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農業と再エネの共生 / アグリツリーが切り拓く新たな地平
はじめに
当社は、農業の持続可能性と再生可能エネルギーの普及を同時に実現するソーラーシェアリングという革新的な取り組みを推進しています。ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同時に行う仕組みを指します。
ソーラーシェアリングのメリット
ソーラーシェアリングには多くのメリットがあります。農業従事者にとっては、従来の農業収入に加えて安定した売電収入や耕作協力金といった収入が得られるため、経営の安定化につながります。需要家である企業、自治体、農業法人は、長期固定価格で再生可能エネルギーを調達できるため、電気料金の変動リスクをヘッジできます。さらに、CO2の地中固定や遊休農地の有効活用、地域の雇用創出など、環境面や社会面でも多くの利点があります。
実績と課題
〜匝瑳おひさま発電所プロジェクト〜
当社も参画し、2023年4月に商用運転を開始した千葉県匝瑳市の「匝瑳おひさま発電所」プロジェクトは、約64,500平方メートルの耕作放棄地を活用した国内最大規模の地域共生型ソーラーシェアリングプロジェクトです。このプロジェクトでは、固定価格買取制度(FIT)を活用して売電・電力供給しているのですが、近年FITの買取価格が下がってきていることにより、同モデルを使って経済性を確保したソーラーシェアリングの新規案件を成立させることが難しい状況です。
新たな展開
〜オフサイトPPAモデル〜
FITに代わって、現在注目されているのが、オフサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)という新しい電力供給モデルです。オフサイトPPAとは、需要家の敷地外に設置された再生可能エネルギー発電所で作られた電気を、小売電気事業者を介して需要家に供給する仕組みです。
価格設定の課題と解決策
オフサイトPPAは企業が自社の電力ニーズを環境に優しい形で満たすための有力な手段として注目されていますが、その価格設定はしばしば課題となります。オフサイトPPAでは初期コストや運用コストが電力価格に大きく影響するため、それらを踏まえても事業性の確保できる価格設定を成立させることが重要です。
この価格設定の課題を解決するための方策としては現在、「補助金の活用」と「電力のブランディング」が重要な要素として浮上しています。
まず、政府や自治体から提供される再生可能エネルギー関連の補助金を活用することで、補助金により、初期投資や運用コストを低減し、価格設定の調整が可能になります。
さらに、販売する電力にストーリー性/独自性を持たせたり、ブランディングすることも付加価値を高める有効な手段です。例えば、発電プロセスが地域社会への貢献や環境保護と直結していることを強調し、消費者や企業にとって「選ぶ理由」を提供することで、電力の価値を引き上げることが可能です。これにより、単なる価格競争を超えた、差別化された電力供給モデルを構築し、価格設定の成立を後押しすることが期待されます。
今後の展望
当社は、ソーラーシェアリングとオフサイトPPAの組み合わせは、農業の持続可能性と再生可能エネルギーの普及を具現化する理想的な手段だと考えており、このモデルを全国に展開することを目指しています。
将来的には、太陽光発電設備建設コストの低減により、補助金なしでもオフサイトPPAが自律的に普及していく可能性があると期待しており、当社は、その先駆者として、持続可能な農業と再生可能エネルギーの未来を切り拓いていきたいと考えています。