ミニ四駆と空力(その2)
「ダウンフォースだ!」
ミニ四駆と空力の記事、第2回です。
今回は、ジャンプの飛距離を抑えるのに必要なダウンフォースの大きさを検証していきます。
前回の記事はこちらです。
計算の方針
今回は、
「シングルドラゴンバックの後ストレート3枚分の飛距離で着地する速度」
のときに、
「飛距離をストレート2枚分におさめるのに必要なダウンフォースの大きさ」
を考えてみます。
自分の主観ですが、ストレート4枚着地を採用したレイアウトは珍しく、ストレート3枚着地が1番甘いセクションになっていて、所々に2枚着地があり、必然的に3枚着地でも必要以上に減速させられる、というレイアウトが多い気がします。
また、ノーブレーキの速度で2枚着地に収めるのは、必要なダウンフォースが大きすぎて困難だろうと予想しています。
そこで、ストレート3枚着地の速度を維持したままで2枚着地に入れるという想定をしてみます。
ストレート3枚着地となる速度
シングルドラゴンバック後にストレート3枚分の飛距離で着地する速度を計算してみます。
雑な図で恐縮ですが、赤色がシングルドラゴンバックで、右から左に向かってミニ四駆が走るとします。
スロープの頂点付近は勾配が緩やかになっているので、ミニ四駆は頂点に達する前に路面を離れているはずです。それが厳密にどの地点かというのは、実際にミニ四駆を走らせて測定するのが最善と思われるものの、測定は極めて困難です。スロープの勾配が緩やかになり始めるあたりからミニ四駆が路面を離れるであろうと考えて、スロープ頂点から10㎝手前の地点でミニ四駆が路面を離れると仮定します。
また、この位置の地面からの高さは、およそ10㎝となります。
スロープ路面の角度は、独自の方法で測定したところ15度でしたので、飛出し角度も15度とします。
ある高さから、ある角度で飛び出した物体の飛距離は、次の式で求められます。
(重力加速度は9.80665m/s^2)
この式で、速度の値を色々変えながら飛距離の数値を計算してみました。
すると、速度が5.9m/sのとき、飛距離がストレート3枚分になることがわかりました。
(飛距離およそ210㎝ = ストレート3枚分(50㎝×3) + スロープ下り(50㎝) + スロープ上り頂点付近(10㎝))
ちなみに、速度5.0m/sのとき、飛距離がストレート2枚分になります。
(飛距離およそ160㎝ = ストレート2枚分(50㎝×2) + スロープ下り(50㎝) + スロープ上り頂点付近(10㎝))
必要なダウンフォースの大きさ
ジャンプ中のミニ四駆は、重力によって下向きに引っ張られています。もしダウンフォースがあれば、ミニ四駆を更に下向きに押さえつけてくれるわけです。
ミニ四駆にとっては地球の重力にダウンフォースがプラスされたような状態です。
つまり、飛距離の計算式に出てきた重力に対してダウンフォースを加味すれば、ダウンフォースを得た場合の飛距離を求めることができます。その計算式はこちらです。
この式では、ダウンフォースを「ダウンフォースによって生じるG」として反映させています。Gというのは加速度のことで、その加速度が地球の重力(重力加速度)の何倍であるか?という数値です。
加速度とは、物体が加速する勢いの強弱を表したものです。ダウンフォースや重力によってマシンは下に向かって押され、少しずつ落下速度を上げています。つまり、下に向かって加速しているということであり、ダウンフォースや重力は、加速度として表現することができます。
では、ダウンフォースによって発生するGがどのくらいあれば、飛距離を2枚着地におさめられるのでしょうか。
Gの数値を色々と変えながら計算したところ、3枚着地の速度である5.9m/sのとき、ダウンフォースによるGが0.36Gあれば、2枚着地の飛距離(約160㎝)になることがわかりました。
まとめ
・3枚着地の速度は5.9m/s
・2枚着地の速度は5.0m/s
・3枚着地の速度で2枚着地に収めるのに必要なダウンフォースは0.36G
今回の計算で、以上の結果が得られました。
もし0.36Gのダウンフォースが得られれば、2枚着地のセクションを3枚着地の速度でクリアできるということです。
例えば、2枚着地のセクションが2か所あるコースレイアウトなら、3周で合計6回、2枚着地セクションを通過することになります。マシンはスロープセクション入口で減速し着地まで再加速しないと考えると、1回につきおよそ2mの距離を減速して通過することになります。(スロープ上り(50㎝) + スロープ下り(50㎝) + ストレート2枚(50㎝×2)で200㎝)
これが2か所あり、3周するのですから、距離は合計12mです。
これを、ダウンフォースなしなら5.0m/sまで減速して2.40秒かけて通過しなければならないところ、ダウンフォースが0.36Gあれば、5.9m/sまでの減速で済むので2.03秒で通過できるわけです。
すると、タイムにしておよそ0.37秒の差が出ます。
タイムアタックの時など、0.1秒縮めるのにも相当苦労しますから、0.37秒の短縮ができるなら画期的と言えるでしょう。
着地後の再加速も考えれば、更にタイムを短縮できると思われます。
では、ミニ四駆が0.36Gのダウンフォースを発生させることは可能なのでしょうか?
次回はこれについて考察します。
次回
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