載しました。キャッチャーダンパー上に両面テープで固定するのが簡単なのですが、風圧や車体の動揺で動いてしまうとウイングの効果が安定しないので、ジャンプから着地までの間にウイングが動かないように配慮したものです。また、ウイングは可動バンパーと一緒に動くので、バンパーの動きを妨げません。
・リヤウイングは、少し車体に隠れるよう低めに装着しました。空中で頭が上がってしまった時、リヤウイングが車体に隠れることでリヤのダウンフォースを減らし、頭上がりの姿勢から回復させるためです。
・前後ともタイヤにカウルを付けました。タイヤの上側はタイヤが前方に向かって進んでいるため、タイヤが剥き出しだと気流を妨げてしまいます。すると、気流がリヤウイングにうまく流れていかないと考えられます。タイヤカウルにより、タイヤによって気流が乱されるのを防ぐことができると考えました。
・リヤタイヤ前方にはサイドポッドをつけています。これもリヤウイングへの気流を乱さないよう配慮したものです。
・車体前端から後端まで、タイヤの部分を除いて完全にアンダーパネルで覆いました。特に、各タイヤの前後の部分をパネルで埋めることで、タイヤの回転によって加速させる気流を乱さずに後方へ送ることを狙いました。
・アンダーパネルを敢えて一体成形とせず、前部と中央部以後の2つに分けました。サイドウイングを真横に張り出させているので、フェンスに乗り上げた際、もしアンダーパネルが一体成形だとサイドウイング付け根に大きな負荷がかかり、破損の原因になります。アンダーパネルを前部と中央部で切り離すことで、アンダーパネル付け根への負荷の集中を防ぐことができます。
風洞(笑)試験
例によって扇風機で風を当てて試験します。
前回は車体を糸で吊りましたが、今回からは新しいスタンドを使います。
これに風を当てて試験します。
試験の結果、風速3.5m/sで8gfのダウンフォースを示しました。
車体としての揚力係数は0.89となります。
以前テストしたアンダーパネルのみのパターンや、前回テストしたエアダムウイングゴテゴテ型は5gfくらいだったので、これらと比べると確実に性能があがっています。
ちなみに、これはタイヤを回転させた状態での数値で、タイヤの回転を止めるとダウンフォースが1gf程度低下しました。アンダーパネルやタイヤカウルによる整流の効果が出ていると思われます。
風洞試験結果の考察
速度3.5m/sで8gfのダウンフォースという結果から、これまでの研究をもとに計算すると…
ドラゴンバックからの飛距離がストレート3枚着地となるのは速度6.3m/sのときで、これは空力無しだとストレート3.5枚着地となる速度です。この速度でのダウンフォースは約26gfとなります。
同じように、4枚着地となるのは7.3m/sのときで、空力無しだと4.9枚着地となる速度です。この速度でのダウンフォースは約35gfです。
ちなみに、空力無しだと3枚着地は5.9m/s、4枚着地は6.7m/sまで減速する必要があります。
つまり、空力によって、3枚着地なら0.4m/s、4枚着地なら0.6m/s速く飛翔できるということです。
速度と飛距離(ストレートの枚数)をグラフにすると、下の図のようになります。
青い線がダウンフォースなしの場合、赤い線が今回テストしたエアロパーツを付けた場合です。
試験走行レポート
以上の結果を踏まえて、実際に走らせてマシンの動きを見てみました。
まず走らせたのは、テーブルトップ4枚着地のレイアウト。ドラゴンバック4枚着地とは異なるレイアウトですが、概ね似た結果になるはずです。
空力パーツを搭載した状態で4枚着地ギリギリにブレーキを調整してみました。すると、飛距離が同じくらいの他の人のマシンをジャンプ中に追い抜くなど、明らかに他のマシンよりもジャンプ中の速度が速いことを確認できました。
また、ブレーキセッティングはそのままにエアロパーツを全て取り外してみると、飛距離が伸びてコースアウトしました。このときの飛距離は、目測でストレート5枚分くらいは飛んでいたように見えました。
続いて走らせたのは、ドラゴンバックからストレート3枚着地のレイアウト。
再び、空力パーツありの状態でちょうど入るようにブレーキセッティングを調整すると、やはりジャンプ中の速度が他の人のマシンより速い。ただし、4枚着地のときよりも速度差が小さいように見えました。
また、ブレーキセッティングをそのままにエアロパーツを全て取り外すと、やはり飛距離が伸びてコースアウト。このときの飛距離は、目測ですがストレート4枚分よりは短いように見えました。
以上、試験走行の結果は、全て風洞(笑)試験結果から考察し予想したとおりでした!
その他、ジャンプ中の姿勢については、前後ブレーキの位置や強さ、キャッチャーダンパーの重りの量などによって、エアロパーツ無しの場合と同様に、調整が可能でした。空力がジャンプ中の姿勢を乱すようなことはなかったようです。
ただし問題もあり、空力パーツを装着していると平面速度がやや落ちました。
空力パーツは全部で10gほどの重量があり、更に空気抵抗を増大させるので、程度は不明ですが加速力にも最高速度にも悪影響を与えるのは確実です。
エアロパーツはペラペラで強度に不安のある素材なので軽量化は難しいかもしれませんが、ダウンフォースを落とさない範囲で空気抵抗を減らせるように工夫した方が良さそうです。
まとめ
今回試作したエアロパーツは、決して強力ではないものの確実にダウンフォースを発生させ、一定程度ジャンプの飛距離を抑えることができました。
ただし、以前の研究で3枚着地の速度で2枚着地に抑えるための目標としていた揚力係数は2.12であり、まだその半分にも達していません!
はっきり言って揚力係数を現段階から2倍以上に引き上げるというのは、ちょっと無理なんじゃないかと思いつつありますが、今後も引き続き空力パーツの研究をしていきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました!
次回