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鼻(第3回・終)

芥川龍之介
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青空文庫より、
芥川龍之介の「鼻」を
3回に分けて読みました。
その最終回です。

《ふわっとあらすじ》

ところが、2、3日経つうちに
内供はあることに気が付いた。
どうも、会う人会う人が
鼻が長かった頃の笑い方とは違い、
コソコソ馬鹿にしてくるような、
何か含みをもって
笑っているような感じがした。

特に中童子のいたずらは
遠回しに彼を中傷するもので
我慢がならなかった。

内供は日ごとに機嫌が悪くなった。
誰にでも意地悪く𠮟りつけるので
鼻を治療してくれた弟子の僧さえ
呆れて陰口をたたくようになった。

内供は中途半端に
鼻が短くなったことを恨めしく思った。

ある晩、鼻がむず痒くなった。
鼻が水っぽくなり熱もあるようだ。
無理がたたって
病にかかってしまったか。

その翌朝、
彼は目覚めると、鼻のあたりに
忘れかけていた感覚を認めた。
慌てて鼻を触ってみると、なんと
もとの長い鼻に完全に戻っていた。

内供は、たった一晩のうちに
鼻が長くなったことを知ると、
鼻が短くなったときと同じく
晴れ晴れした気持ちになった。

もう誰も笑うものはないに違いない、と。


《語句解説》

下法師: 雑役などに使われる身分の最も低い僧。
普賢:普賢菩薩の略。釈迦 (しゃか) の右側に立つ脇侍。
   理知・慈悲をつかさどり、また延命の徳を備える。

今はむげにいやしくなりさがれる人の、
さかえたる昔をしのぶがごとく:
今となっては大変落ちぶれた人が、
栄えていた昔を懐かしく思うように。
→鼻が長かった頃の方が良かったと思い始めている。

法慳貪の罪を受けられる:
慳貪は「物惜しみをして、貪ること」。仏教用語では
「慳貪の罪を犯すと餓鬼道へ堕ちる一因となる」とされ、
ここでは、「仏罰を受けて、餓鬼道に堕ちることになるぞ」
という意味と思われる。

尨犬(むくいぬ):むく毛の犬。毛のふさふさと垂れた犬。
なまじいに:中途半場に。

風鐸: 仏堂などの軒の四隅につるす青銅製の鐘形の鈴。
水気(すいき):みずけ

九輪:寺の塔の頂上部にある九つの輪装飾。
蔀(しとみ):日本建築で上から吊(つ)り下げた格子戸。


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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

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